「黄色のバラ」

基本情報
- 和名:黄色いバラ
- 英名:Yellow Rose
- 学名:Rosa spp.(品種によって異なる)
- 科名/属名:バラ科/バラ属
- 原産地:アジア(中国など)を中心に世界中に品種あり
- 開花時期:春~秋(四季咲き品種も多い)
黄色のバラについて

特徴
- 花の色:鮮やかな黄色からレモン色、黄橙色までバリエーションがある
- 香り:品種によって異なり、微香から甘い香りまで幅広い
- 樹形:木立性・つる性などさまざまな形がある
- 利用法:庭植え、鉢植え、切り花、フラワーアレンジメントなど
黄色いバラは、明るく陽気な印象を与えるため、祝いや感謝の気持ちを表すギフトによく使われます。
花言葉:「献身」

黄色いバラの花言葉は複数あり、その中の一つが「献身(Devotion)」です。
🌟「献身」の由来と背景
- 色の象徴性:黄色は、太陽や光、希望、友情、温かさを連想させる色です。
- 花の性質:バラは世話を必要とする花で、育てる人の愛情や手間=「献身的な思い」がこもることから、この花言葉が与えられました。
- 対人関係の意味:黄色いバラは友情や親しみを表すことが多いですが、「一途に相手を思う気持ち」「陰で支える愛情」を表現する場面で「献身」という花言葉が使われることがあります。
なお、国や文化によって黄色いバラの印象が異なることもあり、時には「嫉妬」「薄れゆく愛」などの意味も持つことがありますが、近年では「ポジティブな黄色」として好意的に捉えられる傾向が強くなっています。
「黄のひかり、あなたに届くまで」

毎朝七時、駅前の花屋「ルナ・ブロッサム」は静かにシャッターを上げる。開店準備をする店主の麻子(あさこ)は、棚の一番目立つ場所に黄色いバラを飾るのが習慣だった。朝の陽に透けた花弁は、まるで誰かの気持ちを受け止めるようにやわらかく開いていた。
それは、かつて彼女が誰かに捧げた思いの象徴でもあった。

十年前、麻子は病院に勤める看護師だった。夜勤明けのまどろみのなか、ある患者のベッド脇にいつも黄色いバラが一輪、無造作に置かれていることに気づいた。送り主は、患者の夫。重い病に伏した妻のそばに毎日花を添え、何ひとつ見返りを求めることなく、静かに帰っていった。
「どうして毎日、黄色のバラなんですか?」
ある日、思いきって尋ねたとき、彼は恥ずかしそうに笑った。
「うちの妻がね、黄色を見ると『明日もがんばろうって思える』って言うんです。バラは世話がいるだろ。俺も妻に手をかけ続けたいって思ってね」

その言葉は麻子の心に深く残った。愛とは、派手さや言葉ではなく、静かな「献身」に宿るのだと、その時初めて知った。
それから数年後、麻子は看護師を辞め、花屋を開いた。理由は誰にも語らなかった。ただ、開店の日に彼女が最初に仕入れたのは、やはり黄色いバラだった。
ある雨の日、制服姿の女子高生が傘もささずに店先に立っていた。ぐしょ濡れのまま、花を見つめている。
「黄色いバラって、どうしてこの色なんですか?」
不意に問われ、麻子はその少女にティッシュと毛布を差し出しながら言った。
「太陽みたいな色でしょう? 光、希望、あたたかさ……そんな気持ちを込めて、人はこの花を贈るのよ」

少女は小さく頷いた。
「献身、って花言葉があるって聞きました」
「ええ。相手のために尽くす気持ち。その人のそばにいたいと願う、静かな強さのことよ」
少女は一輪の黄色いバラを買った。
「お母さんに、明日手術なんです。伝えたかったんです。私、がんばるからって」
その背中を見送った麻子は、かつて病院で見たあの男性の姿を思い出していた。
夜になって店を閉めるとき、麻子は黄色いバラをもう一輪だけ、ガラスケースの中にそっと置いた。誰かの心を照らすように。
それは、誰かを思うすべての人に贈る「献身」の灯だった。