「ケイトウ」

基本情報
- 学名:Celosia argentea
- 英名:Cockscomb(トサカの意味)、Woolflower など
- 分類:ヒユ科・ケイトウ属
- 原産地:インド・熱帯アジア
- 開花期:7月〜11月(夏から秋にかけて)
- 花色:赤、ピンク、黄色、オレンジ、白、緑など多彩
- 特徴的な形態:花序がニワトリのトサカに似る種類(トサカケイトウ)、羽毛のようにふわふわした種類(羽毛ケイトウ)、穂のように直立する種類(久留米ケイトウ)など、様々な形がある。
ケイトウについて

特徴
- 独特な花姿
- トサカ状や羽毛状など、他の花にはないユニークなフォルムを持つ。
- ベルベットのような質感を持つ花もあり、視覚的にも触覚的にも特徴的。
- 強い生命力
- 夏の暑さや乾燥にも強く、育てやすい一年草。
- 花もちが良く、切り花やドライフラワーにも重宝される。
- 日本との関わり
- 古くから日本で親しまれ、江戸時代には品種改良が盛んに行われた。
- 「久留米ケイトウ」など地域ブランドもある。
花言葉:「個性」

イトウに「個性」という花言葉が与えられたのは、その唯一無二の姿と深く関係しています。
- トサカや羽毛のような形
一般的な「花」のイメージから大きく外れ、動物や羽毛を連想させる奇抜な花姿。 - 多彩なバリエーション
色も形も多様で、同じケイトウでも印象が大きく異なる。 - 群を抜いて目立つ存在感
花壇の中でも強烈に視線を集める姿が「自分らしさを貫く」「他と違う魅力」と結びつけられた。
このように、他にない独創的な形状と色彩が「個性」という花言葉の背景になっています。
「花壇の片隅のケイトウ」

夏の午後、校舎裏の花壇はひときわ鮮やかだった。ひまわりやマリーゴールドが並ぶ中、ひときわ奇妙な形の花が混ざっている。赤紫のトサカのようにねじれた花弁、黄金色に羽毛のように広がる花穂。まるで他の花々とはまったく違う存在感で、群れの中に立っていた。
ケイトウ――「鶏頭」と呼ばれる花だ。
沙希はその花の前で足を止めた。
「やっぱり、ちょっと変だよね」
思わず口にすると、隣のクラスメイトの直人が笑った。
「変っていうか……すごい目立つよな。あいつだけ全然違うもんな」

沙希はうつむいた。彼女の胸の奥に、その言葉が妙に突き刺さる。自分もまた、教室の中で「違う」と言われる存在だったからだ。声が小さく、好きなものも他のみんなと噛み合わない。絵を描くことが何より好きなのに、部活動の勧誘で声をかけてくる運動部にはどうしても馴染めなかった。
「沙希って、変わってるよな」
笑いながら言われるその一言が、どれほど胸に重くのしかかっていたか。
けれど目の前のケイトウは、まるでそんな言葉を気にも留めないように、陽の光を浴びて誇らしげに咲いている。
「……どうしてだろう。変なのに、きれい」
沙希がつぶやくと、直人が首をかしげた。
「きれい? 普通の花の方がよっぽど整ってるじゃん」
「うん。でも、ケイトウは……他の花にはない形をしてるでしょ。だから目が離せないんだと思う」

自分でも不思議だった。これまで「変」と言われることを恐れ、目立たないように過ごしてきた。けれどケイトウを見ていると、変わっていることが「弱さ」ではなく「力」なのではないかと感じられてくる。
花壇の中で埋もれもせず、堂々と立ち、強烈な存在感を放っている。
「自分らしさを貫くって、こういうことなのかな……」
次の日、沙希はスケッチブックを持って花壇に向かった。クレヨンで描くケイトウの赤や黄は、他の花よりもずっと生き生きと画面に広がっていく。花の凹凸に沿って濃淡をつけると、ベルベットのような質感まで浮かび上がる。
夢中で描いていると、ふいに背後から声がした。

「うまいな、沙希」
振り向くと直人が覗き込んでいた。
「ケイトウって、やっぱり変だと思ってたけど……絵にするとカッコいいな」
彼の素直な言葉に、沙希の胸に温かいものが広がった。
その瞬間、彼女は気づいた。
変わっていることは、恥ずかしいことではない。
「個性」――ケイトウの花言葉に与えられたその言葉が、ようやく自分の中にしっくりと落ちてきたのだった。
秋風が吹く頃、花壇のケイトウはさらに色濃く燃え上がり、まるで「ここにいる」と誇らしげに主張していた。沙希もまた、スケッチブックを胸に抱えながら、小さな声でつぶやいた。
「私も、私のままで咲いていいんだ」