あかりの日

10月21日はあかりの日です

10月21日はあかりの日

1981年に「日本電気協会」と「日本電球工業会」などが制定しています。そして、1879年のこの10月21日にアメリカの発明家「トーマス・エジソン」(1847~1931年)が世界で初めて実用的である白熱電球を完成させました。

トーマス・エジソン

トーマス・エジソン

エジソンは、生涯におよそ1,300の発明をしてたアメリカ合衆国の「発明王」の名をもち、「映画の父」とも言われています。そして、ゼネラル・エレクトリック (GE) の社長でもあります。最も有名なことで「電球を発明した」人物としていますが、電球のような家電を含め、発電から送電まで電気の事業化に成功したた功績のある方でもあります。

エジソンの主な発明

電球の発明

エジソンの三大発明で有名ものでは、まず始めに1877年に音を記録し再生する蓄音機(フォノグラフ)の発明に成功しています。そして次は、1880年で京都の竹フィラメントを用いて白熱電球の長寿命化に成功。さらに1889年には、動画撮影機キネトグラフを発明しています。

日本電気協会

日本電気協会

日本電気協会は、電気技術者に電力技術やそれに関連する法令等の正しい情報を提供、そして電気技術者同士の相互交流を図るともに技術のレベルアップを目指せるような環境を構築することを目指している団体です。

「日本電球工業会」と「日本照明器具工業会」が合併

蛍光灯電球

2013年4月1日に、日本電球工業会と日本照明器具工業会が合併を発表しています。それにより、新たに「日本照明工業会(JLMA)」を立ち上げました。元々、電球工業会に108社、照明器具工業会に93社が加盟していて、合併後は重複を除き、178社になります。そして、本部は東京都台東区に置くことになりました。

日本照明工業会(JLMA)

日本照明工業会

今まで「電球工業会」は主に『ランプや点灯装置』、「照明器具工業会」は主に『照明器具』を取り扱っていました。最近では、発光ダイオード(LED)照明の普及に伴い、ランプと器具一体型の照明が増加し、市場に沿った形に変え、安全基準の策定や海外規格の製品を含めた市場調査を迅速にできるようにしています。

電球の最先端である 発光ダイオード(LED)

LEDのイルミネーション

LEDは、明るさや光の色合いを自由に変えられるのが魅力で、その性能は年々高まっています。また現在では、さらにきめ細かいニーズに応えるような製品開発が行われています。

明るさ自由自在

明るさ変更可能なLED

肌が自然の明るさに近くなれば、メイクがしやすくなり、肌の状態や仕上がりが正確に把握できます。最終的には省電力であるため、所々にライトや照明が取り付けられ、最終的には昼も夜も区別がつかない世の中になるでしょうね。


「あかりの日 」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

5月17日、30日、10月20日の誕生花「エキザカム」

「エキザカム」

エキザカムは、主に温暖な地域で育つ多年草で、美しい花を咲かせることで知られています。花色は紫や青、白など多様で、観賞用として人気があります。耐寒性があり、庭や鉢植えで楽しむことができます。

基本情報

  • 科名/属名:リンドウ科 ベニヒメリンドウ属(エキザカム属)
  • 学名: Exacum affine(主に栽培されている種)
  • 和名:紅姫竜胆(べにひめりんどう)
  • 英名:Persian Violet(ペルシャン・バイオレット)
  • 原産地:インド洋ソコトラ島(エキザカム属は熱帯アジア、熱帯アフリカ)
  • 草丈・樹高:おおよそ20〜50 cm程度。
  • 開花時期:6月~10月あたり(日本の気候・栽培条件による)
  • 性質:本来は多年草ですが、寒さに弱いため日本では一年草扱いされることが多いです。

エキザカムについて

特徴

外観・花の様子

  • 花は直径1〜2 cmほどの小花が株いっぱいに咲き、青紫色が代表的ですが、白やピンクのものもあります。
  • 花びらが丸みを帯びており、中央部に黄色い雄ずい/雌ずい(花芯)があり、青紫の花弁とのコントラストが美しいです。
  • 葉はやや多肉質っぽく、ツヤがあり、株がこんもりとまとまるので、鉢植えやプランター、寄せ植えなどでも扱いやすい形状。

性質・育てやすさ

  • 日当たりがよく、風通しの良い場所を好みます。真夏の直射日光が強すぎる場合は半日陰にするなど工夫が必要です。
  • 寒さに弱く、10 ℃を下回ると生育が厳しくなるため、冬場は室内管理・保温が望ましいです。
  • 用土としては、市販の草花用培養土で十分で、水はけの良い環境が向いています。過湿にならないよう注意が必要。
  • 種まき・挿し木での増殖が可能。種まきの場合は発芽温度が高め(約25 ℃前後)なので、適期を守ることが大切です。

用途・魅力

  • 花が小さくて密に咲くため、鉢花や花壇の前景、プランターの寄せ植えなどに適しています。初心者でも取り組みやすい草花のひとつです。
  • 青紫の花色と黄色の花芯のコントラストが鮮やかで、清涼感・さわやかさを演出できます。
  • 品種改良も進んでおり、八重咲き品種や斑入り葉品種などバリエーションがあります。

花言葉:「あなたを愛します」

由来

花言葉

主な花言葉として以下が挙げられています:

  • 「あなたを愛します」
  • 「あなたの夢は美しい」

由来・背景

  • 「あなたを愛します」という花言葉の由来として、多くの記事で「愛を告白する少女のような可憐な花姿」からつけられたと説明されています。たとえば、株いっぱいに小花が咲き、その姿が「告白」「想い」「やさしさ」の象徴のように映るから、というものです。
  • また、属名「Exacum(エキザカム)」の由来として、ギリシア語の「ex(外へ)」と「ago(出す)」から「(毒などを)外へ出す」という意味があるとされ、この植物にかつて解毒作用があると考えられていたため、そう名付けられた、という説もあります。
  • つまり、「愛を告げるような可憐さ」と「名前に含まれる“外へ出す/清める”イメージ」が花言葉の雰囲気を支えているようです。

「青のひとひら」

六月の光はやわらかく、けれど少し眩しい。
 真帆はベランダの鉢植えを見つめていた。小さな青紫の花が、群れをなして咲いている。エキザカム。昨年の誕生日に、優人がくれた花だ。

 「あなたを愛します」――花言葉を、彼が照れくさそうに口にした日のことを思い出す。
 あのとき、彼の手は少し震えていた。
 「冗談みたいだけど、本気なんだ」と言って、笑った。

 彼は春に遠くの街へ引っ越した。
 「仕事が落ち着いたら、必ず迎えに行く」
 そんな言葉を残して。
 けれど季節が変わっても、手紙も、電話も少なくなっていった。

 エキザカムの花期は長い。夏の間じゅう、青い小花を絶やさずに咲かせる。
 それでも、冬の寒さには弱い。
 真帆は去年の冬、必死に部屋の中で育てた。霜に当たらぬよう、温かい毛布を鉢にかけ、窓辺に置いた。
 ――春になったら、また咲くからね。
 そう語りかけるように。

 けれど、今年の春。花は咲かなかった。
 枯れてしまったわけではない。けれど、青も白も、どんな蕾もつけない。

 「もう、終わっちゃったのかな」
 真帆は小さく呟いた。

 その夜、久しぶりにメールが届いた。差出人は優人だった。
 “ごめん、連絡できなくて。こっちで新しい仕事が始まって、気持ちの整理がつかなくて”
 “エキザカム、まだ咲いてる?”

