4月2日、6月23日の誕生花「ミヤコワスレ」

「ミヤコワスレ」

ミヤコワスレ(都忘れ)は、キク科の多年草で、日本や東アジアに自生する美しい花です。春から初夏にかけて咲き、紫やピンク、白などの可憐な花をつけます。

名前の由来

「ミヤコワスレ」という名前は、承久の乱(1221年)に敗れ佐渡に流された順徳天皇が、この花を見て都(京都)を思う気持ちを一時でも忘れられたことから名付けられたとされています。

ミヤコワスレについて

ミヤコワスレ(都忘れ)の特徴

🌿 分類・基本情報

  • 学名:Aster savatieri
  • 科名:キク科(Asteraceae)
  • 属名:シオン属(Aster)
  • 原産地:東アジア
  • 開花時期:4月~6月
  • 花色:紫、ピンク、白 など
  • 草丈20~30cm程度

🌼 特徴

  1. 可憐な花姿
    • 小さめの菊のような花を咲かせ、爽やかで上品な雰囲気を持っています。
  2. 丈夫で育てやすい
    • 半日陰でも育ち、比較的耐寒性・耐暑性があるため、庭植えや鉢植えにも適しています。
    • 乾燥には少し弱いので、適度な水やりが必要です。
  3. 多年草で毎年咲く
    • 一度植えれば毎年春から初夏に花を咲かせるため、手間がかかりません。
    • 株分けで増やすことができ、長く楽しめます。
  4. 和風の庭や茶花にぴったり
    • 風情のある佇まいが、和風の庭や茶花(茶道で使われる花)としても人気があります。
  5. 花言葉にちなんだ贈り物にも
    • 「また会う日まで」「しばしの別れ」といった花言葉を持つため、卒業や送別の贈り物としても使われます。

優雅で落ち着いた雰囲気のミヤコワスレは、日本の庭園や風情ある風景にぴったりの花ですね。😊


花言葉:「また会う日まで」

「また会う日まで」という花言葉は、別れの寂しさの中にも再会を願う温かさが感じられます。そのため、卒業や送別のシーンで贈られることが多い花です。ほかにも「しばしの別れ」「穏やかさ」「強い意志」といった花言葉もあります。

ミヤコワスレの優しい雰囲気と意味は、大切な人との別れや旅立ちの際に心を和ませてくれる花ですね。


「また会う日まで」

 駅のホームに、春の風が吹き抜ける。桜の花びらが舞い、淡いピンクの絨毯を作っていた。

 「体に気をつけてね、真由。」

 「うん……涼介も。」

 真由はスーツケースの取っ手を握りしめながら、目の前に立つ涼介を見つめた。彼の瞳には、どこか寂しげな色が滲んでいる。大学を卒業し、東京での新しい生活が始まる。二人は同じ地元で育ち、同じ高校に通い、同じ景色を見てきた。でも、今日からは違う道を歩む。

 「これ、渡しておく。」

 涼介は、小さな鉢植えを差し出した。そこには、小さな紫色の花が咲いている。

 「……ミヤコワスレ?」

 「うん。『また会う日まで』って花言葉なんだってさ。」

 真由はそっとその花を受け取った。小さな花びらが風に揺れている。その意味を噛みしめるように、彼女は優しく微笑んだ。

 「ありがとう、大事にする。」

 電車の到着を知らせるアナウンスが流れる。静かなホームに響くその声が、二人に別れの時を告げていた。

 「また、会おうな。」

 「うん、また会う日まで。」

 真由は一歩踏み出し、電車に乗り込む。窓越しに涼介の姿が小さくなっていくのを見ながら、ぎゅっと鉢植えを抱きしめた。

 ***

 東京での生活は、想像以上に忙しく、慌ただしかった。新しい仕事、新しい人間関係。慣れない環境に戸惑いながらも、真由は少しずつ前に進んでいた。

 部屋の窓際に置かれたミヤコワスレは、変わらず静かに咲いていた。その紫の花を眺めるたびに、あの日の駅のホームを思い出す。そして、涼介の言葉が心に蘇る。

 「また会おうな。」

 いつか、また会える日が来るのだろうか。そんなことを考えながら、真由はそっと花びらに触れた。

 ***

 それから数年後。

 春の訪れを感じさせる暖かい風が吹くある日、真由は久しぶりに地元へ帰ってきた。仕事がひと段落し、少しの休暇を取ることができたのだ。

 駅を降りると、懐かしい景色が広がっていた。変わらない町並み、変わらない空気。そして、変わらない人。

 「真由?」

 声のする方を振り向くと、そこには涼介が立っていた。少し大人びた表情、でも昔と変わらない優しい笑顔。

 「涼介……久しぶり。」

 「おかえり。」

 その言葉に、真由は思わず微笑んだ。

 「ただいま。」

 春風が二人の間を吹き抜ける。その風の中に、確かにあの日の約束が生きている気がした。

 また会う日まで——それは、決して遠い未来の話ではなかったのかもしれない。

6月15日、18日、23日の誕生花「タチアオイ」

「タチアオイ」

基本情報

  • 学名Alcea rosea
  • 英名:Hollyhock(ホリーホック)
  • 科名/属名:アオイ科/ビロードアオイ属
  • 原産地:地中海沿岸西部地域からアジア
  • 開花時期:6月〜8月(初夏〜夏)
  • 草丈:1〜3メートル(高いものでは3メートル以上にも)
  • 分類:多年草または二年草(園芸では一年草扱いされることも)

