6月14日、11月26日の誕生花「グラジオラス」

「グラジオラス」

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グラジオラス(Gladiolus)は、美しくて力強い印象の花として知られ、夏から初秋にかけて庭や花壇、切り花として人気があります。

基本情報

  • 和名:トウショウブ(唐菖蒲)
  • 学名Gladiolus × hybridus
  • 科名/属名:アヤメ科/グラジオラス属
  • 原産地:南アフリカの原種をもとに育成
  • 開花時期:6月〜9月
  • 花色:赤、ピンク、白、黄、紫、オレンジなど多彩
  • 草丈:60〜150cm程度
  • 形状:球根植物(球茎)

グラジオラスについて

Stefan SchweihoferによるPixabayからの画像

特徴

  • 剣のような葉:「グラジオラス」という名は、ラテン語の「gladius(剣)」に由来しており、その名の通り細長くとがった葉が特徴的。
  • 花の並び方:茎の一方に沿って縦に並んで花が咲く「片側咲き」。華やかで豪華な印象を与える。
  • 生育が簡単:日当たりと水はけの良い場所で育てやすく、初心者にもおすすめの園芸植物。
  • 切り花として人気:花もちがよく、華やかさがあるため、フラワーアレンジメントや贈り物にもよく使われる。

花言葉:「熱愛」

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グラジオラスの花言葉にはいくつかありますが、「熱愛(passionate love)」は特に印象的な意味合いを持っています。

● 由来の背景:

  1. 真っ直ぐに咲く花姿
     グラジオラスは、まっすぐに空へ向かって伸び、力強く咲く姿が「一途な思い」や「情熱的な愛」を連想させます。
  2. 情熱的な花色
     赤やオレンジなど鮮烈な色合いの花が多く、「燃えるような恋」や「心の奥底から湧き上がる感情」と結びつけられてきました。
  3. ローマ時代の剣闘士との関係
     名前の語源「gladius(剣)」から、ローマ時代には勝利や栄光と結びつけられ、剣闘士の象徴でもありました。この「強さ」や「一心不乱な姿勢」が恋愛においても「燃え上がるような愛=熱愛」と解釈されるようになったと考えられています。

「グラジオラスの約束」

Stefan SchweihoferによるPixabayからの画像

夏の終わり、大学の構内にある小さな温室の前で、茜は立ち止まった。窓越しに見える赤い花が風に揺れ、どこか彼女を呼んでいるような気がした。

「……咲いてるんだ」

温室の奥に咲く赤いグラジオラス。茜がこの花を最後に見たのは、一年前の夏だった。

「あのときのまま、まっすぐに咲いてるのね」

一年前のあの日、彼――祐真(ゆうま)は突然こう言ったのだ。

「俺、来年はこの花をもっとたくさん咲かせるから、見に来てほしい」

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軽い冗談のように聞こえたけれど、彼の目は真剣だった。植物学専攻の祐真は、卒業研究でグラジオラスの育成に取り組んでいた。まっすぐに立ち上がる茎、燃えるような赤い花弁。それが彼の情熱そのもののように思えた。

でも、その約束は果たされることはなかった。

大学を出た直後、彼は交通事故に巻き込まれ、この世を去った。

あれから一年。茜は祐真との約束を胸に、この温室を訪れる決意をしたのだった。

扉を開けると、甘く淡い香りが立ち込める。奥の一角には、まるで彼の魂が宿っているかのように、無数のグラジオラスが咲いていた。赤、オレンジ、紫、白――まるで祐真の情熱が、色彩となって生きているようだった。