 画面を見つめながら、胸の奥が締めつけられる。
 「咲いてないよ。でも、まだ枯れてない」
 返信を打ちかけて、手を止めた。

 ベランダに出て、花の鉢を見つめる。
 月の光の下で、葉の表面がほんのり光っている。
 その姿が、まるで息をひそめて何かを待っているようだった。

 エキザカムの学名――Exacum affine。
 その属名には「ex(外へ)」と「ago(出す)」の意味があるという。
 毒や悪いものを外に出す。
 つまり、癒やす植物。清める花。

 「外へ出す」――それはきっと、心も同じだ。
 言えなかった想い、届かなかった言葉。
 それを、外に出すことができたなら。

 翌朝、真帆は花の根元をほぐして、新しい土を足した。
 そして、そっと指先で葉を撫でた。
 「大丈夫。また咲けるよ」

 数週間後、鉢の真ん中に小さな蕾がついた。
 青紫の花弁が少しずつ開いていく。
 その中心には、金色の花芯が輝いていた。

 真帆は携帯を手に取り、優人に写真を送った。
 “咲いたよ。あなたを愛します、って。あの時の花が”

 返信はなかった。けれど、不思議と涙は出なかった。
 風が吹き、花が揺れる。
 その一輪は、まるで告白をする少女のように、小さく、まっすぐに咲いていた。

 真帆は微笑み、そっと呟いた。
 「ありがとう。もう大丈夫だよ」

 青い花びらが陽を受けて、淡く光った。
 その輝きは、まるで愛の言葉を外へ放つように――
 静かに、空へと溶けていった。

8月3日、9月13日、10月20日の誕生花「ブッドレア」

「ブッドレア」

ブッドレアは、夏から秋にかけて円すい状に小さな花をたくさん咲かせる落葉低木です。甘い香りに誘われてチョウやミツバチが多く集まることから、「バタフライブッシュ(蝶の木)」とも呼ばれています。花色は紫、白、ピンクなどがあり、丈夫で育てやすいのが魅力です。花言葉は「魅力」「あなたを慕う」「恋の予感」などで、華やかな花姿が庭や公園を美しく彩ります。

基本情報

  • 和名:ブッドレア(フサフジウツギ)
  • 学名:Buddleja davidii
  • 科名:ゴマノハグサ科(※APG分類ではフジウツギ科)
  • 原産地:中国~チベット原産
  • 開花期:7月~9月頃
  • 花色:紫・ピンク・白・黄色など
  • 別名:バタフライブッシュ(Butterfly bush)
     → 強い香りと蜜で蝶を多く引き寄せるため。

ブッドレアについて

特徴

  • 花穂:小さな花が円錐状に集まり、20cm前後の房になって咲く。
  • 香り:甘く強い芳香を放ち、蝶や蜂を誘う。特にアゲハチョウなど大きな蝶が好む。
  • 樹形:低木~中木で、剪定に強く、庭木や生け垣にも利用される。
  • 繁殖力:丈夫で育てやすく、世界各地で観賞用に広まった。

花言葉:「恋の予感」

由来

ブッドレアに「恋の予感」という花言葉が与えられた背景には、次のようなイメージが関わっています。

  1. 蝶を呼ぶ花
    • ブッドレアの甘い香りと蜜は、遠くからでも蝶を惹きつける。
    • 「蝶=恋の訪れやロマンの象徴」とされる文化的な連想から、「恋の予感」という花言葉につながった。
  2. 長く伸びる花房
    • 先へ先へと伸びるように咲く花穂は、「これから始まる新しい出来事」や「未来への期待」を思わせる。
    • そこに「まだ始まっていない恋の兆し」のイメージが重なる。
  3. 甘い香りと華やかな姿
    • 見る者を引き寄せるような芳香と色彩が、「心を惹かれる瞬間=恋の予感」を象徴すると考えられた。

「恋の予感、ブッドレアの庭で」

その庭は、夏の午後になると甘い香りで満ちあふれる。濃い紫や淡いピンクの房状の花が風に揺れ、蝶たちが次々と舞い降りてくる。まるで誰かが秘密の手紙を撒いているかのように、ブッドレアは無数の羽音を呼び寄せていた。

 陽菜(ひな)は、その庭の隅に腰を下ろし、ノートを広げていた。大学の卒論の題材に「植物と人の感情の関係」を選んだのは、きっと自分でも気づかない心の欲求だったのだろう。最近、彼女は心の中で小さなざわめきを抱えていた。それはまだ「恋」と呼ぶには幼く、でも確かに胸を騒がせる気配だった。

 ノートには、こんな言葉が走り書きされている。
 「ブッドレア――蝶を呼ぶ花。蝶=恋やロマンの象徴。花言葉は『恋の予感』。」

 ペンを止めたとき、視界の端に蝶がひらりと舞った。淡い黄色のアゲハチョウだ。陽菜は思わず手を伸ばすが、その羽はするりと逃げるように花へ吸い寄せられていく。まるで「追いかけてごらん」と誘っているように見えて、胸がくすぐったくなった。

 そのとき、庭の門が開く音がした。顔を上げると、幼なじみの悠人(ゆうと)が立っていた。背に背負ったカメラが陽を受けてきらりと光る。

「やっぱりここにいたか」
「悠人……どうして?」
「夏の蝶を撮りたくて。ブッドレアが咲いたって聞いたから」

 彼はためらいなく庭に入り、ファインダーを覗き込みながらシャッターを切った。その真剣な横顔を見ていると、胸の奥にさざ波のような熱が広がる。

「ほら、見てみろよ」
 悠人が液晶画面を差し出す。そこには紫のブッドレアに止まる蝶と、その背後でノートを抱えた自分の姿が写っていた。

「……私まで映ってる」
「いいだろ。蝶と花と、君。全部そろって“予感”の絵になる」

 その言葉に、陽菜の心臓が跳ねた。なぜ彼が花言葉のことを知っているのか、考える余裕もなかった。ただ耳に残った「予感」という響きが、胸の奥を甘く震わせた。

 風が吹き、房の花々が揺れる。蝶が群れをなして舞い上がり、空へ溶けていった。陽菜は思った。――このざわめきは、ブッドレアの香りがもたらした一時の幻ではない。きっと新しい物語の始まりなのだ。

 悠人がレンズを下ろし、静かに言った。
「この庭で、来年もまた一緒に写真を撮ろうな」

 その約束は、まだ恋とは呼べない。けれど確かに「予感」として陽菜の胸に刻まれた。紫の花が揺れ、甘い香りが二人を包み込む。まるでブッドレア自身が祝福しているように。

 ――恋の予感は、いつだって蝶の羽音とともにやってくる。

8月31日、9月16日、10月20日の誕生花「リンドウ」

「リンドウ」

HansによるPixabayからの画像

リンドウは、秋の野山を彩る青紫色の美しい花です。釣鐘形の花を上向きに咲かせ、古くから日本人に親しまれてきました。漢方では根が薬用として利用されます。花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」「誠実」などです。

基本情報

  • 分類:リンドウ科リンドウ属(多年草)
  • 学名:Gentiana scabra var. buergeri
  • 原産地:日本(本州、四国、九州)、中国、朝鮮半島などアジア東部
  • 開花期:9月下旬~10月中旬
  • 花色:主に青紫、他に白やピンクもある
  • 草丈:20〜80cmほど
  • 利用:観賞用のほか、根は生薬「竜胆(りゅうたん)」として健胃・解熱・消炎に用いられてきた

リンドウについて

TheUjulalaによるPixabayからの画像

特徴

  1. 深い青紫色の花
    リンドウといえば鮮やかな青紫の花色が特徴的。秋の澄んだ空を映したような色合いで、日本では古くから愛されてきました。
  2. つぼみのように見える花
    花は釣鐘型で、完全に開ききらず筒状のまま咲くため、少し控えめで奥ゆかしい印象を与えます。
  3. 薬草としての歴史
    根は強い苦味をもち、生薬「竜胆」として古くから使われてきました。この「胆が裂けるほど苦い」という意味から「竜胆」という漢字が当てられています。
  4. 秋の代表花
    菊やコスモスと並び、お彼岸や敬老の日の贈り花としても親しまれています。

花言葉:「悲しんでいるあなたを愛する」

Sr. M. JuttaによるPixabayからの画像

由来

リンドウの花言葉にはいくつかありますが、その中でも「悲しんでいるあなたを愛する」は特に印象的です。

その背景には以下のような理由があります。

  1. 花がうつむいて咲く姿
    リンドウの花は横向き〜やや下向きに咲きます。その姿が「悲しみに沈む人」のように見えることから、寄り添うような愛情の花言葉が生まれました。
  2. 秋に咲く花であること
    秋は別れや寂しさを象徴する季節とされます。そんな季節に咲くリンドウは、哀愁の中に寄り添う存在として受け取られました。
  3. 色合いの象徴性
    青紫色は「憂い」「深い思慕」を連想させる色であり、落ち着いた花色が「悲しみを包み込む愛」を表現するものとされました。

「悲しみを包む青」

Thomas FerstlによるPixabayからの画像

彼女の家の庭の片隅には、毎年秋になるとリンドウが咲いた。
 小さく、うつむきながらも澄んだ青紫を放つその花は、派手さこそないが、ひときわ目を引く存在だった。

 ──「悲しんでいるあなたを愛する」。
 母が生前よく口にしていたリンドウの花言葉が、ふと胸をよぎる。

 母を見送ってから、初めて迎える秋。家の中には母の声も、あたたかな足音もなく、ただ時計の針が規則正しく音を刻むだけだった。

 朝起きても食卓は静まり返り、夜になっても帰りを待つ人はいない。季節が巡っていくたびに、自分ひとりだけが置き去りにされたようで、心の奥が冷えていくのを感じていた。

 そんなある日、庭をふと見やると、あのリンドウが花をつけていた。
 深い青紫の花弁が、澄んだ空気にしんと溶け込むように咲き誇っている。けれどもその花は、まっすぐ空を仰ぐのではなく、ほんの少しうつむいて咲いていた。

