「ホウセンカ」

基本情報
- 学名:Impatiens balsamina
- 科名:ツリフネソウ科
- 原産地:インドや東南アジア
- 一年草
- 花期:夏(7月〜9月頃)
- 花色:赤、桃、白、紫、絞り模様など
- 別名:爪紅草(つまくれないぐさ)、爪紅(つまべに)
- 花びらを揉んで汁を取り、女の子たちが爪を染めて遊んだことから。
ホウセンカについて

特徴
- 草丈は30〜60cmほど。
- 花は葉の付け根に一つずつ咲き、八重咲き・一重咲きの品種がある。
- 果実(さや)は熟すと少しの刺激で弾け、中の種を勢いよく飛ばす性質を持つ。
- 学名の Impatiens は「我慢できない」の意味で、この性質を表している。
- 水やりを好み、日当たりの良い場所でよく育つ。
花言葉:「私に触れないで」

由来
- ホウセンカは、熟した果実に軽く触れるだけで弾けて種を飛ばす。
まるで「触らないで!」と拒むような反応をすることから、この花言葉が生まれた。 - 英語圏でも同様に Touch-me-not(私に触れないで)という呼び名がある。
- 花姿の可憐さとは裏腹に、近づくとパッと弾ける繊細な性質が、控えめな人の心情や触れられたくない気持ちを象徴する。
「私に触れないで」

―ホウセンカの花言葉の由来―
ホウセンカは、熟した果実に軽く触れるだけで弾けて種を飛ばす。
まるで「触らないで!」と拒むような反応をすることから、この花言葉が生まれた。
英語圏でも同様に Touch-me-not(私に触れないで) という呼び名がある。
花姿の可憐さとは裏腹に、近づくとパッと弾ける繊細な性質が、控えめな人の心情や触れられたくない気持ちを象徴する。
短編小説
夏の午後、校舎の裏庭に咲くホウセンカの列を、真奈はそっと見つめていた。
鮮やかな赤や桃色の花は、どこか懐かしい。子どものころ、祖母が「爪紅にしてあげる」と言って、花びらをすりつぶし、真奈の小さな爪を染めてくれた。指先が赤く染まると、まるで特別な飾りをつけてもらったように嬉しかった。

だが、いま目にしているホウセンカは、当時の記憶よりもずっと切ない輝きを放っていた。
彼女は胸の奥に、どうしても触れられたくない秘密を抱えていたからだ。
「真奈」
背後から呼ぶ声に振り向くと、同級生の悠斗が立っていた。彼はいつも真っ直ぐで、誰にでも優しい。そんな彼に、真奈は心を許したいと思いながらも、なぜか一歩を踏み出せずにいた。
「こんなところにいたんだ」
悠斗が微笑んで近づいてくる。だが真奈は無意識に半歩後ずさる。その仕草を見て、悠斗の笑顔が一瞬だけ揺れた。

「ごめん……」
声がかすれる。理由もなく謝ってしまうのは、触れられることへの怖さが、自分でもうまく説明できないからだった。
風が吹き、ホウセンカの実がひとつ、はじけ飛んだ。軽い音とともに小さな種が四方に散らばる。その様子に悠斗は目を丸くした。
「すごい……触ったら弾けるんだな」
「そう。だから、ホウセンカの花言葉は『私に触れないで』なんだって」
真奈は小さくつぶやいた。
悠斗はその言葉を聞くと、真剣な表情で彼女を見つめた。
「……じゃあ、無理に触れない。真奈が、自分から手を伸ばしてくれるまで待つよ」

その一言に、胸の奥がじんわりと熱くなる。拒まれることを恐れていたのは、相手にではなく、自分自身の心だった。誰かに触れられるのではなく、自分から触れてしまうことが怖かったのだ。
ホウセンカの赤い花が、夕陽を受けて揺れている。触れられれば弾けてしまう実のように脆い心でも、誰かが待っていてくれるなら、いつかはその殻を破ってもいいのかもしれない。
真奈は小さく息を吸い込み、そっと一歩、悠斗のほうへ近づいた。