6月15日の誕生花「ムラサキツユクサ」

「ムラサキツユクサ」

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基本情報

  • 和名:ムラサキツユクサ(紫露草)
  • 学名:Tradescantia × andersoniana
  • 英名:Spiderwort(スパイダーワート)
  • 科名:ツユクサ科(Commelinaceae)
  • 属名:ムラサキツユクサ属(Tradescantia)
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:5月~7月(10月~11月)
  • 花の色:紫、青紫、青など
  • 草丈:30〜70cm程度

ムラサキツユクサについて

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特徴

  • 花の寿命が短い
    一つの花は朝に咲き、昼にはしぼんでしまうという特徴があります。ただし、株全体としては次々と花を咲かせ、数週間〜数ヶ月にわたって楽しめます。
  • 強健で育てやすい
    日向〜半日陰の場所でよく育ち、寒さにも比較的強いため、初心者にも育てやすい植物です。
  • 葉は細長く、やや光沢がある
    草丈の割に細長い葉を持ち、群生すると見ごたえがあります。
  • 染色体や細胞観察に使われる
    花粉母細胞の観察などに適しており、教育や研究用植物としても活用されます。

花言葉:「尊敬しているが恋愛ではない」

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ムラサキツユクサの花言葉の中で特に有名なのが:

「尊敬しているが恋愛ではない」(Respectful, but not romantic)

この少し複雑な花言葉には、以下のような背景が考えられています。

1. 一日花の儚さと非恋愛性

ムラサキツユクサの花は非常に儚く、一日でしぼんでしまうため、恋愛のような情熱的で長く続く感情というよりも、「一瞬の美しさ」や「静かな敬意」といった感覚が連想されやすいです。

2. 慎ましさと控えめな美

華やかさはあまりなく、控えめで落ち着いた色合いと佇まいを持つことから、「敬意を払う存在」にはなっても、「恋に落ちる対象」ではないという印象を与えることがあります。

3. 文化的解釈

一部の日本や西洋の花言葉には「非恋愛的な好意」や「精神的なつながり」を表現するものがあり、ムラサキツユクサもそうした精神性や冷静な感情を象徴しているとされています。


■ その他の花言葉

  • 貴ぶべき思い出
  • ひとときの幸せ
  • 恋ではない愛(spiritual love)

「紫の約束」

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梅雨の晴れ間、祖母の庭先に咲くムラサキツユクサが、朝の陽を受けて静かに揺れていた。薄紫の花びらは、今にも溶けてしまいそうなほど繊細で、一日限りの命を咲き誇るように見せていた。

高校最後の夏休み。私は東京の大学に進学することを決めていた。田舎のこの町を離れるのは少し寂しいけれど、未来に胸が躍ってもいた。

そんな朝、祖母の家の隣に住む和彦さんが、畑の帰りに声をかけてきた。

「今年も咲いたね、ムラサキツユクサ。すぐしぼんじゃうけど、朝だけの美しさってのもいいもんだよ。」

和彦さんは祖母より10歳ほど若く、昔は教師をしていた人だった。私は小学生の頃、よく彼に作文や読書感想文を見てもらっていた。話し方は柔らかくて、目が笑っていて、でもどこか距離を感じさせる人だった。

「和彦さん、花言葉って知ってます?」

「ん? ああ、“尊敬しているが恋愛ではない”、だっけ?」

「…ちょっと不思議ですよね。その言葉。」

彼は笑った。「不思議だけど、ある意味、一番人間らしい感情かもしれない。誰かを深く想うけど、それが恋とは限らない。敬意とか、憧れとか。そういうのも、ちゃんと愛の形だと思うよ。」

私は頷きながら、どこか胸が締めつけられるのを感じた。

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和彦さんは、私の憧れだった。恋とかではない。でも、彼の言葉にいつも救われて、背中を押されてきた。大人になった今でも、彼の考え方や生き方が、私にとって一つの指標になっていた。

「大学に行ったら、たくさんの出会いがあると思う。でも、誰かを“尊敬する”って気持ちは、案外長く残るもんだよ。」

そう言って彼は、庭のムラサキツユクサをそっと一輪摘み、私に手渡した。

「この花、咲いたその日にしぼむけど、根は強いから、また翌朝咲く。自分の中にある“静かな想い”も、そういうもんかもしれないね。」

私は花を受け取り、深く息を吸った。紫の花は、淡く香り立つようだった。

その年の夏、私は東京へ旅立った。

何年か後、祖母が亡くなり、久しぶりにこの町へ戻ったとき、和彦さんはすでに引っ越していた。家の前には、今もムラサキツユクサが咲いていた。あの朝のように、静かに、誇らしく。

私は花に手を伸ばし、小さな声で言った。

「今でも、あの言葉、覚えています。“尊敬しているが恋愛ではない”。たぶんそれは、ずっと私の中で咲き続けてる。」

花は何も答えなかったけれど、朝露に濡れたその紫が、優しく私の心を包んだ気がした。

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