 まるで自分と同じように、悲しみを抱えながら立っているように見えて、胸が詰まった。

 しゃがみ込んで花を覗き込むと、記憶の奥から母の声が蘇る。
 「人はね、悲しいときに無理に笑わなくてもいいんだよ。悲しみを知っている人だからこそ、人を思いやれるんだと思うの」

 リンドウの花言葉を教えてくれたのも、そのときだった。母は、少し寂しそうに笑いながらも、どこか誇らしげに花を見ていた。

 「悲しんでいるあなたを愛する」
 ──あのときは難しく感じた言葉の意味が、今になってようやく少しだけ分かる気がした。

 母はきっと、自分が悲しんでいることを責めたりはしない。むしろ、その悲しみごと抱きしめてくれる。
 だから、この花は母の心そのものなのかもしれない。

 ひんやりとした秋風が頬を撫でる。見上げれば、澄み渡る空の青が広がり、その足元でリンドウが静かに揺れていた。
 哀しみに沈む心を、決して否定せず、ただそっと支えてくれる存在。
 母の愛情が、そこに確かに息づいているようだった。

 私は思わず花に向かってつぶやいた。
 「……ありがとう」

 声は誰に届くわけでもない。それでも、リンドウの青がわずかに深みを増したように見えた。
 その花の傍らで、私は初めて心の底から泣くことができた。

 悲しみを包み込むように咲く青紫のリンドウ。
 その花は、失われた母の代わりに、静かに私を抱きしめてくれているようだった。

リサイクルの日

10月20日はリサイクルの日です

10月20日はリサイクルの日

1990年、「日本リサイクルネットワーク会議」と「地域交流センター」が制定しています。この日は、「ひとまわり→10、ふたまわり→20」の読む語呂合わせからです。

日本リサイクルネットワーク会議

リサイクルネットワーク

日本リサイクルネットワーク会議は、日本の環境関連の団体です。リサイクル活動関連団体のネットワークを構築、そして啓蒙活動などを行っています。東京都港区に事務局があり、1990年に設立されました。

主なリサイクル活動

リサイクル活動

現在行っている主なリサイクル活動を簡単にいくつかを紹介します。

3Rでゴミを削減

リユースボックス

3Rとは、「 Reduce」(リデュース)、「Reuse」(リユース)、「Recycle」(リサイクル)といわれている3つの頭文字をとったRの総称で、意味はそれぞれ次の通りです。

1. リデュース(reduce)

ゴミになるものをできるだけ持ち込まない

2.リユース (reuse)

できるだけ何度も使う

3. リサイクル(recycle)

使えなくなったものは捨てずに再原料化や熱化して再生利用する

イオンは再資源化するため回収ボックスを設置

リサイクル回収ボックス

イオンの店舗は、貴重な資源を捨てずに再資源化するために、紙パック、食品トレー、アルミ缶、ペットボトルの回収ボックスを設置しています。そして、回収後の再利用可能な資源は「トップバリュ」商品の一部に原料として使用するなど、再商品化を行っています。また、惣菜コーナーなどで使用された油を回収し、せっけんや飼料、肥料などに変えて再利用されています。

リサイクル回収してバイオエタノールに

バイオエタノールの長所と短所

「SELF+SERVICE」は、2002年に繊維のリサイクルに配慮した「エコメイトマーク」商品の販売を始め、2003年から自主回収をスタートしています。さらに2007年からは、販売した衣料品の全品回収を始めて2010年から、BRING(FUKUFUKUプロジェクト)に参加し、回収した衣料品をバイオエタノールや再生ポリエステルへ変えるリサイクル活動にも参加しています。

修理や補修で再利用

修理しておしゃれに

現在の電化製品等は、修理して使うことは難しいですが、クリーニングや手入れを欠かさなければ長持ちして、捨てるゴミ量が減ります。また衣服などは、補修して他の用途へ変えるという再利用方法もあります。全ての人が意識するだけでもゴミが大幅減少するのではないでしょうか!


「リサイクルの日」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

10月19日の誕生花「ハナキリン」

「ハナキリン」

ハナキリンは、マダガスカル原産のトウダイグサ科の多肉植物です。トゲのある茎と鮮やかな花が特徴で、乾燥に強く、長い期間花を楽しめます。花言葉は「逆境に耐える」です。

基本情報

  • 学名: Euphorbia milii
  • 科名: トウダイグサ科
  • 属名: トウダイグサ属
  • 原産地: マダガスカル
  • 開花時期: 5月~11月(環境によっては一年中)
  • 花色: 赤、ピンク、白、黄色など
  • 草丈: 30〜200cmほど(品種や栽培環境による)
  • 分類: 多肉植物・常緑低木
  • 花言葉: 「逆境に耐える」「忍耐」「独立」

ハナキリンについて

特徴

  • 茎には鋭いトゲがあり、乾燥した環境にも適応している。
  • 多肉質の茎に水分を蓄えるため、乾燥に強い。
  • 花びらのように見える部分は、実際には色づいた苞(ほう)である。
  • 小さな花を長い期間咲かせ、鮮やかな色彩を楽しめる。
  • 日当たりのよい場所を好み、比較的育てやすい。
  • 茎や葉を傷つけると白い乳液が出る。皮膚や目に触れると刺激になるため、取り扱いには注意が必要。


花言葉:「逆境に耐える」

由来

  • 鋭いトゲを持ちながら、美しい花を咲かせる姿が、困難に立ち向かう強さを連想させる。
  • 乾燥した厳しい環境にも耐える性質が、苦しい状況を乗り越える忍耐力を思わせる。
  • 茎に水分を蓄え、厳しい環境でも生き抜く姿が、生命力やたくましさの象徴と考えられている。
  • トゲに守られながら花を咲かせる姿が、逆境の中でも自分らしさや美しさを失わない強さを表しているとされる。


「トゲの向こうに咲く花」

 海から吹きつける風が、町の古い商店街を通り抜けていった。

 夏の終わりだというのに、空には雨の気配がなかった。道路脇の街路樹は葉を丸め、花壇の土には細かなひびが走っている。何日も続く日照りのせいで、町の景色はどこか色あせて見えた。

 そんな商店街のはずれに、小さな花屋があった。

 店の名前は「花守」。

 白い壁には蔦が這い、木製の扉には小さなベルが吊るされている。店先には季節の花が並び、窓辺には多肉植物や観葉植物が飾られていた。

 その窓辺に、一鉢のハナキリンが置かれていた。

 太い茎には鋭いトゲが並び、その先には赤みを帯びた花がいくつも咲いている。葉は少なく、華やかな花を咲かせる植物にしては、どこか近寄りがたい姿をしていた。

 けれど、その花は厳しい日差しにも負けず、静かに咲き続けていた。

 花屋の店主である佐和子は、毎朝その鉢を眺めるのが日課だった。

 六十五歳になる佐和子は、三十年以上この店を営んできた。花の名前や育て方だけでなく、花にまつわる物語や花言葉にも詳しかった。

 彼女にとって、花はただ美しいだけの存在ではない。

 悲しみを抱える人の心を慰めたり、新しい一歩を踏み出す人の背中を押したり、ときには言葉にできない想いを代わりに伝えてくれたりするものだった。

 だからこそ、佐和子はどんなに小さな花にも、それぞれの生き方があると考えていた。

 ある日の午後、店の扉が勢いよく開いた。

「おばあちゃん、ただいま」

 入ってきたのは、孫の美月だった。

 二十三歳になる美月は、東京のデザイン会社で働いていた。子どものころから絵を描くことが好きで、大学でもデザインを学んだ。卒業後は念願だった会社に就職し、いつか自分の作品を世の中に残したいと夢見ていた。

 しかし、今日の美月の顔には笑顔がなかった。

 いつもなら店に入るなり、飾られた花を見ては楽しそうに話し始めるのに、今日は肩を落とし、手にした鞄を床に置いたまま動こうとしなかった。

「どうしたの、そんな顔をして」

 佐和子が尋ねると、美月はしばらく黙っていた。

 やがて、絞り出すような声で答えた。

「会社、辞めようと思う」

 佐和子は驚いたが、すぐには何も言わなかった。

 美月はソファに腰を下ろし、膝の上で両手を握りしめた。

「私、全然駄目だった。頑張っても、頑張っても、認めてもらえないの。先輩に何度も修正されて、自分が考えたものはほとんど採用されなくて……。この前なんか、みんなの前で、自分の考えが甘いって言われた」

 声が震えた。

「最初は、もっと努力すればいいと思っていたの。でも、最近は何を作っても自信がなくなってしまって。自分には才能がないんじゃないかって思うようになった。もう、何を目指していたのかさえ、わからなくなっちゃった」

