4月16日の誕生花「レンゲツツジ」

「レンゲツツジ」

レンゲツツジ(蓮華躑躅)は、日本の山地などで見られる美しい花木で、特に春から初夏にかけて鮮やかな花を咲かせます。以下に基本情報や特徴をまとめました。


🌸 レンゲツツジの基本情報

  • 学名Rhododendron molle subsp. japonicum
  • 科名:ツツジ科(Ericaceae)
  • 属名:ツツジ属(Rhododendron)
  • 和名:レンゲツツジ(蓮華躑躅)
  • 原産地:日本(本州、四国、九州の山地)
  • 開花時期:5月〜6月頃

レンゲツツジについて

🌼 特徴

  • 花の色:主に橙色(オレンジ)〜赤橙色。非常に鮮やかで目を引く。
  • 花の形:花はラッパ状で、1つの枝先に数輪の花をまとめて咲かせる。
  • :長楕円形で枝先に集まってつく。秋には紅葉することもある。
  • 樹高:1〜2メートル程度の落葉低木。
  • 環境:日当たりのよい山地や高原など、比較的涼しい気候を好む。
  • 毒性全草に有毒成分(グラヤノトキシン)を含むため、口にすると危険。特にミツなどにも注意が必要。

花言葉:「情熱」

鮮やかなオレンジ色の花が、まるで燃え上がるように咲くことから、「情熱」や「燃える思い」などの花言葉がつけられました。他にも「堅実な愛」「節度」などの意味が込められることもあります。


「レンゲツツジが咲くころに」

春の終わり、山間の小さな町にある古びた駅に、一人の青年が降り立った。背中には小さなリュック、手には古いカメラ。彼の名は蓮司。十年ぶりに帰ってきた故郷だった。

駅を出ると、空はどこまでも澄んでいて、遠くの山肌にオレンジ色の花が咲き乱れているのが見えた。

「レンゲツツジ……まだ咲いてるんだな」

その言葉は誰に向けたものでもなく、ただ風に溶けた。

十年前、この町には彼ともう一人、大切な存在がいた。朱音という名の少女。隣に住む同級生で、よく笑い、よく泣き、そしてレンゲツツジが大好きだった。

「この花、すごくきれいでしょ?でも毒があるんだって。情熱的すぎると、人を傷つけちゃうんだね」
そう言って朱音は笑っていた。まぶしい夕陽のなかで、その笑顔だけが、今も鮮明に記憶に焼きついている。

高校三年の春、蓮司は突然この町を出た。家の都合、というのが表向きの理由だったが、本当は朱音への想いに答えられなかったからだ。ずっと一緒にいたからこそ、壊れるのが怖かった。気持ちを伝えられず、彼は逃げるようにして町を離れた。

それきり、連絡は途絶えた。

町の坂道を登っていくと、あの頃と変わらぬ風景が迎えてくれた。木造の小学校、駄菓子屋の跡地、そして町外れのレンゲツツジが群生する丘。

丘に着くと、懐かしい木のベンチがあり、その隣に、見覚えのあるスケッチブックがあった。風にページがめくられ、中には色鮮やかなレンゲツツジの絵。そして、下に小さく書かれていた文字。

「また、咲いたね。今度はちゃんと、気持ちを伝えてよ」

蓮司は立ち尽くした。胸の奥で何かが、弾けたように熱くなる。

「朱音……?」

彼女はそこにはいなかった。ただ、絵と、花と言葉が残されていただけだった。でも、それで十分だった。彼女が待っていてくれたことが、何よりも嬉しかった。

蓮司はカメラを取り出し、ファインダーを覗いた。オレンジ色の花々が風に揺れ、まるで微笑むように彼を包む。

シャッターの音が響く。

「ただいま。……今度は、逃げないよ」

レンゲツツジは、その情熱の色で、彼の再出発を祝うように咲いていた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です