「ノウゼンカズラ」

基本情報
- 学名:Campsis grandiflora
- 英名:Chinese trumpet vine
- 科名/属名:ノウゼンカズラ科/ノウゼンカズラ属
- 原産地:中国
- 開花期:7月~8月(初夏〜盛夏)
- 花色:橙色、赤橙色、まれに黄色
- つる性植物:壁やフェンスなどに絡みつきながら成長する
ノウゼンカズラについて

特徴
- 鮮やかなトランペット型の花
花径5〜7cmほどのラッパ型の花を房状に咲かせ、非常に目立ちます。橙色の花は夏の青空に映え、南国的な雰囲気を持ちます。 - つるで高く伸びる性質
気根を出して壁や木に絡みつき、数メートルにもなる高さまで伸びます。放っておくと家の屋根にまで届くほど旺盛に育ちます。 - 落葉性の木本つる植物
冬になると葉を落としますが、春になると再び芽吹き、毎年元気に花を咲かせます。 - 日当たりと排水の良い場所を好む
日照が十分ある場所でこそ、その鮮やかな花色がより映え、花付きもよくなります。
花言葉:「夢ある人生」

ノウゼンカズラの花言葉にはいくつかありますが、その中でも「夢ある人生(a life full of dreams)」という言葉は、以下のような植物の性質と姿に由来していると考えられます。
◎ 高く空へと向かう成長姿勢
ノウゼンカズラは壁や支柱に絡みながら、まるで空に向かって夢を追うようにどこまでも伸びていきます。その姿が「未来への希望」「高みを目指す意志」を象徴しているのです。
◎ 鮮やかに咲き誇るラッパ型の花
ラッパは「喜び」や「希望の到来」を知らせる象徴でもあります。夏空の下で明るく咲くその姿は、「人生を前向きに楽しもう」というメッセージを感じさせます。
◎ つる性植物としてのしなやかさ
夢や目標に向かう中での柔軟さや粘り強さ、時には支えを得ながらも自分のペースで伸びていく様子が、「人生の旅路」に重ねられます。
「夢の途中で咲く花」

古い町並みに溶け込むように佇む一軒のカフェ。軒先のレンガ塀には、夏の陽を浴びながらノウゼンカズラが咲き誇っていた。ラッパのような橙の花々は、まるで空に向かって夢を告げるファンファーレのように見える。
そのカフェで、静かにコーヒーを淹れている女性がいた。名前は澪(みお)、三十二歳。グラフィックデザイナーとして東京で働いていたが、数ヶ月前にすべてを手放し、この小さな町へと戻ってきた。
「夢って、何だったんだろうね」

そうつぶやいたのは、古い友人の一樹(いつき)だった。高校時代からの付き合いで、今は町の工務店で働いている。久しぶりの再会に、ふたりはカフェのテラスに並んで座っていた。
「東京での生活、そんなに悪くなかったんだけどね。ただ、ある日ふと立ち止まっちゃって。『このままでいいの?』って。で、気づいたら、夢の続きじゃなくて、夢の形そのものを見失ってた」
風がそっとノウゼンカズラを揺らす。澪の視線が花に吸い寄せられるように向かう。

「この花、昔おばあちゃんが好きだったの。『夢が咲く花よ』って言ってた。意味なんて知らなかったけど、なんだか今なら少しわかる気がする」
「夢が咲く花か。いい言葉だな」
「うん。何かを目指して一生懸命伸びるのって、すごく眩しい。でも、途中で立ち止まることもあるじゃない? そんな時に、自分を責めるんじゃなくて、“いまはここで咲こう”って思えたらいいのかも」
一樹は少しだけ目を細めて言った。

「夢って、ゴールじゃなくて旅なんだろうな。ノウゼンカズラみたいに、支えを見つけながら、しなやかに伸びていく。高く、高く、でも風に揺れながら、自分のペースで」
テーブルの上に影が伸びる。午後の光が、カフェの壁を橙色に染めていた。
「ここで、また始めてみようかなと思ってるの。東京とは違うかもしれないけど、今の私にはこの場所がちょうどいい気がする」
「新しい夢、見つかるといいな」
「うん、夢ある人生――ってやつをね」
ふたりは微笑み合った。風がもう一度、ノウゼンカズラを揺らす。花々は空に向かって、今この瞬間の希望をそっと告げていた。