 美月は顔を覆った。

「好きだったことまで、嫌いになりそうなの」

 店内には、壁掛け時計の針が動く音だけが響いていた。

 佐和子は孫の隣に腰を下ろし、そっと背中を撫でた。

「つらかったね」

 たったそれだけの言葉だった。

 けれど、美月の目からは、堰を切ったように涙がこぼれた。

 誰かに励ましてほしかったのかもしれない。

 もっと頑張れば大丈夫だと言ってほしかったのかもしれない。

 それでも、本当に欲しかったのは、自分の苦しさをそのまま受け止めてくれる言葉だった。

 しばらくして、美月の涙が落ち着くと、佐和子は窓辺に目を向けた。

「美月、あの花を知っている?」

 美月は顔を上げた。

 佐和子が指さしたのは、トゲのあるハナキリンだった。

「ハナキリンでしょう? 前にも教えてくれたよね」

「そう。あの花の花言葉は何だったか、覚えている?」

「確か……『逆境に耐える』だったと思う」

 佐和子はうなずいた。

「よく覚えていたね」

 美月は、ハナキリンを眺めた。

 細い枝に鋭いトゲが並んでいる。触れれば痛そうで、花を楽しむために近づくにも、少し注意が必要だった。

「どうして、そんな花言葉がついたの?」

「いくつか理由が考えられているんだよ。鋭いトゲを持ちながら美しい花を咲かせる姿や、乾燥した厳しい環境にも耐える性質から、困難に負けない強さを感じるんだろうね」

 佐和子は立ち上がり、鉢を窓辺から少しだけ手前に移した。

「この花は、茎に水分を蓄えることができるんだ。雨が少ないときにも、その力を使って生きていく。もちろん、どんな環境でも何もしなくていいわけじゃない。水も必要だし、世話をしてあげなくちゃいけない。でも、厳しい環境の中でも、できることをしながら生き抜いていくんだよ」

 美月は黙って耳を傾けていた。

「それに、このトゲを見てごらん」

 佐和子は花を傷つけないように、少し離れたところから茎を示した。

「トゲは、この花の特徴のひとつだね。近づくものを簡単には寄せつけない。でも、トゲがあるからといって、花が咲かないわけじゃない。ちゃんと自分の花を咲かせているだろう?」

「うん……」

「人間も同じだと思うんだよ」

 佐和子の声は穏やかだった。

「つらい経験をすると、人は傷つかないように自分を守ろうとする。誰かに心を開くのが怖くなったり、失敗するくらいなら何もしないほうがいいと思ったりする。それは、弱いからじゃない。もう傷つきたくないという、自分を守るための気持ちなんだよ」

 美月は、自分の手を見つめた。

 会社で失敗して以来、彼女は人に作品を見せることさえ怖くなっていた。

 誰かに批評される前に、自分で自分の作品を否定するようになった。

 挑戦しなければ、失敗することもない。

 期待しなければ、失望することもない。

 そうやって心を守っているつもりだった。

 けれど、そのたびに、自分の好きだったものまで遠ざかっていくような気がしていた。

「でもね、美月」

 佐和子は続けた。

「自分を守ることと、自分の可能性を閉じ込めてしまうことは、少し違うんじゃないかな」

 美月は祖母を見た。

「今すぐ立ち直らなくてもいい。無理に笑わなくてもいいし、会社を続けるか辞めるかだって、ゆっくり考えればいいんだよ。ただ、つらかった経験だけで、自分には何もできないと決めてしまわないでほしいんだ」

「でも、私は本当に駄目なのかもしれない」

「そう思うくらい、傷ついたんだね」

 佐和子は静かに答えた。

「だけど、ひとつうまくいかなかったからといって、これまで積み重ねてきたものまで消えてしまうわけじゃない。誰かに認められなかった作品にも、あなたが考えた時間や、工夫した跡が残っている。それは、決して無駄にはならないんだよ」

