7月26日の誕生花「ラークスパー」

「ラークスパー」

基本情報

  • 学名Delphinium ajacis
  • 科・属:キンポウゲ科・デルフィニウム属
  • 原産地:南ヨーロッパ、地中海
  • 開花期:初夏〜夏(5〜6月頃)
  • 花色:青・紫・ピンク・白など
  • 草丈:品種によって30cm~2m以上
  • 英名の由来:「Larkspur」は英語でヒバリ(Lark)の足の爪(Spur)を意味し、花の形がヒバリの足に似ていることから。
  • 特徴:古くから切り花や花壇用として人気があり、特に背の高い品種は庭園の背景やボーダーガーデンに重宝されます。

ラークスパーについて

特徴

  1. 花の形
    花の後ろに「距(きょ)」と呼ばれる細長い突起があり、それがヒバリの爪に似ていることが名前の由来です。
  2. 鮮やかなブルー系統の花色
    青系の花が豊富で、涼しげで澄んだ印象を与えます。ガーデニングでは夏の空や水を思わせる色彩効果があります。
  3. 繊細で風に揺れる立ち姿
    細長い茎の先に小花を穂状に多数咲かせるため、軽やかで涼しげな印象を与える植物です。
  4. 有毒植物
    全草にアルカロイドを含み、誤食すると中毒を起こすことがあるため注意が必要です。

花言葉:「軽やかさ」

ラークスパーの花言葉「軽やかさ」は、以下のような特徴から生まれたと考えられます。

  1. 風に揺れる柔らかい花穂
    細長い茎に小花が集まって咲き、そよ風にふわりと揺れる姿が、まるで軽やかに舞うように見えることから。
  2. 上に向かって伸びるシルエット
    細く伸び上がる茎の先に、軽やかに咲く花々が並ぶ様子が、天へ軽く舞い上がるイメージを連想させます。
  3. ヒバリ(Lark)の連想
    英名の「Larkspur」に含まれる「Lark(ヒバリ)」は、空高く舞い上がり軽やかにさえずる鳥。このイメージと花の立ち姿が重なり、「軽やかさ」の花言葉につながったといわれます。

「空へ舞う青」

梅雨明けの庭に、ラークスパーが咲きそろっていた。透き通るような青い花穂が、夏の光を受けて揺れている。その風景を前に、私はふと立ち止まった。
 
 祖母の家の庭は、子どものころの私にとって、秘密基地のような場所だった。いつも祖母は背の高い花の並ぶ庭の奥で、少し猫背になって土をいじりながら、「この花はヒバリの足みたいな形をしているのよ」と笑っていた。
 
 当時の私は、花の名前も意味も気にしたことがなかった。ただ、祖母の後ろ姿と風に揺れる花々の色彩が、やわらかい記憶として胸に残っている。

 祖母が亡くなって三年。誰も手入れをしなくなった庭は、すっかり野性味を帯びていた。だけど、今年も青いラークスパーが、まるで空を仰ぐように茎を伸ばしている。あの頃と同じように、風に合わせて揺れていた。
 
 私はしゃがみ込み、花の先を指でそっとなぞる。
 ──軽やかさ。
 
 いつか花屋で見た本に、ラークスパーの花言葉がそう記されていたのを思い出す。理由は、風にそよぐ花穂や、細くまっすぐに天へ伸びる姿、そしてヒバリのように空高く舞い上がる英名の由来にあるという。


 祖母はきっと、この花に自分を重ねていたのかもしれない。幼い私を見守りながら、軽やかに笑い、空に向かうようなまっすぐな心を持っていた。


 庭の奥、錆びたベンチに腰かけると、ふわりと風が吹いた。青い花々が、一斉に羽ばたく鳥のように揺れた気がした。その瞬間、祖母の声が微かに聞こえた気がした。
 「空を見なさい。泣いてばかりじゃなくて、もう少し軽やかに生きなさい」
 
 私は空を見上げた。真夏の光がまぶしくて、自然と笑みがこぼれた。
 
 ──軽やかさ。
 


 その言葉が、今は不思議と胸にしみ込む。これからの人生をどう生きていくか、明確な答えはまだ見えない。だけど、心に何かが芽吹く感覚がある。
 
 庭のラークスパーは風に揺れ続けていた。まるで「ほら、私たちみたいに軽くなればいい」と語りかけるように。
 
 私は立ち上がり、花壇の雑草を一本抜いた。あの日祖母がそうしたように、青い花々の間を少しだけ整えてみた。
 空に向かって舞う花穂を見上げると、未来が少しだけ明るく見えた。
 
