2月13日、22日、6月27日の誕生花「ローダンセ」

「ローダンセ」

基本情報

  • 学名Rhodanthe manglesii(主にこの品種が観賞用として流通)
  • 別名:ヒロハノハナカンザシ(広葉の花簪)
  • 科名/属名:キク科/ローダンセ属(あるいはヘリクリサム属とされることも)
  • 原産地:オーストラリア
  • 開花時期:(4月~7月)頃
  • 草丈:20~50cmほどの一年草

ローダンセについて

特徴

  • 紙のような花びら
     花びらはカサカサとした質感で、まるで紙細工のような見た目をしています。この乾いた手触りがドライフラワーにも向いており、長く色や形を保ちます。
  • 明るい色彩
     ピンク、白、黄色など、色鮮やかで光沢感のある花を咲かせます。中心部は黄色でコントラストが美しい。
  • 乾燥に強い性質
     乾いた環境でも育ちやすく、ガーデニング初心者にも人気。日本では切り花や鉢花、ドライフラワー用途が一般的です。
  • 花が閉じない
     ローダンセの花は開いた状態のまま咲き、しぼみにくいため、いつまでも「咲いているように見える」という特性もあります。

花言葉:「変わらぬ思い」

花言葉「変わらぬ思い(unchanging affection)」は、主に以下の特徴に由来しています:

  1. 長く色褪せない美しさ
     ローダンセはドライフラワーにしても色や形がほとんど変わらず、長期間そのままの姿を保ちます。その「変わらない美しさ」から、永続する感情を象徴するとされます。
  2. 可憐なのに強い
     見た目は繊細で可愛らしいのに、実際は乾燥や環境の変化に強いというギャップが、「一途で変わらぬ愛情」や「強い想い」をイメージさせます。
  3. 枯れても咲いているような姿
     生花がしおれても、まるで咲き続けているように見えるその姿は、「時間が経っても薄れない気持ち」や「想いの持続性」を象徴しています。

「変わらぬ花」

小さな雑貨店の片隅に、ずっと売れずに残っている一輪のローダンセのドライフラワーがあった。花瓶に挿されたそれは、まるで時間の外にあるように、色褪せることなく、いつも変わらぬ笑顔で店を見守っていた。

「この花、ずっとあるよね」

 放課後、店に立ち寄った高校生の紗良がそう言うと、レジに座っていた老店主の悠一が笑った。

「ああ、もう十年くらいになるかな。そのローダンセだけは、どんなに日が経っても色が抜けないんだ。不思議だろう?」

「うん。……でも、ちょっと寂しくない? こんなに綺麗なのに、誰にも選ばれないなんて」

 紗良の言葉に、悠一はふと目を細めた。

「それは違うよ。選ばれたんだ、もうずっと前に」

「え?」

 店主はローダンセに目を向けながら語り始めた。

「むかし、この店によく来てた女の子がいてね。病気であまり外に出られなかったんだけど、晴れた日だけ母親と一緒に、決まってここに来てくれてた。小柄で、大きな瞳の子だった」

 その子は、ローダンセが好きだったのだという。

「毎回、同じ花を眺めては『これ、いつまでも咲いてるね』って。買うことはなかったけど、花の前でずっと立ち止まってた。ある日、その子が母親と来て、『もう、ここには来られないの』って言ったんだ」