 美月は、もう一度ハナキリンを見つめた。

 トゲの向こうに、赤い花が咲いている。

 華やかな花壇に並ぶ花のように、誰もが近づいてくるわけではないだろう。それでも、ハナキリンは自分の姿を変えず、花を咲かせていた。

 誰かに褒められるためでもない。

 誰かと比べて勝つためでもない。

 ただ、自分の命を育みながら、そこに咲いているのだ。

 その姿が、美月には不思議なほどまぶしく見えた。

 その夜、美月は久しぶりにスケッチブックを開いた。

 何かを描こうと思ったわけではなかった。ただ、机の引き出しにしまい込んでいた鉛筆を手に取り、白い紙を眺めてみたかったのだ。

 しばらくして、彼女はハナキリンを描き始めた。

 鋭いトゲ。

 太い茎。

 小さな葉。

 そして、枝の先に咲く赤い花。

 最初は線が思うように引けなかった。何度も消しゴムを使い、描き直した。以前なら、少しでも気に入らない部分があると、紙を丸めて捨てていたかもしれない。

 けれど、その日は違った。

 線が歪んでも、消して描き直せばいい。

 うまくいかなければ、別の方法を試せばいい。

 そう思いながら、少しずつ鉛筆を動かした。

 気づけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。

 美月はスケッチブックを閉じず、描き上がった絵を眺めた。

 決して完璧な絵ではなかった。

 それでも、赤い花は、トゲに囲まれながら確かに咲いていた。

 美月は小さく息を吐いた。

「……悪くないかもしれない」

 その言葉を口にしたとき、胸の奥にわずかな温かさが生まれた。

 翌朝、美月はいつもより早く目を覚ました。

 朝食を終えると、机に向かい、昨日の絵に色をつけた。

 茎は深い緑色に。

 トゲは少し暗い影をつけて。

 花には、燃えるような赤を重ねた。

 絵が完成すると、美月はスマートフォンで写真を撮り、自分の作品を保存している小さなオンラインページに投稿した。

 誰かに見てもらうためというより、自分が描いたものを、自分の手で否定せずに残しておきたかったのだ。

 投稿したあとも、すぐに反応があるわけではなかった。

 それでも、美月は以前ほど不安を感じなかった。

 描いたこと。

 完成させたこと。

 そして、人の目に触れる場所に置いたこと。

 そのひとつひとつが、彼女にとって小さな前進だった。

 数日後、思いがけない連絡が届いた。

 以前、大学の卒業制作を見てくれた講師からだった。

『久しぶりに作品を見ました。花のトゲと、花そのものの美しさを同じ画面に描いたところが印象的ですね。もしよければ、今度の小さな展示企画に参加してみませんか』

 美月は、画面を何度も読み返した。

 展示企画。

 自分の作品を、誰かに見てもらえる機会。

 以前なら、すぐに飛びついていたかもしれない。けれど、今の美月には、期待と同じくらい不安もあった。

 また批判されたらどうしよう。

 誰にも気に入ってもらえなかったらどうしよう。

 指先が冷たくなり、返事を打つ手が止まった。

 そのとき、彼女は机の端に置いたスケッチブックに目を向けた。

 描き直した線。

 塗り重ねた赤。

 何度も迷いながら、それでも完成させた一枚の絵。

 美月は、ゆっくりと深呼吸した。

 怖いのは、まだ変わらない。

 でも、怖いからといって、必ず諦めなければならないわけではない。

 美月は、丁寧に返事を打った。

『お声がけありがとうございます。ぜひ参加させてください。まだ自信はありませんが、挑戦してみたいです』

 送信ボタンを押すと、心臓が大きく鳴った。

 不安が消えたわけではなかった。

 それでも、自分の意思で一歩を踏み出したという感覚があった。

 それから美月は、少しずつ絵を描く時間を増やしていった。

 仕事を辞めるかどうかは、すぐには決めなかった。会社での経験についても、信頼できる人に相談し、今の働き方を見直すことにした。

 無理をしてすべてを抱え込むのではなく、自分に必要な休息や助けを求めることも覚えていった。

 うまくいかない日もあった。

 展示に向けた作品が思うように仕上がらず、何度も描き直すこともあった。

 他の参加者の作品を見て、自分の未熟さに落ち込むこともあった。

 けれど、以前と違うことがひとつあった。

 美月は、失敗した自分を、すぐに見捨てなくなったのだ。

 うまくいかないなら、休んでみる。

 わからないなら、誰かに相談してみる。

 どうしても描けない日は、花を眺めるだけでもいい。

 そうやって自分を支えながら、彼女は一歩ずつ進んでいった。

 やがて、展示会の日が訪れた。

 小さなギャラリーの白い壁には、さまざまな作品が並んでいた。

 美月の絵は、その一角に飾られていた。

 タイトルは「トゲの向こうに咲く花」。

 赤いハナキリンが、深い緑の茎から花を広げている。鋭いトゲは隠さずに描かれていたが、その向こうに咲く花は、力強く、それでいて優しい色をしていた。

 展示が始まってしばらくすると、ひとりの女性が美月の絵の前で足を止めた。

 女性は長い時間、作品を眺めていた。

 やがて、近くにいた美月に声をかけた。

「この花、ハナキリンですよね?」

「はい、そうです」

「実は私、今、仕事で悩んでいて……。何をしてもうまくいかない気がして、自分には何もできないんじゃないかと思っていたんです」

 女性は、少し恥ずかしそうに笑った。

「でも、この絵を見ていたら、トゲがあっても花は咲くんだなって思えて。なんだか、もう少し頑張ってみようと思いました」

 美月は、すぐに言葉を返せなかった。

 自分が苦しみながら描いた花が、知らない誰かの心に届いていた。

 その事実が、胸に深く染み込んでいった。

「ありがとうございます」

 美月は、ようやくそう答えた。

「私も、この花に励まされたんです」

 女性が立ち去ったあと、美月は自分の絵を見上げた。

 ハナキリンの花は、何も語らない。

 困難に負けるなと叫ぶことも、必ず成功すると約束することもない。

 ただ、トゲのある茎から花を咲かせている。

 その姿を見て、人はそれぞれの想いを重ねるのだろう。

 傷ついた経験があるからこそ、人の痛みに気づけることがある。

 苦しい時期を過ごしたからこそ、誰かの小さな勇気を大切に思えることがある。

 美月は、ようやくわかった気がした。

 逆境に耐えるというのは、どんなに傷ついても平気な顔をすることではない。

 何も感じず、ただ我慢し続けることでもない。

 傷ついた自分を認め、必要なら立ち止まり、それでも自分の大切なものを手放さずにいようとすること。

 時には誰かに助けてもらいながら、もう一度、自分の力で立ち上がろうとすること。

 それこそが、本当の強さなのかもしれない。

 展示会を終えた週末、美月は祖母の花屋を訪れた。

 店先のハナキリンには、新しい花が咲いていた。

「おばあちゃん、展示会、無事に終わったよ」

「そうかい。それはよかったね」

「私の絵を見て、頑張ろうと思えたって言ってくれた人がいたの」

 佐和子は、目を細めて笑った。

「それは、うれしいことだね」

「うん。私、ずっと自分が認められることばかり考えていたんだと思う。でも、自分が好きで描いたものが、誰かの力になることもあるんだね」

 美月は、ハナキリンの花を見つめた。

「まだ、仕事のことは迷っているよ。これからも失敗すると思うし、怖くなることもあると思う」

「そうだろうね」

「でも、もう少し、自分のことを信じてみようと思う」

 佐和子は、うれしそうにうなずいた。

「それでいいんだよ」

 美月は、花に触れないよう気をつけながら、そっと鉢の周りを見た。

 鋭いトゲの間から、赤い花が顔をのぞかせている。

 その姿は、以前と何も変わっていないように見えた。

 けれど、美月には、もう違う花に見えた。

 トゲは、ただ人を遠ざけるためにあるのではない。

 乾いた大地に耐える茎は、ただ苦しみに耐え続けるためにあるのではない。

 それぞれの特徴を抱えながら、花は自分の命をつないでいく。

 厳しい環境にあっても、できることを続ける。

 傷つくことを恐れながらも、自分の花を咲かせる。

 その姿には、誰かと比べる必要のない、静かな強さが宿っていた。

 美月は、店の奥からスケッチブックを取り出した。

 そして、新しいページを開くと、もう一度ハナキリンを描き始めた。

 今度は、花だけではなく、鉢の土や窓から差し込む光も描いた。

 トゲの影。

 茎に宿る生命力。

 花びらのように色づいた苞の鮮やかさ。

 すべてを一枚の紙に残したかった。

 描き終えた美月は、鉛筆を置き、ゆっくりと微笑んだ。

 未来がどうなるかは、まだわからない。

 努力が必ず報われるという保証もない。

 それでも、今日の自分にできることを、ひとつずつ続けていこう。

 美月はそう心に決めた。

 窓の外では、午後の陽射しが静かに降り注いでいた。

 ハナキリンの赤い花は、その光を受けて鮮やかに輝いている。

 鋭いトゲに囲まれながらも、花は美しく咲いていた。

 誰かに守られているからではない。

 何の苦労もないからでもない。

 厳しい環境に耐えながら、自分の中に蓄えた力を使い、花を咲かせているのだ。

 その姿は、美月にひとつのことを教えてくれた。

 逆境の中にいるとき、人は自分の弱さばかりを見つめてしまう。

 けれど、弱さがあることと、強さがないことは同じではない。

 立ち止まることも、誰かに助けを求めることも、失敗を認めることも、決して恥ずかしいことではない。

 傷つきながらも、自分を大切にし、もう一度歩き出そうとする心。

 その心こそが、どんな逆境にも負けずに咲く花を育てていくのだろう。

 ハナキリンの花言葉は、「逆境に耐える」。

 その言葉は、苦しみに耐え続けなさいという命令ではない。

 どんなにつらい日々の中にも、自分を失わずに生きる力があることを、そっと伝えてくれる言葉なのかもしれない。

 美月はスケッチブックを閉じ、祖母と並んで窓辺に立った。

 赤い花の向こうには、青い空が広がっていた。

 まだ見えない未来にも、きっと新しい花が咲く。

 そのことを信じながら、美月は一歩を踏み出すための力を、胸の奥に静かに蓄えていった。

8月19日、30日、10月19日の誕生花「アキノキリンソウ」

「アキノキリンソウ」

アキノキリンソウは、秋の野山を鮮やかな黄色で彩るキク科の多年草です。茎の先に小さな黄色い花を穂状にたくさん咲かせます。日当たりのよい草地や山道などに自生し、秋の訪れを感じさせる身近な野草として親しまれています。

基本情報

  • 和名:アキノキリンソウ(秋の麒麟草)
  • 学名:Solidago virgaurea subsp. asiatica
  • 科属:キク科アキノキリンソウ属(ソリダゴ属)
  • 原産地:ユーラシア
  • 分布:日本全国の山地や野原。とくに日当たりのよい山野に多い。
  • 開花期:8月~11月(秋の山を彩る花)
  • 草丈:30〜80cmほど
  • 花の特徴:小さな黄色の頭花が茎先に穂のように集まり、黄金色の花穂をつくる。

アキノキリンソウについて

特徴

  • 名前の由来は「秋に咲く」「麒麟草(キリンソウ)に似ている」ことから。
    ※ただしキリンソウ(ベンケイソウ科の多肉植物)とは別種。
  • 明るい黄金色の花が群生し、秋の野山を華やかに彩る。
  • 強健な多年草で、乾燥や痩せた土地でも育つ。
  • 民間薬として利用されてきた歴史がある。煎じて利尿や解毒、腎臓病の薬草として使われた。

花言葉:「用心」

アキノキリンソウの花言葉のひとつに「用心」があります。
この背景にはいくつかの理由が考えられます。

  1. 薬草としての効能から
    • 昔から腎臓や膀胱の病に用いられた薬草。
    • 「病を防ぐ=身体を守る=用心する」という意味合いにつながった。
  2. 外見の印象から
    • 小花がびっしり穂状に並ぶ姿は、まるで注意深く固まって守りを固めているよう。
    • 無闇に広がらず、整然とした咲き方が「慎重さ」「警戒心」を連想させた。
  3. 生育環境との結びつき
    • 人里近くにも出るが、山道や荒地にもよく生える。
    • 旅人や山歩きの人にとって、足元に黄金色の花が咲いていると「ここから先は気をつけて」という注意のサインのように見えたとも言われる。

「黄金の道しるべ」

山の秋は、静かに訪れる。
 木々の葉が赤や黄色に色づき始めるころ、斎藤は毎年決まってこの山道を歩いた。幼いころから祖父に連れられてきた道で、彼にとっては秋の巡礼のようなものだった。

 細い山道を進むと、斜面のあちこちに黄金色の花が目についた。穂のように小さな花を連ねて咲く――アキノキリンソウである。群れをなして立ち並ぶその姿は、華やかでありながらどこか慎ましく、ひっそりと旅人の足元を見守っているかのようだった。

 「気をつけて進め、ってことなんだよ」
 かつて祖父は、この花を見つけるたびにそう言った。山仕事の帰り道、汗をぬぐいながら笑った祖父の声が、今も耳に残っている。

 花には花言葉がある。アキノキリンソウの場合、そのひとつが「用心」だと斎藤は知っていた。祖父から聞いた話では、薬草として病を防ぐ効能があることからそう呼ばれるようになったとも、整然と並ぶ花姿が慎重さを思わせるからとも言われていた。けれど、祖父はもっと別の意味を込めていた気がする。

Artur PawlakによるPixabayからの画像

 彼はある日、幼い斎藤の手を引きながらこう語った。
 「この花が群れてるところは、道が急に狭くなったり、崩れやすかったりすることが多いんだ。だから昔の人は、アキノキリンソウを“山の守り神”みたいに思ってたんだよ」

