12月9日、25日の誕生花「ポインセチア」

「ポインセ25日

基本情報

  • 学名Euphorbia pulcherrima
  • 和名:ショウジョウボク(猩々木)
  • 科名:トウダイグサ科
  • 原産地:メキシコの山
  • 開花時期:晩秋〜冬 (12月~2月)
  • :赤・ピンク・白・クリーム・マーブルなど
  • 園芸分類:常緑低木(観葉植物として扱われることが多い)

ポインセチアについて

特徴

  • 赤い部分は花ではなく「苞(ほう)葉」
    ┗ 葉が変化したもので、中央にある小さな黄色い部分が本当の花(杯状花)。
  • 短日植物
    ┗ 一日の暗い時間が長くなると色づき始めるため、冬に赤く染まる。
  • クリスマスを象徴する植物
    ┗ 冬に鮮やかな赤を見せるため、世界中でクリスマス装飾として人気。
  • 温度変化に弱く、寒さでダメージを受けやすい
    ┗ 室内の明るい場所で管理すると長持ちしやすい。
  • 樹液に毒性あり(軽度)
    ┗ 皮膚に付くとかぶれる場合がある。

花言葉:「私の心は燃えている」

由来

  • 真っ赤に染まった苞葉が、燃える炎のように見えることから。
  • クリスマスの夜に灯るキャンドルの光や、温かな情熱を象徴する色合いが重ねられたため。
  • 冬の寒さの中で、ひときわ強く鮮やかな赤を放つ姿が、心の中の強い想い・燃えるような情熱を連想させた。

「冬の赤は、燃えている」

雪が降り始めたのは、午後の授業が終わるころだった。
 白い粒が空から静かに舞い、冷たい町並みをゆっくりと包み込んでいく。どこか遠くの世界へ変わっていくような、不思議な気配があった。

 麻衣は厚手のマフラーを首に巻き直しながら、花屋の前で足を止めた。
 店先に並んでいるのは、鮮やかな赤。ポインセチアが何鉢も、黄色い花粉を抱えた小さな花を中心にして、燃えるような苞葉を広げている。

 ――私の心は燃えている。

 花言葉を思い出したとたん、胸の奥がじんと熱くなった。

 昔から、冬が苦手だった。
 学校の帰り道は冷えて孤独で、家に帰っても家族の温度は薄く、どこにも“自分の居場所”を見つけられなかった。

 だけど、去年の冬だけは違った。
 毎日すれ違うたびに笑いかけてくれた人がいた。
 「寒いね」と言ってココアを買ってくれたり、「帰り一緒に歩こっか」と声をかけてくれたり。
 特別な言葉はなかったけれど、隣にいるだけで世界が温かくなるような、そんな存在だった。

 ――好きです。

 その一言だけが言えなかった。
 言ってしまえば、何かが壊れそうで。
 伝えなければ、何も始まらないのに。

 「ポインセチア、今日すごくきれいですよ」

 声に振り向くと、花屋の店員が柔らかく微笑んでいた。
 麻衣は思わず赤い苞葉を見つめる。

 真っ赤に色づいた葉は、炎そのもののようだった。
 冷たい空気を切り裂くように、凛として美しく輝いていた。
 まるで、冬の中でたったひとつ灯る、小さな勇気の火。

 ――あの花言葉は、本当なのかもしれない。

 クリスマスの夜、誰かの心にともるキャンドル。
 離れていても、凍える季節の真ん中で、静かに燃え続ける想い。
 そして、冬の寒さにも負けず、ひときわ鮮やかに赤を放つ姿は、まるで「諦めるな」と背中を押してくれるようだった。

 麻衣は手袋を外し、ポインセチアの鉢にそっと触れた。
 その瞬間、心のどこかで固く凍っていたものが、かすかに溶けた気がした。

 ――もう逃げない。

 彼に伝えたい言葉は、ずっと胸の中にあった。
 暖炉の火みたいに、じわじわと消えずに残っていた。
 言えなかったのは、怖かったからだ。
 だけど、恐れよりも大切な気持ちが、今は確かに燃えている。

 「これ、ください」

 麻衣は一鉢のポインセチアを選んだ。
 赤い苞葉が、まるで「行ってこい」と囁くように揺れていた。

 店を出ると、雪はさっきよりも強く降っていた。それでも、手に抱えた鉢は驚くほど温かく感じた。

 家とは逆の道。
 麻衣はゆっくりと歩き出す。
 凍てつく風が頬に当たる。それでも足取りは軽かった。

 ――私の心は、燃えている。

 その言葉を抱きしめるように、彼の家へと歩みを進めた。
 冬の町は白く、冷たく、静けさに満ちている。
 けれど、真っ赤なポインセチアだけが、雪の中でひときわ強く灯っていた。

