2月9日、3月1日、7日の誕生花「ラッパズイセン」

「ラッパズイセン」

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ラッパズイセン(喇叭水仙、学名:Narcissus pseudonarcissus)は、ヒガンバナ科スイセン属の多年草で、春に鮮やかな黄色や白の花を咲かせます。名前の通り、中心部分がラッパのような形をしているのが特徴です。

ラッパズイセンについて

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科名:ヒガンバナ科/スイセン属
原産地:西ヨーロッパ
開花時期:3月~4月(春の訪れを告げる花)
花の色:黄色、白、オレンジなど
香り:ほんのり甘く爽やか

神話と由来

スイセン属の花はギリシャ神話の美少年ナルキッソス(ナルシス)にちなんで名付けられました。彼は泉に映る自分の姿に恋をし、そのままスイセンになったと伝えられています。この神話から、スイセン全般の花言葉には「自己愛」「うぬぼれ」といった意味も含まれます。

贈り物としてのラッパズイセン

「片思い」の花言葉を持つため、恋心を秘めたまま贈るのにぴったりです。ただし、相手が花言葉を知っている場合は、意味を考えて渡したほうがいいかもしれません。明るい色合いのため、春の訪れを祝う花としてプレゼントするのも素敵です。

ラッパズイセンは春を象徴する美しい花でありながら、少し切ない花言葉を持つところが魅力的ですね。


花言葉:「片思い」

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ラッパズイセンの花言葉には「片思い」「報われぬ愛」「尊敬」などがあります。
特に「片思い」という花言葉は、ラッパズイセンのうつむくような咲き方や、自己愛の象徴とされるスイセンの一種であることに由来するといわれています。


「ラッパズイセンの咲くころに」

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春の訪れを告げるように、公園の片隅でラッパズイセンが咲いていた。黄色い花弁が風に揺れ、まるで静かに囁き合っているようだった。

「ラッパズイセンの花言葉は『片思い』なんだって」

彼女はそう言って、小さな花をそっと撫でた。

「だから、これは私の気持ち」

隣に立つ僕は、彼女の言葉に息をのんだ。

──遡ること半年、僕と彼女は大学の図書館で知り合った。彼女は僕より一つ年下で、文学が好きだった。よく読んでいる本について語り合った。僕が気に入っていた海外文学を彼女も読み、感想を聞かせてくれるのが嬉しかった。彼女の好きな詩を僕が真似して書いてみたこともある。

ただ、それ以上の関係にはならなかった。彼女が僕に好意を抱いていることには、なんとなく気づいていた。でも、僕にはすでに恋人がいた。

彼女の気持ちをはっきりと知ってしまったら、何かが壊れる気がして、曖昧な距離を保っていた。彼女もそれを分かっているようで、決して踏み込んでこようとはしなかった。

そして、今日。

彼女はラッパズイセンを指さしながら、笑っていた。

「片思いって、ちょっと切ないね。でも、こうやって花になって残るなら、悪くないかも」

僕は何も言えなかった。

「もうすぐ卒業だね」

「うん」

「きっと、これが最後になると思う。だから、言葉にしておこうと思ったの」

「……ありがとう」

「ふふ、やっぱり優しいね。でも、大丈夫。言いたかっただけだから」

彼女はくるりと背を向け、公園の出口へ向かって歩き出した。春風に乗って、彼女の髪がふわりと揺れる。

僕は、その背中をただ見つめることしかできなかった。

地面に咲くラッパズイセンが、静かに揺れていた。

3月1日、5月10日の誕生花「ヤグルマギク」

「ヤグルマギク」

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基本情報

  • 学名Centaurea cyanus
  • 和名:ヤグルマギク(矢車菊)
  • 英名:Cornflower(コーンフラワー)
  • 科名/属名:キク科/ヤグルマギク属
  • 原産地:ヨーロッパ東南部
  • 開花時期:12月~7月
  • 花色:青、紫、ピンク、白など(特に青が有名)
  • 草丈:30~100cmほど
  • 一年草