 その言葉を思い出したのは、つい数分前だった。足元の土がわずかに崩れ、バランスを崩しかけた自分を、黄金色の花が咎めるように見ている気がしたのだ。

 斎藤は立ち止まり、深く息を吐いた。仕事や家庭のことに追われ、気が急いていた。けれど、山はそんな彼の焦りを映し出すように、足元に「気をつけろ」と告げる花を咲かせている。

 少し歩調をゆるめると、周囲の音が澄んで聞こえてきた。木々を渡る風の音、小鳥のさえずり、そして遠くで水が流れる音――。祖父が言っていた。「山は、耳を澄ませばいろんな声を教えてくれる。急ぐと聞こえないままだぞ」と。

 やがて視界が開け、小さな峠の広場に出た。そこにもまた、アキノキリンソウが群れて咲いている。黄金の帯のように並ぶ花を前にして、斎藤は深く頭を下げた。

 「じいちゃん……やっぱり、この花は道しるべだよ」

 花言葉の「用心」は、ただ病を防ぐ薬草としての意味でも、花の姿の印象だけでもなかった。旅人を守り、歩みを慎ませる――そんな優しい警告として、昔からここに咲いてきたのだ。

 斎藤はリュックから水筒を取り出し、ひと口だけ飲んだ。そしてもう一度花を見やり、峠を越えてゆっくりと歩き始めた。
 その歩幅は、先ほどまでの慌ただしいものではなく、山の声と花の導きを受け入れた穏やかなものだった。

 黄金色の小さな花々は、何も語らずとも確かに告げていた。
 ――「気をつけて進め」。
 それは彼の人生の道にさえ響く、永遠の忠告だった。

5月28日、6月26日、10月19日の誕生花「グロリオサ」

「グロリオサ」

No WayによるPixabayからの画像

グロリオサは鮮やかな赤と黄色の斑入りの花が特徴的なつる性植物。エキゾチックで華やかな姿から、情熱や栄光の象徴とされます。花言葉は「輝かしい未来」。見る人を明るい気持ちにさせてくれます。

基本情報

学名: Gloriosa
科名: ユリ科(またはイヌサフラン科に分類されることもあります)
属名: グロリオサ属
原産地: 熱帯アフリカ、熱帯アジア
和名: キツネユリ(狐百合)
開花時期: 6月〜9月頃
花色: 赤、黄色、オレンジなど

グロリオサについて

Bishnu SarangiによるPixabayからの画像

特徴

  • 反り返る花びら:
    最大の特徴は、花びらが大きく反り返って炎のような形になること。燃え立つ炎や王冠を思わせる姿から、「栄光」「勝利」「情熱」といったイメージを持たれます。
  • 蔓(つる)で伸びる:
    グロリオサはツル性の植物で、先端が巻きひげのように他の植物や支柱に絡みつきながら上へと成長します。その姿が「上昇」「成功」などの象徴として好まれます。
  • 強い生命力:
    熱帯原産のため、日光を好み、暑さに強い性質を持ちます。一方で、根(塊茎)には毒があり、取扱いには注意が必要です。
  • 切り花として人気:
    花姿のインパクトから、祝花・ブーケ・舞台装飾などでよく使われます。特に「華やかさ」「高貴さ」を演出する際に重宝されます。

花言葉:「栄光」

RalphによるPixabayからの画像

由来

花言葉「栄光(glory)」は、
その学名 “Gloriosa”(=ラテン語で「栄光ある」「光り輝く」)に由来します。

また、由来には次のような意味合いも込められています。

① 炎のように輝く花姿

花びらが反り返って燃える炎のように見えることから、
「輝き」「燃えるような成功」「栄光の瞬間」を象徴します。

→ 努力の末に得る勝利や成功を表す花として扱われるようになりました。

② 高貴で堂々とした印象

鮮やかな赤や金色の花色、反り返るフォルムがまるで王冠や勲章を思わせることから、
「名誉」「王者の栄光」というイメージが重ねられました。

→ このため、スポーツの表彰式や開店祝いなど、「栄誉をたたえる」場面でよく贈られます。


「栄光の花」

Bishnu SarangiによるPixabayからの画像

ステージの中央、白いライトが一筋、彼女を照らしていた。
 観客席からは拍手が止まらない。鳴り止まない音の波の中で、真央は深く息を吸い込んだ。
 ――終わった。
 全身から力が抜け、胸の奥に熱いものがこみ上げる。足元には、赤と金の花びらを束ねた花束。彼女の目に、その中のひときわ燃えるような花――グロリオサが映った。

 高校最後の全国大会。バレエを始めて十年、彼女がようやく掴んだ「栄光」の舞台だった。
 審査員の名前を読み上げる声が響き、真央の名前が告げられた瞬間、観客の歓声が一段と高まった。涙が頬を伝い、止まらなかった。

 楽屋に戻ると、母が待っていた。
 「おめでとう」
 母の手には、あのグロリオサの花束があった。
 「この花、覚えてる?」
 真央は首をかしげた。
 「あなたがまだ小学生のころ。初めての発表会のあと、うまく踊れなくて泣いてた夜に、おばあちゃんがくれたの。『この花の名前は“グロリオサ”。栄光って意味があるのよ』って」

 母は優しく笑った。
 「“燃えるように咲く花。努力を重ねた先に、きっとあなた自身の栄光がある”。おばあちゃん、よくそう言ってたわ」
 真央は花束を見つめた。反り返る花びらは、まるで炎のように天へと伸びている。

jestermarocによるPixabayからの画像

 ――炎のように輝く花姿。
 花びらのひとつひとつが、燃えるように光を放っていた。
 「輝き」「燃えるような成功」「栄光の瞬間」――その言葉が胸の中で静かに広がる。
 彼女はこれまで、何度も壁にぶつかった。足を痛め、仲間に遅れを取り、何度も諦めかけた。
 けれど、そのたびに支えてくれた人たちがいた。母が、恩師が、そして亡くなった祖母が。

 あの頃の涙も、失敗も、全部がこの一瞬のためにあった。
 花束の中のグロリオサが、まるで「よくやったね」と囁いているようだった。

 真央はゆっくりと立ち上がった。
 ステージ袖では、次の出番を待つ後輩たちが緊張した表情で並んでいる。
 彼女はその一人に花を手渡した。
 「この花、持っていって。きっと、君を照らしてくれるから」
 後輩は驚いたように目を見開いたが、やがて静かに頷いた。

 楽屋の扉を開けると、夜風が頬を撫でた。
 空には、夕焼けの名残がまだ残っていた。赤と金が溶け合う空の色が、まるでグロリオサの花びらのようだった。
 真央は空を見上げ、そっと呟く。
 「おばあちゃん、見てる? やっと、咲いたよ」

 ――栄光とは、誰かに勝つことじゃない。
 自分を信じて、最後まで立ち続けること。
 そう気づいたとき、真央の胸の中に、確かな光が灯った。

ブラックマンデー

10月19日はブラックマンデーです。

10月19日はブラックマンデー

1987年10月19日(月曜日)に、ニューヨーク株式相場が大暴落しました。その曜日から「ブラックマンデー」(暗黒の月曜日)と呼ばれるようになりました。

ブラックマンデー

ブラックマンデー

1987年10月19日、何事もなく普通の週末が終わり、普通の週明けを迎えました。ところが、NY市場が開かれると大量の売り注文が殺到したのです。そして、全く値が付かない状況となり、寄り付いた後も引き続き「売りが売りを呼ぶ連鎖」となり、空前絶後の大暴落を記録しました。実際、この日のNYダウの終値は、前週末比▲507.9ドル安の1,738.7ドルで、下落率▲22.6%は、今までの暴落記録を大幅に更新しています。

下落率の記録は未だに破られず

ブラックマンデーの教訓

現在までに発生した大暴落で、1日のNYダウ下落率のランキングは以下の通り。

第1位 1987年10月19日

ブラックマンデーといわれる大暴落で下落率▲22.6% 。

第2位 1929年10月28日

ウォール街の破壊的な大暴落で下落率▲13.4% 。

第3位 2020年3月16日

今年の新型コロナ感染者拡大によるコロナショックで下落率▲12.9% 。

第4位 1929年10月29日

ウォール街の大暴落2日目で下落率▲11.7% 。

第5位 1931年10月5日

下落率▲10.7% 。

史上最悪の下落率に恐怖

コロナ倒産

この下落率、ブラックマンデーの記録が未だに破られていません。そして、今年のコロナショックもリーマンショックを超える経済不況だといわれながらもこの1日の下落率を上回ることができなかったようです。いかにブラックマンデーの数時間で経済に恐怖を与えた下落率にインパクトがあったかということです。