 まるで、麻衣の胸の炎を映すように。

5月21日、12月3日、25日の誕生花「バラ」

「バラ」

RalphによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Rosa
  • 分類:バラ科バラ属
  • 原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部
  • 種類:およそ200種以上、園芸品種は2万以上存在
  • 開花時期:5月中旬~6月上旬(主な開花期)、6月中旬~11月(品種によって適時、開花)
  • 形状
    • 一重咲き〜八重咲きまでさまざま
    • 色は赤、白、ピンク、黄、オレンジ、青みを帯びた品種など豊富

バラについて

🌸♡💙♡🌸 Julita 🌸♡💙♡🌸によるPixabayからの画像

特徴

  • 美しい花姿:整った花びらの重なりや鮮やかな色彩が魅力。
  • 芳香:多くの品種が甘く濃厚な香りを放つ。
  • トゲ:茎に鋭いトゲがあり、外敵から身を守る役割。
  • 育てやすさ:種類によって異なるが、日当たりと風通しを確保すれば比較的育てやすい。
  • 用途:庭園用、切り花、香料(ローズオイル)、食用(ローズウォーター、ジャム)

花言葉:「愛」「美」

Нина ИгнатенкоによるPixabayからの画像

バラが「愛」と「美」を象徴する理由は、古代からの文化・神話・文学に深く根ざしています。

1. 古代ギリシャ・ローマ神話

  • 美と愛の女神**アフロディーテ(ヴィーナス)**がバラと深く結びつけられていました。
  • 神話では、アフロディーテが恋人アドニスを失った悲しみの涙がバラに変わったとも言われています。

2. 中世ヨーロッパの騎士道文化

  • 貴婦人への愛の証として騎士がバラを贈る慣習がありました。
  • バラは「秘めた愛」「高貴な美しさ」を象徴し、恋愛の贈り物として定着。

3. 花の象徴性

  • 鮮やかな赤は情熱的な愛を、
  • 純白は純粋な美と尊敬を、
  • ピンクは優しさと幸福を象徴します。

📝 補足

  • 赤いバラ:もっともポピュラーな愛の象徴
  • 白いバラ:純潔・尊敬
  • 黄色いバラ:友情や嫉妬(文化によって異なる)
  • 青いバラ:奇跡・不可能への挑戦(近年のバイオ技術で作出)

「薔薇の涙」

CouleurによるPixabayからの画像

古びた石畳の道を、一人の老婦人が静かに歩いていた。手には、一輪の赤いバラ。

その道の先には、小さな古書店がある。年に一度、この日にだけ彼女はその店を訪れる。そして、何も語らず一冊の本を棚から取り出し、ページをめくる。ページの間には、押し花になったバラの花びらが一枚、そっと挟まれていた。

「アドニスの日だね」と、店主の青年が声をかける。

老婦人は、微笑みながら頷いた。

彼女の名はクラリス。若かりし頃、舞踏会で出会った青年、アドニスと恋に落ちた。彼は芸術を愛する詩人で、繊細で美しい言葉を紡ぐ人だった。

出会った夜、彼は一輪の赤いバラをクラリスに手渡しながらこう言った。

「君は、この花よりも美しい。けれど、バラと同じで、人を愛する力を持っている」

その日から、二人は毎週のように会い、愛を育んだ。バラ園で過ごした時間、詩を読み交わした静かな午後、そして、雨の日に交わしたくちづけ。すべてが、宝石のように心に残っている。

だが、運命は残酷だった。

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アドニスは戦火に巻き込まれ、帰らぬ人となった。最後に届いたのは、彼の詩集と一輪の赤いバラだけだった。バラはすでに枯れていたが、クラリスはそれを丁寧に押し花にして、詩集に挟んだ。

「なぜ、バラだったのか、最近ようやく分かったのです」とクラリスはつぶやいた。

「バラは、美しいけれどトゲもある。愛はそういうもの。傷ついてもなお、美しさを失わない」

その年、クラリスは詩を一つ書いた。アドニスの書いた詩と並ぶように、それは詩集に挟まれた。

あなたの涙がバラに変わるのなら
私の愛も、香りとなってあなたに届くでしょう
美は消えず、愛は枯れず
ただ、時の彼方に咲き続けるだけ

老婦人は本を閉じ、押し花をそっと戻した。

「また来年、会いましょうね」

その一輪のバラに、誰に向けたとも知れぬ言葉を残して、彼女は静かに店を後にした。

バラは「愛」と「美」の象徴。だがその裏には、失われた時間と、決して枯れぬ想いがある。

クラリスのように、誰かの心に咲き続ける薔薇が、今日もまた、一輪。