6月20日の誕生花「ベロニカ」

「ベロニカ」

Goran HorvatによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Veronica
  • 科名:オオバコ科(以前はゴマノハグサ科に分類)
  • 属名:ベロニカ属(クワガタソウ属)
  • 原産地:ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど広範囲
  • 開花時期:4月~11月(春咲き、夏咲き、秋咲き)
  • 花色:青、紫、白、ピンクなど
  • 草丈:種類によって10cm〜1m以上までさまざま

ベロニカについて

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特徴

  • 穂状の花序:細長く伸びた花穂に、びっしりと小さな花を咲かせるのが特徴。上に向かってすっと伸びる姿が美しい。
  • 丈夫で育てやすい:日当たりの良い場所を好み、乾燥にも比較的強い。
  • 種類が豊富:園芸種だけでなく、野生種(クワガタソウなど)も多く存在し、高山植物から地被植物まで多様。
  • 蜜源植物:花はミツバチや蝶などの昆虫を引き寄せるため、自然庭園にも適している。

花言葉:「忠実」

ベロニカの花言葉には「忠実」「名誉」「女性の貞節」などがありますが、とりわけ「忠実(faithfulness)」という意味は、以下のような理由から生まれたと考えられます。

1. まっすぐ伸びる花姿

 ベロニカの花は、細長い花穂が直立し、上へ上へと真っすぐに伸びていきます。その姿が「信念を貫く姿」や「忠実さ」「一途さ」を連想させます。

2. 長期間咲き続ける性質

 比較的長く花を咲かせるため、「一度咲いたら、しばらく咲き続けてくれる」=「変わらぬ忠誠心」というイメージに重ねられました。

3. ラテン語由来の意味

 学名の「Veronica」はラテン語で「真実」を意味する vera icon(ヴェラ・アイコン)=真の肖像 に由来するという説もあります。これはキリストの顔を写し取ったとされる聖女ヴェロニカの伝説にもつながり、「真実」「忠実」のイメージと結びつきます。

補足:伝承と信仰の影響

特にヨーロッパでは、ベロニカという名は聖女ヴェロニカ(イエスが十字架を背負って歩く途中、顔を拭ったとされる女性)と重ねられることもあり、「献身的で忠実な愛」「変わらぬ思い」を象徴する花とされています。


「ベロニカの丘」

風が吹き抜ける丘の上、ひときわ青く揺れる花畑があった。
 その名は「ベロニカの丘」。町では、忠誠の誓いを交わした恋人たちが訪れる場所として知られている。

 ある夏の終わり、遥(はるか)は一人でこの丘を訪れていた。右手には、色あせた手紙が一通。
 それは五年前、彼がこの丘に残したものだった。

「僕は、君を待ち続けるよ。
たとえ時が過ぎても、君の答えが変わらない限り、ここにいる。」

 遥と湊(みなと)は高校時代の同級生だった。
 真っすぐで、嘘をつけない少年。いつも口数は少なかったが、彼の言葉は一つひとつが芯を持っていた。

 卒業の日、彼は遥に告白した。
 だが、彼女はその場で答えを出せなかった。進学も、夢も、それぞれに違う道を選ぼうとしていたからだ。

「……ありがとう。でも、少しだけ時間が欲しい」
 そう言った遥に、湊は優しく笑って言った。

「じゃあ、君のタイミングでいい。ここに置いておくよ」

 彼は、丘のベロニカの花の間に、手紙をそっと挟んだ。

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 それから五年。遥は都会で学び、就職し、そして何かを見失っていた。
 毎日が忙しく、心がどこか遠くなっていた。そんなとき、ふとあの丘のことを思い出したのだった。

 久しぶりに訪れた丘は、あの頃と変わらず青い花で満ちていた。
 ベロニカの花は、今もまっすぐ天を仰ぎ、風にたなびいていた。

「……変わってないね。あのときと」

 足元には、湊が残した手紙。紙はすっかり古びていたが、文字はしっかりとそこにあった。
 遥はその場にしゃがみ込み、花に触れた。冷たくも温かな感触が指先を包む。

 ベロニカ――忠実の花。
 どんなに時が流れても、まっすぐに咲き、静かに待ち続ける花。
 まるで湊のようだった。

「……私、ようやく答えがわかったよ」

 遥はポケットから、ペンと紙を取り出した。
 小さく、丁寧に書き記す。

「私も、変わらなかった。ずっと、あなたに戻りたかった。」

 手紙を花の中に忍ばせると、彼女はそっと立ち上がった。
 風がまた丘を吹き抜け、ベロニカの花々が一斉に揺れた。

 それはまるで、長く待っていた誰かが、ようやく笑って応えてくれたようだった。