タチアオイについて

特徴

  • 背が高くまっすぐに伸びる茎の先に、円錐状に多数の花を咲かせるのが特徴。
  • 花の色は非常に多様で、赤・ピンク・白・黄色・紫・黒に近い深紅などがある。
  • 一番下のつぼみから順に咲き、花がてっぺんまで咲き終わると梅雨が明けるという言い伝えがある。
  • 日本では江戸時代から栽培されている伝統的な園芸植物。

花言葉:「野望」

タチアオイの花言葉には複数ありますが、その中でも特に有名なのが「野望」です。この花言葉の由来には以下のような理由が考えられています:

◎ 背の高い成長姿勢

  • タチアオイはまっすぐ天に向かって1メートル〜3メートル近くも伸びるため、その姿が「上昇志向」「目標に向かって突き進む野心」を連想させます。

◎ 段階的に上に咲いていく花

  • 下から順に花を咲かせ、徐々に上を目指して開花していく姿は、段階を踏んで目標に到達しようとする努力や「野望」にも見えます。

◎ 古来の象徴的イメージ

  • 中世ヨーロッパでは神聖な植物とされ、聖職者の庭や修道院に植えられていたこともあり、「理想の実現を求める精神」といった解釈もあります。

「花は野望の先に咲く」

祖父の庭には、毎年、初夏になるとタチアオイが咲き誇った。背の高い茎を天に向けてまっすぐに伸ばし、下から上へと段階的に花を咲かせていくその姿は、まるで何かを目指して這い上がる人のように見えた。

 祖父は若いころ、地方の寒村から出て、苦労の末に小さな製材所を立ち上げた。学もなく、後ろ盾もなく、それでも「町で一番の工場を作るんだ」と言い続けていたらしい。

 「周りはバカにしたさ。だがな、あの花を見てみろ。誰が咲けって言った? 誰も言っちゃいない。それでも、天を目指すように咲くだろう」

 祖父の話を聞きながら、私は子どもながらにそのタチアオイに恐れにも似た敬意を抱いた。綺麗で、でも力強くて、決して甘くない花だった。

 年月が過ぎ、祖父は亡くなり、私は東京で会社勤めをするようになった。忙しい日々に追われ、祖父の言葉も花の姿も、記憶の片隅に埋もれていった。

 ある年の初夏、ふと田舎の家を訪れると、庭の一角にタチアオイが咲いていた。世話する人もいないはずなのに、まるで意志をもって咲いているかのようだった。

 「花は下から順に咲くんだ。てっぺんまで咲いたら、梅雨が明ける」

 そう祖父は言っていた。私はその花のてっぺんを見上げ、ふと胸の奥に疼くものを感じた。

 会社では昇進の話が出ていた。でも、そのためには部下を切り捨て、上の意向に逆らわず、己を押し殺していかねばならなかった。自分が何のために働いているのか、何を目指していたのか、わからなくなっていた。

 「上に咲くには、下を踏まなきゃいけないんですかね」

 私はつぶやいた。すると、風に揺れるタチアオイの花がカサリと音を立てた。

 いいや、違う。段階を踏んで、一歩ずつ、咲いていく。足元をしっかりと広げて、陽を浴びて、水を吸って、ようやく上へと届く。

 それが、祖父の言う「野望」だったのではないかと思った。周囲の雑音に負けず、自分の信じた理想に向かって伸びること。それは誰かを踏み台にすることでも、無理に自分を押し殺すことでもない。

 私はその年、昇進の話を断った。そして、同僚と一緒に小さな起業をした。やりたいことがあった。作りたいものがあった。それは無謀かもしれない。でも、あの花のように、ゆっくりでも、上を目指して咲いてみようと思ったのだ。

 数年後、庭にタチアオイの苗を植えた。まだ背は低く、花も咲かない。でもいい。あの花が咲くまで、私は上を見続けていたい。


【あとがき】
この短編は、タチアオイの「野望」という花言葉の背景にある

  • 上へ向かう成長姿勢
  • 段階的な開花
  • 理想を求める力

    を、主人公の人生と重ね合わせて描いた物語です。