 ラークスパーの花は、今年も変わらず、軽やかに空へ手を伸ばしている。

4月17日の誕生花「ラークスパー」

「ラークスパー」

Christina StrauchによるPixabayからの画像

■ 基本情報

  • 和名:ヒエンソウ(飛燕草)
  • 学名Delphinium spp.
  • 英名:Larkspur
  • 分類:キンポウゲ科 コンソリダ属
  • 原産地:南ヨーロッパ、地中海
  • 開花時期:春~初夏(5月~6月頃)
  • 草丈:30cm〜2m(種類による)
  • 花色:青、紫、ピンク、白など

ラークスパーについて

Kerstin RiemerによるPixabayからの画像

■ 特徴

  • 花の形:鳥が飛んでいるような形をしており、「飛燕草(ひえんそう)」という和名はそこから来ています。
  • 花の並び:縦に長く伸びる花穂に、蝶のような花が多数咲きます。
  • 種類:一年草タイプと多年草タイプがあり、ガーデニングには一年草の「コンソリダ(Consolida)」がよく使われます。
  • 栽培環境:日当たりと風通しの良い場所を好みます。暑さにはやや弱いため、日本では涼しい季節に育てるのが向いています。
  • 用途:花壇、切り花、ドライフラワーとして人気があります。

花言葉:「軽やかさ」

Manfred RichterによるPixabayからの画像
  • 軽やかさ(かろやかさ)
  • 他にも「陽気」「快活」「自由」などの意味もあります。

「軽やかさ」という花言葉は、風に揺れる可憐な姿や、空に向かってすっと伸びる花の様子に由来しているとされています。


「風の声を聴く日」

Sylwia AptacyによるPixabayからの画像

春の終わり、初夏の風が町を包み始めたころ、彼女はいつも通り古い駅の近くにある小さな花壇に水をやっていた。

「今年もきれいに咲いたね、ラークスパー」

ふわりと風が吹き抜け、青紫の花が揺れた。その姿に、まるで返事をされたような気がして、少女は微笑んだ。

名前は灯(あかり)。高校二年生。母の遺した花壇を手入れするのが、彼女の日課だった。

母が生前、花壇に植えた最後の花がこのラークスパーだった。

esiuLによるPixabayからの画像

「これはね、“軽やかさ”って花言葉なのよ。風に踊るように咲く姿が、きっとあなたに似てる」

そう言って笑った母の声が、今でも風の中に聞こえる気がする。

灯は明るく、元気な性格だった。けれど、母を病で失ってからは、その笑顔も少し影を帯びていた。人と話すのも、どこか億劫になった。無理に明るく振る舞うことにも、疲れていた。

それでも、花壇に立つと心が落ち着いた。特にこのラークスパーを見ると、なぜだか少しだけ軽くなる胸の重さ。母が選んだ理由が、少しだけわかる気がした。

ある日、灯が花壇にいたとき、見知らぬ少年が立ち止まった。制服姿からして、同じ高校のようだった。

「…綺麗に咲いてるね。それ、ラークスパー?」

灯は驚いた。花の名前を言い当てた人は、初めてだった。

「うん。知ってるの?」

「うち、花屋だから。小さいころから花と一緒に育ってきたようなもん」

彼は名を奏汰(そうた)と名乗った。灯とは違うクラスで、学校ではあまり目立たない存在らしい。

その日から、奏汰は時々花壇に来ては、灯と他愛もない話をするようになった。風の話、花の話、学校での出来事。静かで優しい声に、灯の心は少しずつ解けていった。

「この花ね、“軽やかさ”っていう花言葉があるんだよ」

ある日、灯がそう伝えると、奏汰は小さく頷いた。

「うん。風に揺れる姿が、本当に軽やかだよね。でも、それだけじゃない」

「え?」

「強いんだよ、この花。風に身を任せてるように見えて、ちゃんと根を張って、自分の意思で咲いてる。…誰かさんみたいにさ」

灯は言葉を失った。そして、不意に目元が熱くなった。

「…そうだったら、いいのにな」

beauty_of_natureによるPixabayからの画像

「うん。きっと、そうだよ」

その日、灯は初めて母に報告した。

「ねえ、お母さん。今日、私、ちゃんと笑ったよ」

ラークスパーが風に揺れた。まるで祝福するように、軽やかに。

そして、季節は夏へと向かう。花壇には今日も風が吹き、青い花がそよいでいる。

そこには、母が遺した“軽やかさ”が、確かに息づいていた。