ヤグルマギクについて

特徴

  • 形状:花の形が「矢車(こいのぼりの上にある風車)」に似ていることから「矢車菊」と名付けられました。
  • 育てやすさ:日当たりと風通しのよい場所を好み、初心者でも育てやすい花。
  • 用途:花壇、切り花、ドライフラワーなど。ヨーロッパではブーケによく使われます。
  • 象徴的な青色:鮮やかな青色の花は特に人気があり、かつては青い花の象徴的存在でした。

花言葉:「デリカシー」

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ヤグルマギクの花言葉には以下のようなものがあります:

  • デリカシー(繊細)
  • 優雅
  • 幸福感
  • 教育
  • 独身生活(英語圏)

「デリカシー」の由来について:

  • ヤグルマギクの細かく繊細に裂けた花びらや、柔らかく上品な佇まいが、「心の機微」や「繊細な感受性」を連想させます。
  • また、主張しすぎない姿と控えめな美しさが、相手の気持ちに寄り添うようなやさしさ=デリカシーを象徴すると考えられています。

ヨーロッパでは、友情や誠実さを表す花として贈られることもあり、その思いやりの心がこの花言葉に通じています。


「蒼のそばに」

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五月の風が穏やかに吹き抜ける、丘の上の小さな庭園。そこには、ひときわ目を引く青い花が揺れていた。ヤグルマギク。
細かく裂けた花びらは、まるで誰かの秘密を守るように静かに風に揺れ、眩しいほどの空の色を映していた。

「やっぱり、ここが好きなんだね」

声の主は、春香。高校三年生の彼女は、放課後になると決まってこの丘にやってきては、青い花を見つめていた。花を育てていたのは、ひとつ年上の智也。近所に住む寡黙な大学生で、二人が言葉を交わすようになったのは、去年の夏のことだった。

「なんでこの花ばっかり育ててるの?」

そう聞いた春香に、智也は少し考えてから言った。

「……人の気持ちに触れる花だから、かな」

意味がよくわからなかった。でも、春香は彼の静かな声と、その後に続いた「デリカシーって、こういう花のことなんじゃないかな」という言葉が、妙に心に残った。

彼はいつも、誰かの後ろで静かに寄り添うような人だった。道に迷った観光客に地図を手渡したり、図書館で子どもが落とした本を気づかれないように棚に戻したり。派手ではないが、そっと手を差し出すような優しさを持っていた。

春香はそんな彼のことを、少しずつ、でも確かに好きになっていた。

──けれど、その気持ちを伝えることはなかった。

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彼女にはわかっていた。彼は誰かに好かれることよりも、そっと誰かを支えることに価値を置いている人だということを。

春香が受験勉強に集中するため、丘へ通うのをやめようと決めたのは、ある雨の午後だった。いつものように花を見に行こうとしたとき、彼が一人で花にビニールをかけ、ぬかるんだ道を歩いていたのを見た。

びしょ濡れになりながらも、花を守ろうとする姿に、春香はそっと目を伏せた。

「この気持ちも、きっとあの青い花と一緒で、静かに咲いていればいいんだ」

翌日から春香は丘へ行かなくなった。

それから数ヶ月が経ち、春になった。

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合格通知を受け取った日、春香は久しぶりに丘を訪れた。そこには、見覚えのある青い花と、一枚の手紙が風に揺れていた。

《春香さんへ

花の世話をしながら、あなたがいない季節を過ごしました。
ヤグルマギクは、そっと寄り添って咲く花です。
あなたが僕にくれた言葉や笑顔も、同じように、静かに心に咲いていました。

また会えたら、今度は僕のほうから声をかけます。》

青い花が、風の中でやさしく揺れた。

それはまるで、「今度こそ」と、春香の背中を押してくれているようだった。