4月28日の誕生花「バイカウツギ」

「バイカウツギ」

基本情報

  • 学名Philadelphus satsumi または Philadelphus coronarius(種による)
  • 科名:アジサイ科(旧分類ではユキノシタ科)
  • 属名:バイカウツギ属 (Philadelphus)
  • 原産地:日本(本州、四国、九州)
  • 開花時期:6月~7月
  • 花色:白
  • 樹高:2m
  • 特徴
    • 初夏に、白くて梅に似た形の花を咲かせます。
    • 花には強い甘い香りがあり、庭木や生け垣に人気です。
    • 「空木(ウツギ)」という名前は、茎の中が空洞になっていることに由来します。
    • 日当たりと風通しのよい場所を好み、丈夫で育てやすい植物です。

バイカウツギについて

Gabriele LässerによるPixabayからの画像

特徴

  • 花の形:一重咲きから八重咲きまであり、基本的には梅に似た清楚な花姿。
  • 香り:非常に強く甘い芳香を放つ。特に夕方以降に香りが際立つことが多いです。
  • 用途:庭園樹、鉢植え、切り花、生垣。
  • その他
    • 花期が短いため、見頃を逃さないよう注意が必要です。
    • 剪定(せんてい)は、花が終わった直後に行うとよいです(夏以降の剪定は翌年の花芽を切るおそれがあります)。

花言葉:「香気」

Gabriele LässerによるPixabayからの画像

花言葉

  • 「気品」
  • 「思い出」
  • 「気高い人」
  • 「香気」

「香気」の由来: バイカウツギの花は非常に強く甘い香りを放つため、「香り高い花」という印象が古くから人々に親しまれてきました。そのため、花言葉に「香気」が与えられています。この香りの良さは、夜間に特に強く感じられることが多く、古くは詩歌や文学にもその芳香がたびたび取り上げられています。


「香気に満ちる庭で」

Stacy KGによるPixabayからの画像

初夏の夜、祖母の家の庭には、甘く、どこか懐かしい香りが満ちていた。

昼間は見落としそうなほど素朴な白い花が、夜になると、まるで目を覚ましたかのようにその存在を主張する。祖母はそれを「バイカウツギ」と呼んでいた。幼いころ、私はその花を「夜の花」と勝手に名付け、眠れない夜に何度も縁側から眺めた。

「この香りを嗅ぐとね、昔のことを思い出すんだよ」

祖母はそう言いながら、ゆっくりと花に顔を寄せた。

それは、祖母の若かりしころの話だった。戦後間もない時代、食べるものにも困る毎日。そんな中でも、家の裏手にひっそりと咲くバイカウツギの香りだけは、どこか現実とは違う、別世界へと誘うようだったらしい。

「暗くてもね、香りだけははっきりわかるの。だから、目を閉じても歩けたのよ」

祖母は笑った。

私が大学進学を機に遠く離れた街へ出たのは、あの庭のバイカウツギが満開を迎えていたころだった。

「いつでも帰っておいで。香りで道案内してあげるから」

送り出すとき、祖母はそう言った。

季節が巡り、私は忙しさにかまけて、なかなか帰省できずにいた。電話越しに聞こえる祖母の声は、次第に小さく、かすれていった。

István Károly BőcsによるPixabayからの画像

ある日、ふいに届いた知らせ。祖母が眠るように亡くなったという。

急いで帰郷した日の夜、私は一人で祖母の庭に立った。夜風に乗って、あの懐かしい香りが漂ってきた。どこかで確かに、バイカウツギが咲いていた。月明かりにぼんやりと浮かび上がる白い花たち。その香りに包まれながら、私は声にならない涙を流した。

「おかえり」

ふと、耳元でささやくような声がした気がした。

振り返っても、誰もいない。ただ、バイカウツギの香りが、まるで私を包み込むように広がっていた。

Gabriele LässerによるPixabayからの画像

祖母の言葉を思い出す。「香りで道案内してあげるから」と。

そうだ、ここが私の帰る場所だ。たとえ祖母がいなくても、この香りがある限り、私は何度でもここへ戻ってこられる。

そっと花に触れる。やわらかく、少しひんやりとした感触。目を閉じれば、幼い日の記憶、祖母の笑顔、夜風の音——すべてがよみがえってくる。

香りは記憶の鍵だ。
そして今、私はその鍵を握りしめて、祖母とまた会った気がしていた。

夜空を見上げると、満天の星が光っていた。
どこまでも続くこの香気の庭で、私はゆっくりと深呼吸した。

「ただいま」

誰にともなく、私はそうつぶやいた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です