RalphによるPixabayからの画像

温室の壁には、手書きのメモが残されていた。

「グラジオラス:花言葉は『熱愛』。
まっすぐに伸びる姿は、揺るがぬ想いの象徴。
今年も、君に見せたい。」

茜の胸が熱くなった。なぜ、あのとき彼の気持ちにもっと寄り添ってあげられなかったのか。どうしてあの花の意味を、あのときもっと深く考えなかったのか。

けれど今、この花が全てを語っている。

RalphによるPixabayからの画像

祐真の想いは、花に託され、こうして時を超えて茜の心に届いた。

彼はもういない。でも、この温室には、彼の愛がまっすぐに根を張っている。

「ありがとう、祐真……あなたの熱い想い、ちゃんと届いたよ」

そっと茜は、グラジオラスの一輪に触れた。

――花言葉は「熱愛」。

それは、静かに燃え続けるような、一途でまっすぐな想い。
言葉にできなかった愛が、今、ようやく花として咲いたのだった。

5月31日、10月31日、11月26日の誕生花「カラー」

「カラー」

基本情報

  • 学名:Zantedeschia
  • 科名:サトイモ科
  • 属名:オランダカイウ属(ザンテデスキア属)
  • 原産地:南アフリカ
  • 開花時期:5~7月(品種によって異なる)
  • 種類:多年草(球根植物)

カラーについて

特徴

  • 花のように見える部分:実は花ではなく「苞(ほう)」と呼ばれる葉が変化したもの。中心にある黄色い棒状の部分が本来の花(花序)。
  • :ラッパ状や漏斗状で、滑らかで光沢のある質感。
  • :白が最も一般的だが、ピンク、紫、黄色、オレンジなど品種改良により多彩。
  • :矢じり形で濃緑、白い斑点が入ることもある。
  • 用途:切り花やブーケ、鉢植え、庭植えとして人気が高い。

花言葉:「乙女のしとやかさ」

カラーの花言葉には複数ありますが、その中のひとつが「乙女のしとやかさ」です。

この花言葉の由来は、以下のようなカラーの性質にちなんでいます:

  • 優雅で上品な姿:花(苞)はすっとしたラインで、落ち着いた雰囲気を持ち、華やかさの中に静けさを感じさせる。
  • 控えめな美しさ:派手ではないが凛とした佇まいが、しとやかな女性を思わせる。
  • 白いカラーが特に象徴的:純白のカラーは、無垢さや純真さの象徴ともされ、まさに「乙女らしさ」を体現している。

このように、カラーの気品あふれる姿が「しとやかで控えめな乙女の姿」と重ねられ、この花言葉が生まれたとされています。


「白い苞(ほう)の約束」

駅から少し離れた丘の上、小さな温室の中に、白いカラーが静かに咲いている。

花屋を営む綾子は、毎朝その温室を訪れては、そっと花たちに話しかける。中でも、このカラーには特別な思いを寄せていた。それは、十七歳の春に他界した姉・澪(みお)が、最後に遺した花だったからだ。

「この花、なんだか、すごく綺麗……でも、目立たないね」

病室の窓辺で、姉はそう言って微笑んだ。

「わたし、こんな風に静かに咲ける女の人になりたかったな」

まだ病のことも、未来のことも、語るには早すぎた年頃。けれど、澪の声には確かな覚悟がにじんでいた。綾子はそのとき、何も答えられなかった。ただ、姉の白い指が触れたその花を、記憶に焼きつけた。

それから十年以上が過ぎた。

綾子は花屋を継ぎ、店の一角にはいつも白いカラーが飾られている。お客様に花の意味を問われるたび、彼女は静かにこう答える。

「乙女のしとやかさ、という花言葉なんです。静かで、上品な女性の姿を映しているんですよ」

けれどそれは、綾子自身がなりたかった姿でもあった。

姉のように、凛として、誰かの心にそっと寄り添える人に。

ある日、店に一人の若い女性が現れた。年の頃は十七、八歳。制服姿のまま、緊張した面持ちでカウンターに立った。

「……あの、白いカラーを一本だけ、買えますか?」

綾子は微笑み、花を一本、丁寧に包んだ。

「どなたに贈るのですか?」

その問いに、少女は少し恥ずかしそうにうつむいた。

「……亡くなったお姉ちゃんに。明日が命日なんです。お姉ちゃん、しとやかで優しい人で……この花、似てる気がして」

その言葉に、綾子の胸が静かに震えた。

「きっと喜びますね。その花は、そういう人のために咲いているんです」

少女が帰った後、綾子は温室の中の白いカラーを見つめた。

控えめだけれど、すっと伸びる姿。純白の苞は、まるで大切な想いを包み込むかのようだった。

——いつか、誰かの心に残る花のように、わたしもなれるだろうか。

綾子はそっと、苞に触れた。そのぬくもりは、遠い記憶の中の姉の手のようだった。