「ブラックマンデー」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

10月18日の誕生花「メランポジウム」

「メランポジウム」

メランポジウムは、メキシコなどを原産とするキク科の一年草です。初夏から秋にかけて、黄色い小花を次々と咲かせます。暑さに強く、育てやすいことから、花壇や鉢植えに人気があります。花言葉は「元気」です。

基本情報

  • 学名:Melampodium paludosum
  • 科名:キク科
  • 属名:メランポジウム属
  • 原産地:メキシコ~中央アメリカ
  • 開花時期:5月~11月ごろ
  • 花の色:黄色
  • 草丈:20~40cmほど
  • 分類:一年草

メランポジウムについて

特徴

  • 小さな黄色い花を次々と咲かせ、株いっぱいに花を広げる、明るく愛らしい植物。
  • 暑さに強く、夏の厳しい日差しの中でも元気に花を咲かせ続ける。
  • 花がらを自然に落としながら新しい花を咲かせる性質があり、花壇を長期間美しく彩る。
  • コンパクトにまとまりやすく、花壇の縁取りや寄せ植え、鉢植えなどに適している。
  • 丈夫で育てやすく、ガーデニング初心者にも人気がある。
  • 明るい黄色の花が太陽を思わせ、夏の庭に活気と華やかさを添える。


花言葉:「元気」

由来

  • 暑さに負けず咲き続ける姿が、生命力にあふれた健康的な印象を与えることに由来するといわれている。
  • 鮮やかな黄色の花色が、太陽の光や明るい笑顔を連想させ、前向きで活発なイメージにつながっている。
  • 次々と花を咲かせる旺盛な性質が、困難にも負けずに前へ進む力強さや、尽きることのない活力を感じさせる。
  • こうした明るい花色と、夏の暑さの中でも生き生きと咲く姿が結びつき、「元気」という花言葉につながったと考えられている。


「黄色い花が教えてくれたこと」

 夏の太陽が容赦なく照りつける、小さな町の片隅に、一軒の古い花屋があった。
 店の名前は「花のひだまり」。
 白い木枠の窓には季節ごとの花が飾られ、店先には色とりどりの鉢植えが並んでいる。春にはチューリップやパンジーが風に揺れ、秋にはコスモスやキクが訪れる人々の目を楽しませた。
 けれど、八月のある日、店の前を通りかかる人は少なかった。
 焼けつくような暑さに、町の人々は外出を控えていたのである。
 そんな夏の午後、花屋の店先で、ひときわ鮮やかな黄色い花が咲いていた。
 メランポジウムだった。


 小さな黄色い花が、緑の葉の間から次々と顔をのぞかせている。太陽の光を浴びながら、まるで夏を楽しんでいるかのように、元気いっぱいに咲いていた。
 その花を、店の奥から眺めている少女がいた。
 名前は美咲。十六歳の高校一年生だった。
 美咲は以前、何をするにも積極的な少女だった。
 学校では友達と笑い合い、文化祭では率先して準備を進め、困っている人を見つければ迷わず声をかけた。将来は花に関わる仕事がしたいという夢もあり、休日には祖母が営むこの花屋を手伝っていた。
 しかし、春に参加した高校の吹奏楽部での出来事をきっかけに、彼女の心は少しずつ沈んでいった。
 美咲は昔からフルートを吹くのが好きだった。中学校では吹奏楽部に所属し、三年生のときにはソロパートを任されたこともある。


 高校でも音楽を続けたいと考え、迷わず吹奏楽部に入部した。
 ところが、周囲には自分よりも演奏の上手な生徒が大勢いた。
 楽譜を一度見ただけで難しい旋律を吹きこなす同級生。音程もリズムも正確で、先生から何度も褒められる先輩。美咲が何時間も練習してようやくできるようになったことを、簡単そうにやってのける仲間たち。


 最初のうちは、負けたくないという気持ちが練習を支えていた。
 けれど、何度練習しても思うように吹けない日が続くと、その気持ちは次第に焦りへと変わっていった。
 ある日の合奏で、美咲は大切なフレーズを何度も間違えた。
 先生は責めることなく、もう一度ゆっくり練習するように言った。しかし、周囲の視線が自分に集まったように感じた美咲は、顔を上げることができなかった。
 帰り道、楽器ケースを抱えながら、彼女は思った。
 自分には才能がないのかもしれない。
 いくら努力しても、みんなのようにはなれないのかもしれない。
 そう考えるようになると、フルートを手に取ることさえ苦しくなった。
 やがて、美咲は部活を休みがちになった。


 学校から帰ると部屋に閉じこもり、好きだった音楽も聴かなくなった。以前なら友達からの誘いに喜んで出かけていたのに、今では断る理由ばかり探していた。
 そんな孫の変化に、祖母の千代は気づいていた。
 千代は、花屋を四十年以上営んできた女性だった。背中は少し丸くなり、指には長年の仕事でできた細かな傷があったが、花を扱う手つきは今も丁寧だった。
 ある日、店の奥でうつむいている美咲に、千代は声をかけた。
「美咲、ちょっと手伝ってくれるかい?」
「何をすればいいの?」


「店先の花に水をあげてほしいんだよ。今日は暑いからね」
 美咲は黙って立ち上がり、じょうろを手にした。
 店先に出ると、強い日差しが肌を刺した。アスファルトからは熱気が立ち上り、遠くの景色がゆらゆらと揺れている。
 美咲は鉢植えの土を確かめながら、順番に水を与えていった。
 そのとき、小さな黄色い花が目に留まった。
 メランポジウムだった。
 暑さにぐったりしている花もあるなかで、その株は驚くほど生き生きとしていた。細い茎の先には黄色い花がいくつも咲き、まだつぼみも残っている。
「おばあちゃん、この花、暑くないのかな」
 美咲が尋ねると、千代は隣に立って微笑んだ。
「暑いだろうね。でも、この花は暑さに強いんだよ。夏の間も、次々と花を咲かせてくれるんだ」
「こんなに暑いのに?」
「そう。もちろん、何もしなくても平気というわけじゃないよ。水も必要だし、ちゃんと世話をしてあげなくちゃいけない。でもね、この花は夏の暑さの中でも、ずいぶん元気に育ってくれるんだ」
 美咲は、メランポジウムをじっと見つめた。


 小さな花は、特別に大きいわけでも、華やかな形をしているわけでもない。それなのに、鮮やかな黄色が集まると、そこだけ太陽の光が降り注いでいるように見えた。
「この花にはね、『元気』という花言葉があるんだよ」
 千代の言葉に、美咲は顔を上げた。
「元気?」
「そう。暑さに負けずに咲き続ける姿や、この明るい黄色が、元気いっぱいの印象を与えるからだといわれているんだ」
 千代は花のひとつにそっと触れた。
「黄色は太陽や明るい笑顔を思い出させてくれるだろう? それに、この花は次々と新しい花を咲かせるんだ。ひとつの花が終わっても、また別の花が咲いてくる。そんな姿を見ていると、何度でも前に進めるような気がするんだよ」
 美咲は、黄色い花の間に隠れていた小さなつぼみを見つけた。
 まだ開いていないつぼみは、周りの花に比べると頼りなく見えた。けれど、これから花を咲かせるために、懸命に育っているのだろう。
「でも、元気って、いつも明るくしていることなのかな」
 気がつくと、美咲はそんなことを口にしていた。
 千代はすぐには答えなかった。
 しばらく花を眺めたあと、静かな声で言った。


「どうして、そう思うんだい?」
「私、最近、全然元気じゃないから。学校でもうまくいかないし、フルートも前みたいに吹けない。頑張ろうと思っても、すぐに落ち込んじゃうんだ。みんなはできるのに、私だけできない。そんな自分が嫌になるの」
 美咲は、胸の奥に押し込めていた言葉をひとつずつ吐き出した。
「前は、もっと頑張れたのに。今は何をするのも面倒で、笑うことさえ疲れちゃう。こんな自分じゃ駄目だと思うのに、どうしたらいいのかわからない」
 話し終えると、美咲はうつむいた。
 弱音を吐いたことが恥ずかしかった。
 祖母を心配させてしまったかもしれない。こんなことを言っても、何も変わらないかもしれない。
 けれど、千代は美咲を叱らなかった。
「美咲。元気がないときに、無理して元気なふりをする必要はないんだよ」
 その言葉に、美咲はゆっくりと顔を上げた。
「でも……」
「花だって、ずっと同じように咲いているわけじゃない。つぼみのときもあれば、花を咲かせるときもある。咲き終わった花だってある。それでも、株全体を見れば、また新しい花が育っているだろう?」
 千代は、メランポジウムの葉をそっと持ち上げた。
「この花は、ひとつひとつの花が永遠に咲き続けるわけじゃないんだよ。終わる花もあれば、これから咲く花もある。大切なのは、どの花も同じように咲かなければいけないと思わないことなんじゃないかな」
 美咲は黙って聞いていた。
「人間だって同じだよ。いつも頑張れる日ばかりじゃない。失敗する日もあるし、何もしたくない日だってある。それでも、少し休んで、またやってみようと思えたら、それも立派な前進なんだ」
 千代の声は、夏の風のように穏やかだった。
「元気というのは、いつも笑っていることだけじゃない。つらいときに、つらいと認めることも大切だよ。そして、いつかもう一度やってみようと思えたなら、その小さな気持ちを大事にしてあげればいいんだ」
 美咲は、目の前の黄色い花を見つめた。
 今まで彼女は、元気でいることとは、何事にもくじけず、いつでも明るく、失敗してもすぐに立ち直ることだと思っていた。
 だからこそ、落ち込んでしまう自分を許せなかった。
 しかし、祖母の話を聞いているうちに、胸の奥に張りつめていたものが、少しずつ緩んでいくのを感じた。


