5月15日の誕生花「カルミア」

「カルミア」

基本情報

  • 学名Kalmia latifolia
  • 和名:アメリカシャクナゲ
  • 英名:Mountain Laurel(マウンテン・ローレル)
  • 科名/属名:ツツジ科 カルミア属
  • 原産地:北アメリカ東部
  • 開花時期:5月上旬~6月中旬
  • 花の色:ピンク、白、赤など
  • 樹高:2~3m程度(園芸品種では低めも多い)

カルミアについて

特徴

  • 花の形:星形または皿状の花が多数集まって咲きます。紙細工のように整った形状が特徴的で、「お菓子のよう」と表現されることも。
  • 蕾(つぼみ):五角形のような形で、まるでキャンディや折り紙のようなかわいらしさがあります。
  • :細長く光沢があり、シャクナゲに似ています。
  • 性質:日当たりを好みますが、強すぎる直射日光は苦手。耐寒性は比較的高いです。
  • 毒性:すべての部位にグラヤノトキシンという毒が含まれており、摂取すると中毒の恐れがあります。

花言葉:「大きな希望」

カルミアの花言葉の一つに「大きな希望」があります。その由来は主に以下のように説明されています。

  • 花の成長と開花の様子が希望を感じさせるから
     カルミアの蕾は固く閉じた五角形から、ぱっと開いた星形に変化します。その姿が、閉ざされた状況から明るく開ける未来への「希望」を連想させるためといわれます。
  • 山地に咲く姿が力強く、美しく印象的
     原産地のアメリカ東部では、険しい山岳地帯でもしっかりと根を張り、美しい花を咲かせます。そのたくましさと美しさが「逆境にも希望を持って咲く」イメージにつながっています。
  • アメリカの州花でもある(コネチカット州、ペンシルベニア州)
     国家的な誇りや希望の象徴として扱われていることも、花言葉に影響を与えている可能性があります。

「カルミアの丘で」

五月の風が山を渡り、若草をなでるように吹き抜けていく。山の中腹、雑木林の切れ間にひっそりと広がる一角に、カルミアの群生地があった。

その丘を、少女・結花(ゆいか)は祖父とともに毎年訪れていた。カルミアが満開になる頃、まるで星が地上に降り立ったように、無数の花が咲き誇る。その景色は、彼女が幼い頃から何度も見てきた、心のアルバムの中の一頁だった。

しかし今年は、少し違った。

祖父は、もうこの丘に来ることができなかった。冬の終わり、長く患っていた病が彼を連れていったのだ。結花は、祖父の遺品の中にあったノートを持って丘へ来た。中には丁寧な字で綴られた日記が残されていた。

――「カルミアの蕾を見るたびに、わしは希望を感じる。固く閉ざされたあの形が、やがてぱっと開いて、星になる。人の心もきっと同じだ。悲しみも、不安も、やがて花開く日がくる。」

ページをめくるたび、祖父の思い出が胸にあふれてきた。

彼はかつてこの丘の保護活動に携わっていた。開発計画が持ち上がった時も、地域の人たちと声を上げて守ってきた。結花がこの丘を「希望の丘」と呼ぶようになったのも、祖父がそう話していたからだ。

丘に着くと、カルミアたちはまさに満開を迎えていた。風に揺れる無数の花。あの不思議な形の蕾も、もうすぐ開くだろう。紙細工のような形、折りたたまれた夢のような形。

結花は腰を下ろし、ノートを膝に広げた。最後のページに、祖父の筆跡が少し揺れて残っていた。

――「いつか、おまえがこの丘を見上げる日が来たら思い出してほしい。人生に暗い時があっても、カルミアはまた咲く。大きな希望は、そこにある。」

目頭が熱くなった。けれど、不思議と涙はこぼれなかった。

代わりに、風が吹きぬけた。丘に咲くカルミアたちが一斉にそよぎ、まるで花々が笑っているように見えた。

「ありがとう、おじいちゃん。」

そうつぶやくと、結花はノートをそっと閉じた。

彼女の中で何かがはっきりと芽生えたのを感じた。この丘を、花を、そして祖父の想いを、ずっと守っていこうと。

空を見上げると、白い雲がゆっくりと流れていた。その下で、カルミアの星たちが、まるで夜空を映すように輝いていた。

それは、確かに――
「大きな希望」の風景だった。