「カトレア」

カトレア(Cattleya)は、ラン科の植物で、美しい花を咲かせることで知られています。「洋ランの女王」とも称され、華やかでエレガントな雰囲気が特徴です。
カトレアについて

科名:ラン科(Orchidaceae)カトレア属(Cattleya)
原産地:中南米
カトレアの特徴
育て方:温かく明るい環境を好み、水はけのよい土を使用することが重要。乾燥気味に育てると健康的に育つ。
花の形と色:大きく豪華な花を咲かせ、花びらのフリルのような形が特徴的。色はピンク、紫、白、黄色、オレンジなどさまざま。
香り:甘く濃厚な香りを持つ種類が多く、特に一部のカトレアは香水のような芳香を放つ。
開花時期:種類によって異なるが、主に春と秋に咲くことが多い。
花言葉:「成熟した大人の魅力」

「成熟した大人の魅力」
→ 洋ランの中でも特に華やかで気品があることから、大人のエレガンスや魅力を象徴するとされています。
その他の花言葉
「優雅な女性」
「魅惑的」
「魔力」
特に、エレガントで上品な雰囲気を持つことから、格式の高い場面で贈られることが多い花です。結婚式やパーティーなどのブーケとしても人気があります。
「優雅なる約束」

高級レストランの一角で、白いカトレアの花がそっと揺れていた。アンティークの花瓶に活けられたその花は、テーブルに座る女性の雰囲気とよく調和していた。
彼女の名前は美月(みづき)。40代に差しかかる頃、落ち着いた大人の魅力を備えた女性だった。端正な黒髪を緩やかに巻き、深いワインレッドのドレスを纏う姿は、まるでこの場の空気そのものを優雅にするかのようだった。

向かいに座るのは、一流商社に勤める男性、圭吾(けいご)。長い海外赴任を終え、久しぶりに日本に帰ってきた彼は、どこか緊張した面持ちでワイングラスを傾けた。
「変わらないね、美月さんは」
彼の言葉に、美月は静かに微笑んだ。
「あなたは少し変わったわね。大人の男の余裕、って感じかしら?」

圭吾は苦笑しながら、テーブルの上に小さな箱をそっと置いた。美しいリボンがかけられている。
「開けてみて」
美月がリボンを解くと、中からカトレアのブローチが現れた。繊細な金細工に、パールがあしらわれている。
「カトレアの花言葉を知ってる?」圭吾が尋ねる。
「ええ、『成熟した大人の魅力』 でしょう?」

「それもある。でも、俺にとっては——」
彼は言葉を探すように一瞬目を伏せ、続けた。
「ずっと忘れられなかった想いの象徴でもあるんだ」
美月は驚いた表情を見せたが、すぐに笑みを深めた。

「ずっと、って?」
「大学の頃から。気づいてた?」
彼女はグラスを傾け、ワインを一口飲んだ。甘く、深い香りが広がる。
「……ええ、なんとなく。でも、あなたが世界を飛び回る人だと知ってたから」
圭吾は微かに息をつき、真剣な眼差しで彼女を見つめた。

「美月さん。もう俺は、どこにも行かない。あなたのそばにいたい」
店の奥でピアノが静かに奏でられ、カトレアの花がほのかな香りを漂わせる。
美月は指先でブローチを撫で、そっと微笑んだ。
「じゃあ、その想い、もう少しだけ聞かせてもらおうかしら?」
夜の帳が降りる中、二人の時間はゆっくりと、しかし確かに進んでいった。