6月15日の誕生花「ヤマボウシ」

「ヤマボウシ」

基本情報

  • ミズキ科ミズキ属の落葉高木
  • 学名:Cornus kousa
  • 原産地:日本、朝鮮半島、中国
  • 開花時期:5月~7月頃
  • 樹高:5~15m程度
  • 山地や雑木林に自生する
  • 名前の由来は、白い総苞片(花びらのように見える部分)が僧兵(山法師)の頭巾姿に似ていることから
  • 秋には赤い果実を実らせ、紅葉も楽しめる

ヤマボウシについて

特徴

  • 白や淡いピンクの総苞片が十字形に広がり、美しい花姿を見せる
  • 実際の花は中央に集まる小さな緑色の部分
  • 花が咲く期間が比較的長い
  • 初夏の爽やかな景観を演出する庭木として人気が高い
  • 病害虫に強く、育てやすい
  • 秋にはイチゴのような赤い実をつける
  • 春の花、夏の緑葉、秋の実と紅葉、冬の樹形と、一年を通して観賞価値が高い
  • 自然樹形が美しく、シンボルツリーとしても利用される


花言葉:「友情」

花言葉「友情」の由来

  • 四方へ均等に広がる白い総苞片の姿が、人と人が支え合う関係を連想させるため
  • 一本の木に数多くの花が調和して咲く様子が、仲間との結びつきや協調性を象徴すると考えられたため
  • 山野で群生する姿が、人々の助け合いや絆を思わせることに由来する
  • 長い年月をかけて大きく育つ樹木であることから、時間を重ねて育まれる友情のイメージと結び付けられたため
  • 四季を通じて人々を楽しませる姿が、「変わらず寄り添う友人」の存在を連想させることに由来する

