5月8日の誕生花「マツバギク」

「マツバギク」

manseok KimによるPixabayからの画像

■ 基本情報

  • 和名:マツバギク(松葉菊)
  • 学名:Lampranthus、Delospermaなど(複数の種が「マツバギク」と呼ばれます)
  • 科名:ハマミズナ科(ツルナ科とも)
  • 原産地:南アフリカ
  • 形態:多年草(常緑の多肉植物)
  • 花期:4月~5月(ランプランサス属)、6月~10月(デロスペルマ属)

マツバギクについて

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■ 特徴

  • :名前のとおり、松葉のように細長く、肉厚な多肉質の葉が特徴です。
  • :デイジーに似た形の鮮やかな花を咲かせます。ピンク、紫、オレンジ、白などカラーバリエーションが豊富です。
  • 性質:非常に乾燥に強く、日当たりの良い場所を好みます。砂利地やロックガーデン、斜面の地被植物として使われることも多いです。
  • 育てやすさ:耐寒性・耐暑性ともに強く、放っておいても育つほど丈夫です。

花言葉:「心広い愛情」

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マツバギクの花言葉「心広い愛情」は、以下のような特徴に由来していると考えられます。

  • 咲き誇る花の姿:マツバギクは小さな株でもたくさんの花を一斉に咲かせ、周囲を明るく彩ります。その様子が、見返りを求めず広く愛を与える姿に例えられています。
  • 丈夫で世話いらずな性格:乾燥や過酷な環境でもよく育ち、周囲の環境に順応する懐の深さが「心の広さ」に通じます。
  • 長い開花期間:春から秋にかけて長く花を咲かせ続ける姿は、尽きることのない愛情の象徴とされています。

「ひとひらの広がり」

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真夏の陽射しがじりじりとアスファルトを焼いていた。古びた団地の一角、小さな庭に咲く鮮やかな紫の花が、ひときわ目を引いた。雑草の間から溢れるように顔をのぞかせているその花は、マツバギク。誰が世話をしているのかも分からないまま、毎年この季節になると律儀に咲き、住民たちの目を楽しませていた。

七十を越えた昌子さんは、その花に誰よりも親しみを感じていた。

「今年もよう咲いたねえ」

と、水をやるふりをしながらマツバギクに語りかけるのが日課だ。かつては手入れをする人もいたが、今はもう姿を見せない。だけど不思議なことに、誰にも手をかけられなくなってからの方が、この花は元気に咲くようになった気がする。

昌子さんには息子が一人いた。若い頃に家を出てから音沙汰もなく、最後に会ったのはもう二十年以上前だ。電話も手紙も来ない。はじめの数年は泣いたが、今はもう泣くこともない。ただ、彼が子どもの頃に「お母さんの花だね」と言ったこのマツバギクだけが、記憶のなかで彼とつながる唯一のものだった。

「花はいいね。誰かに見てほしいって思ってるわけじゃないのに、こんなに咲いて」

ある日、団地の隣に引っ越してきた若い母親が、小さな女の子の手を引いて花の前で足を止めた。

「きれいねえ、この花。ママ、これなんて名前?」

「ええっとね、たしか……マツバギク、って言うのよ」

その声に驚いて振り返ると、母親は少し照れながら会釈をした。

「すみません、勝手に見させてもらって……うちの子、この花が気に入ったみたいで」

「いいのよ。この花はね、見る人の心を明るくするの」

「本当に、そうですね。なんだか元気が出ます」

その日から、親子は毎日のように花の前に来て、にこにこと話すようになった。ある日、女の子が昌子さんに小さな絵を渡してくれた。そこにはマツバギクと、「おばあちゃん、ありがとう」の文字。

「ありがとうって、何が?」

「いつも、花、きれいにしてくれてるから」

昌子さんは笑った。

「この子ね、自分で育ってるのよ。誰にも文句言わず、文句言われず、ただ、咲くの。……あなたも、そうやって咲けばいいよ」

日が傾くなかで、マツバギクの花びらが夕陽に透けて光っていた。

そしてその夜、玄関先に一通の手紙が届いた。差出人は、あの息子からだった。

「母さん、元気ですか。ずっと連絡できなくてごめんなさい。最近、娘ができました。マツバギクを見るたび、あなたを思い出します——」

昌子さんは、そっと手紙を胸に当てた。涙は出なかった。ただ、胸の奥が、じんわりとあたたかかった。

花は、見返りを求めず咲き続ける。誰かがそれに気づき、受け取ったとき、広い愛情は静かに、しかし確かに伝わるのだ。

まるで——マツバギクのように。

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