 元気がなくなったからといって、自分のすべてが失われたわけではない。
 今は前に進めなくても、いつかまた歩き出せるかもしれない。
 その可能性まで、自分で閉ざす必要はないのだ。
 その日から、美咲は少しずつ生活を変えていった。
 最初にしたのは、朝、カーテンを開けることだった。
 以前なら、目を覚ましても布団から出られず、何度も時計を確認していた。けれど、まずは窓を開け、外の空気を吸ってみることにした。
 青い空を見上げると、遠くから蝉の声が聞こえた。
 暑さは相変わらず厳しかったが、朝の光は思っていたよりも柔らかかった。
 次に、美咲は一日十分だけフルートを吹いてみることにした。
 以前のように、難しい曲を完璧に演奏しようとは考えなかった。
 音階をゆっくり吹く。息を整える。好きな曲の一部分だけを練習する。
 うまく吹けない日もあった。
 音がかすれたり、指が思うように動かなかったりすると、悔しさが込み上げてくることもあった。
 それでも、美咲はすぐに楽器をしまわないようにした。
 今日はここまでできた。
 明日は、もう少し吹いてみよう。
 そう考えて、練習を終えることにした。
 花屋の手伝いも続けた。


 毎朝、メランポジウムの鉢を確認し、土の乾き具合を見ながら水を与える。咲き終わった花を取り除き、葉の様子を観察する。
 世話を続けていると、小さな変化に気づくようになった。
 昨日はつぼみだった場所に、黄色い花が開いている。
 少し離れたところでは、新しいつぼみが膨らんでいる。
 ひとつの花が終わっても、次の花が咲いてくる。
 その繰り返しが、美咲には不思議なほど心地よかった。
 ある日、近所に住む小さな男の子が、店先で足を止めた。
 男の子は、母親の手を握りながら、メランポジウムを指さした。
「お母さん、このお花、ひまわりみたい!」
「本当ね。黄色くてかわいいわね」
 男の子は花を見つめながら、ぱっと笑った。
「なんだか元気になるね!」
 その言葉に、美咲は思わず微笑んだ。
 自分も、同じことを感じていたからだ。
 メランポジウムは、誰かを励まそうとして咲いているわけではない。
 大きく見せようとしているわけでも、誰かと競い合っているわけでもない。
 ただ、与えられた場所で、太陽の光を浴び、必要な水を吸い、花を咲かせている。


 それなのに、その姿を見た人の心を明るくしているのだ。
 美咲は、花に水を与えながら思った。
 自分も、誰かと比べることばかり考えなくてもいいのかもしれない。
 自分にできることを、ひとつずつ続けていけばいい。
 そう思えるようになったころ、吹奏楽部の友人から連絡が届いた。
『今度の練習、来られそう? 久しぶりに一緒に吹きたいな』
 画面を見つめながら、美咲は迷った。
 また失敗したらどうしよう。
 みんなに遅れを取っていたら、どう思われるだろう。
 以前なら、そんな不安だけで参加を諦めていたかもしれない。
 けれど、窓辺に置いたメランポジウムが目に入った。
 鮮やかな黄色い花の向こうに、まだ開いていないつぼみが見える。
 美咲は、ゆっくりと息を吐いた。
『行ってみるね。まだ上手に吹けないけど、少しずつ練習してるよ』
 そう返信すると、すぐに友人から返事が届いた。
『待ってるね! 無理せず、一緒に頑張ろう』
 美咲の胸に、温かなものが広がった。
 翌週、美咲は久しぶりに音楽室の扉を開けた。
 仲間たちは、いつもと変わらない様子で彼女を迎えてくれた。
「美咲、久しぶり!」
「また一緒に吹けるね」


 その声を聞いたとき、美咲は少しだけ泣きそうになった。
 自分がいない間も、みんなは自分を忘れずにいてくれたのだ。
 合奏が始まると、最初は緊張で指が震えた。音も思うように出なかった。それでも、美咲は楽器を置かなかった。
 何度か間違えながらも、最後まで演奏を続けた。
 練習が終わったあと、友人が笑顔で声をかけてきた。
「また一緒に練習しようね」
 美咲は、今度は迷わずうなずいた。
「うん。私、もう一度頑張ってみたい」
 その言葉は、誰かに認めてもらうためのものではなかった。
 以前の自分を取り戻さなければならないという焦りから出た言葉でもなかった。
 ただ、もう少し音楽を続けてみたいと思ったのだ。


 その気持ちがあるだけで、今は十分だった。
 夏の終わりが近づくころ、花屋のメランポジウムは、相変わらず鮮やかな黄色い花を咲かせていた。
 朝夕には少しずつ涼しい風が吹くようになり、店先を訪れる人も増えてきた。
 美咲は、鉢植えの前にしゃがみ込み、新しく咲いた花を見つめた。
「おばあちゃん、この花、まだまだ咲きそうだね」
「そうだね。元気な花だよ」
 千代は微笑みながら答えた。


「私ね、前は元気って、ずっと頑張り続けることだと思っていたの」
 美咲は、黄色い花を見つめたまま話し始めた。
「でも、今は少し違う気がする。疲れたら休んでもいいし、失敗したら落ち込んでもいい。そこから、また何かを始められたらいいんだよね」
 千代は、うれしそうにうなずいた。
「そうだね。自分の歩き方を見つければいいんだよ」
「私、まだフルートは上手じゃないよ。みんなに追いつけるかどうかもわからない」
「それでも、続けたいと思えたんだろう?」
「うん」
 美咲は、はっきりとうなずいた。
「だから、もう少し頑張ってみる」
 千代は何も言わず、孫の肩にそっと手を置いた。
 店先には、午後の光が降り注いでいた。
 黄色い花びらが風に揺れ、緑の葉の間で小さなつぼみが膨らんでいる。
 その光景を見つめながら、美咲は思った。
 人生には、思いどおりにいかない日がある。
 努力しても結果が出ないこともあれば、自分だけが取り残されたように感じることもある。
 そんなとき、無理に笑う必要はない。
 誰かより優れていなければならないわけでもない。
 大切なのは、自分の心が疲れていることに気づき、必要なら休み、また一歩を踏み出せる日を待つことなのだ。


 メランポジウムの花は、太陽の光を浴びながら、今日も小さな花を咲かせている。
 ひとつの花が終われば、また新しい花が開く。
 その繰り返しは、決して派手ではない。けれど、絶えることなく続いていく姿には、確かな力強さがあった。
 美咲は立ち上がり、店の奥に置いてあるフルートケースを手に取った。
 これからも、うまくいかない日はあるだろう。
 自信を失うことも、誰かと比べて落ち込むこともあるかもしれない。
 それでも、もう一度やってみようと思える自分を、少しずつ育てていきたい。
 そう考えると、胸の奥に小さな光が灯ったような気がした。
 美咲は、店先のメランポジウムに向かって、そっと笑いかけた。
「ありがとう。私も、自分らしく咲いてみるね」
 黄色い花は、風に揺れながらそこに咲いていた。
 まるで、いつでも戻っておいでと告げるように。
 そして、その明るい色は、夏の空の下でひときわ鮮やかに輝いていた。
 花言葉は「元気」。


 それは、いつも明るく、決して弱音を吐かないことではない。
 何度つまずいても、自分を責めすぎず、また歩き出そうとする心のことなのかもしれない。
 小さな花が次々と咲くように、人の心にも、新しい希望が芽生える日がやってくる。
 その希望は、最初から大きくなくてもいい。
 ほんの少しの勇気でも、かすかな笑顔でもいい。
 今日を乗り越え、明日を迎えようとする気持ちがあるのなら、それはきっと、元気という名の小さな花なのだ。
 美咲はフルートケースを抱え、夕暮れの町へ歩き出した。
 空には、柔らかなオレンジ色の光が広がっていた。
 その光を浴びながら、彼女の足取りは、昨日よりほんの少しだけ軽くなっていた。