ヤマボウシに関連する花言葉

  • 「友情」
  • 「永続性」
  • 「返礼」
  • 「私の想いを受けてください」


「ヤマボウシの下で交わした約束」

 六月の終わりだった。

 青空を切り取るように、白いヤマボウシの花が広がっている。

 公園の中央に立つその木は、まるで大きな傘のように枝を伸ばし、訪れる人々を優しく迎えていた。

 陽介はその木の下で立ち止まり、懐かしい景色を見上げた。

 四枚の白い花びらに見える総苞片が風に揺れている。

 子どもの頃から変わらない風景だった。

 そして、この木を見るたびに思い出す人がいる。

 親友の大輔だった。

 ――初めて会ったのは小学四年生の春だった。

 転校してきた陽介は、教室の隅でひとり座っていた。

 誰に話しかければいいのかわからない。

 周囲の笑い声が遠く聞こえる。

 その時だった。

 「なあ、一緒にサッカーやらない?」

 突然声をかけてきたのが大輔だった。

 日焼けした顔。

 人懐っこい笑顔。

 断る理由も見つからず、陽介は校庭へ出た。

 それが始まりだった。

 それから二人はいつも一緒だった。

 放課後は川で魚を追いかけた。

 山へ秘密基地を作った。

 宿題を忘れて先生に怒られたこともある。

 喧嘩もした。

 くだらないことで口をきかなくなったこともある。

 それでも翌日には自然と仲直りしていた。

 理由なんてなかった。

 一緒にいるのが当たり前だったからだ。

 ある夏の日。

 二人はこの公園へやって来た。

 ヤマボウシの木の下だった。

 大輔が空を見上げながら言った。

 「この木、なんかすごいよな」

 「なにが?」

 「ほら、枝が四方に広がってるだろ」

 陽介も見上げる。

 確かにそうだった。

 白い花がどの方向にも均等に咲いている。

 まるで誰かを仲間外れにしないように。

 そんな姿だった。

 「みんなで支え合ってるみたいだな」

 大輔が笑った。

 その言葉に、陽介も頷いた。

 その頃はまだ知らなかった。

 ヤマボウシの花言葉が「友情」だということを。

 けれど、あの木は確かに友情そのものに見えた。

 互いを支えながら広がる枝。

 数え切れないほどの花。

 どれひとつ欠けても同じ景色にはならない。

 それはまるで、自分たちのようだった。

 中学へ進学し、高校へ進み、二人は少しずつ違う道を歩き始めた。

 大輔は地元に残った。

 陽介は都会の大学へ進学した。

 会う回数は減った。

 それでも連絡は続いた。

 誕生日にはメッセージを送り合った。

 帰省すれば飲みに行った。

 昔話をして笑った。

 距離は離れても、友情は変わらなかった。

 しかし二十代の終わり頃。

 大輔が病気になった。

 突然だった。

 入院したという連絡を受け、陽介は慌てて病院へ向かった。

 病室で再会した親友は、少し痩せていた。

 それでも笑顔は昔のままだった。

 「そんな顔するなよ」

 大輔は笑った。

 「死ぬわけじゃないんだから」

 陽介は言葉を失った。

 何を言えばいいのかわからなかった。

 だが大輔は穏やかだった。

 「なあ、覚えてるか?」

 「何を?」

 「ヤマボウシの木」

 その名前を聞いて、陽介は思わず笑った。

 「ああ、覚えてる」

 「俺さ、あの木好きだったんだよ」

 窓の外を見ながら大輔は続けた。

 「毎年花が咲いて、毎年実がなってさ」

 「うん」

 「ずっと変わらないんだよな」

 しばらく沈黙が流れた。

 そして大輔は静かに言った。

 「友情って、ああいうことなのかもな」

 陽介は返事ができなかった。

 胸の奥が熱くなった。

 大輔は続けた。

 「毎日会わなくてもいい」

 「……」

 「隣にいなくてもいい」

 「うん」

 「でも、根っこではつながってる」

 窓から差し込む夕陽が病室を染める。

 その光の中で、大輔は少し照れくさそうに笑った。

 「だから大丈夫だ」

 それから一年後。

 大輔は静かに旅立った。

 葬儀の日。

 陽介は涙が止まらなかった。

 親友を失った現実を受け入れられなかった。

 もう会えない。

 もう笑い合えない。

 その事実だけが胸を締め付けた。

 そして季節は巡った。

 初夏。

 陽介は久しぶりにあの公園を訪れた。

 ヤマボウシの木は変わらず立っていた。

 白い花が枝いっぱいに咲いている。

 風が吹いた。

 花が揺れる。

 まるで誰かが手を振っているようだった。

 陽介は木の下に腰を下ろした。

 見上げると、無数の花が空へ向かって広がっている。

 どの花も支え合うように咲いている。

 その姿を見ているうちに、ふと思った。

 友情とは、いつも一緒にいることではないのだろう。

 離れていても。

 会えなくなっても。

 心のどこかで相手を支え続けること。

 長い年月をかけて育ち、大きな枝を広げるヤマボウシのように。

 季節が変わっても変わらない絆のことなのだ。

 ヤマボウシには「永続性」という花言葉もある。

 きっとそれは、こういう意味なのだろう。

 時を超えて残る想い。

 失われることのない絆。

 そして「返礼」。

 陽介は静かに微笑んだ。

 自分はたくさんのものを大輔から受け取っていた。

 勇気も。

 優しさも。

 笑顔も。

 それらは今も自分の中に生きている。

 だからこそ、これからは自分が誰かに返していけばいい。

 それが親友への返礼なのかもしれない。

 風が吹いた。

 白い花が陽の光を受けて輝く。

 陽介は空を見上げる。

 青空の向こうに、大輔の笑顔が浮かんだ気がした。

 ――ありがとう。

 心の中でそう呟く。

 するとヤマボウシの枝が揺れた。

 まるで返事をするように。

 友情は終わらない。

 それは季節を超え、時を超え、人の心の中で咲き続ける。

 ヤマボウシの白い花のように。

 静かに、優しく、そしていつまでも。