 そしてその少女は、帰り際、レジに500円玉を置いていった。

「『お小遣いで買えるの、これだけだから、花はそのままでいい。でも、私のものにしていい?』ってね」

 それ以来、そのローダンセは売り物ではなくなった。店主は毎朝埃を払って、陽の当たる場所に置いてやる。それが彼女との「約束」だった。

「変わらず咲き続けているあの子の気持ちが、この花に宿ってるんじゃないかって思ってる。花は枯れても、想いは枯れない……そんな気がするんだよ」

 紗良は、ローダンセに目をやった。カサカサとした花びらは、それでもどこかあたたかさを持って、まるで誰かの心を守っているようだった。

「じゃあ、これは……その子の“変わらぬ思い”なんだね」

「そう。花言葉の通りだよ」

 その日、紗良は手帳にローダンセの名前を書いた。「いつか自分も、誰かの心に残るような想いを持てたら」と、小さく願いながら。

 数年後。大学進学で街を離れる前、紗良はもう一度店を訪れた。ローダンセは、変わらずそこにあった。

「この花、やっぱり変わらないね」

「うん。けど、想いは少しずつ広がってる気がするよ」

 悠一の言葉に、紗良は頷いた。

 そして静かに店を出ると、彼女は振り返って微笑んだ。

「ありがとう、変わらぬ花」

2月22日、4月19日、9月11日の誕生花「ムクゲ」

「ムクゲ」

Manfred RichterによるPixabayからの画像

🌺 基本情報

  • 和名:ムクゲ(木槿)
  • 学名Hibiscus syriacus
  • 英名:Rose of Sharon
  • 科名:アオイ科
  • 属名:フヨウ属(Hibiscus
  • 原産地:中国
  • 開花時期:7月~9月
  • 樹高:1~3mほどの落葉低木

ムクゲについて

HeungSoonによるPixabayからの画像

🌿 特徴

  • 花色の多様性:白、ピンク、紫、青紫などがあり、一重咲きや八重咲きの品種も存在。
  • 一日花:1つの花は基本的に1日でしぼみますが、次々に新しい花を咲かせるため長く楽しめる。
  • 丈夫で育てやすい:暑さや乾燥に強く、庭木や街路樹、公園などでも多く植えられる。
  • 象徴的存在
    • 韓国の国花としても有名(韓国語では「ムグンファ/무궁화」)。
    • 日本でも夏の風物詩として親しまれる。

花言葉:「純粋な愛」

HeungSoonによるPixabayからの画像

ひたむきに咲き続ける性質:1日でしぼんでしまう花にもかかわらず、毎日新しい花を次々に咲かせる姿は、あきらめずに相手を思い続ける「純粋な愛」や「永遠の愛情」を象徴しています。

見た目の清らかさ:白や淡い色の花びらは、清楚で控えめな印象を与えるため、「無垢」や「純粋さ」をイメージさせます。


「一日花の約束」

Manfred RichterによるPixabayからの画像

駅前の小さな花屋で、彼女はムクゲの鉢植えを選んでいた。
「これ、誰に贈るの?」
 店主の老婆が笑顔で尋ねると、彼女は少し照れたように言った。
「……七回目の命日なんです。彼に」

 ***

 大学時代、彼と彼女は同じサークルで出会った。暑い夏の昼下がり、彼が汗をぬぐいながら言ったのを、彼女はいまでも覚えている。
「この時期って、いつもムクゲが咲いてるよな」
 それが、彼の初めての言葉だった。

HeungSoonによるPixabayからの画像


「ムクゲって知ってる? 一日でしぼんじゃうけど、また明日咲くんだよ。強くて、健気で、なんか……いいよな」

 それから彼女はムクゲを見るたびに、彼の言葉を思い出すようになった。彼は不器用だけど誠実な人だった。何事にもまっすぐで、優しかった。そして、突然いなくなった。

 事故だった。信号無視の車に巻き込まれ、彼は帰らぬ人となった。彼女はしばらく何も考えられなかった。けれど、彼の部屋に飾られていた小さなメモが、彼女の心を少しずつ動かしていった。

HeungSoonによるPixabayからの画像

 そのメモには、こう書かれていた。
「来年の夏、ムクゲを見に行こう。○○公園、朝の8時、約束な」
 日付は、彼が亡くなった翌年の7月15日だった。

 彼女はその日、○○公園に行った。彼の姿はもちろんなかったけれど、そこには満開のムクゲが風に揺れていた。白、ピンク、淡紫色――まるで彼が言った通り、強くて、健気に咲いていた。

 それから彼女は、毎年その日、その場所にムクゲを持って行くようになった。

 ***

dae jeung kimによるPixabayからの画像

 花屋の老婆は鉢植えに水をやりながら、ふとつぶやいた。
「ムクゲの花言葉、知ってる?」
「はい。『純粋な愛』ですよね」
 彼女は微笑んだ。
「一日しか咲かないけど、また必ず咲く。まるで……会えなくても、心だけはずっとつながってるみたいで」

 老婆はうなずき、優しく花を包んだ。
「それはね、本当に誰かを思ってる人にしか似合わない花だよ」

 彼女は鉢植えを大事そうに抱え、ゆっくりと公園へ向かった。
ムクゲの花は今日もひとつ、静かに咲いていた。たった一日だけれど、その命の輝きは、永遠を信じる心とともにあった。