2月1日の誕生花「サクラソウ」

「サクラソウ」

基本情報

  • 和名:サクラソウ(桜草)
  • 学名:Primula sieboldii
  • 科名/属名:サクラソウ科/サクラソウ属
  • 原産地:シベリア東部~中国東北部、朝鮮半島、日本列島
  • 開花時期:4月〜5月(春)
  • 草丈:15〜30cmほど
  • 分類:多年草
  • 生育環境:湿り気のある草地、川辺、半日陰を好む
  • 日本では古くから親しまれ、江戸時代には園芸品種も多く作られた

サクラソウについて

特徴

  • 桜に似た可憐な花姿から名付けられた
  • 花色は淡いピンク、白、紫などやさしい色合いが多い
  • 細い茎の先に、数輪の花をまとめて咲かせる
  • 派手さはないが、楚々とした上品な美しさを持つ
  • 春の野にひっそりと咲き、近づいて初めて気づかれることも多い
  • 人の手が入りすぎない自然の中で、本来の美しさを発揮する花


花言葉:「あこがれ」

由来

  • 遠くから見ると可憐に咲いているのに、近づくと控えめで壊れそうな印象を与える姿から
  • 春の訪れを告げる花として、待ち望む季節への想いと重ねられたため
  • 群生して咲く様子が、手の届かない理想や憧れの存在を思わせたことから
  • 主張しすぎない美しさが、「近づきたいけれど触れすぎてはいけない存在」を連想させた
  • ひそやかに咲きながら、人の心を静かに引き寄せる性質が「あこがれ」という感情と結びついた


「触れずに仰ぐ花」

 川沿いの遊歩道を歩くと、春の湿った土の匂いが靴底にまとわりつく。その先、少し低くなった草地に、淡い色の集まりが見えた。サクラソウだった。

 遠くから見ると、それは小さな春の雲のようだった。風に揺れながら、やわらかな輪郭だけをこちらに差し出している。足を止めたのは、意識的というより、身体が自然に引き寄せられた結果だった。

 近づくと、思った以上に花は控えめだった。細い茎、薄い花弁。今にも壊れてしまいそうで、思わず息を潜める。さっきまで感じていた華やかさは、距離が縮まった途端、静かな緊張に変わった。

 ——触れてはいけない。

 そんな感覚が、胸の奥に浮かぶ。

 真琴は、しばらくその場に立ち尽くした。大学に入ってから、何かに心を強く引かれること自体が久しぶりだった。講義、課題、アルバイト。日々は忙しく、満ちているようで、どこか平坦だった。

 春は、待ち望んでいたはずの季節だ。寒さが緩み、世界が少しだけ優しくなる。けれど実際に春の只中に立つと、心は追いつかないまま、取り残されたような気分になる。

 サクラソウは群生していた。一輪一輪は小さく、主張もしない。それでも、集まることで確かな存在感を放っている。手を伸ばせば届く距離にあるのに、なぜか遠い。理想や憧れは、いつもそうだった。

 真琴には、昔から憧れている人がいる。高校時代の美術教師だった。絵の技術以上に、静かな佇まいが印象的な人だった。決して多くを語らず、必要以上に前に出ない。それでも、教室の空気は、その人がいるだけで落ち着いた。

 近づきたいと思ったことは何度もある。話しかけたい、知りたい、触れたい。しかし同時に、踏み込みすぎてはいけないという感覚も、確かにあった。憧れは、距離があるからこそ、保たれる。

 サクラソウを見下ろしながら、真琴はその感情を思い出していた。

 花は、こちらを見返さない。ただ、ひそやかに咲いている。主張しすぎない美しさ。それなのに、目を離せない。不思議な引力があった。

 春の風が吹き、花が一斉に揺れた。その瞬間、群生はまるで一つの呼吸をしているように見えた。誰かに見られるためでも、褒められるためでもなく、ただそこに在ることを選んでいるようだった。

 あこがれとは、きっと、そういう感情なのだろう。

 手に入れたいわけではない。変えたいわけでもない。ただ、その存在を仰ぎ見て、自分の中に灯りをもらう。近づきすぎず、離れすぎず、その距離を保つこと自体が、誠実さなのかもしれない。

 真琴は、スマートフォンを取り出し、写真を撮るのをやめた。記録するよりも、この感覚をそのまま胸に残したかった。

 しばらくして、ゆっくりとその場を離れる。振り返ると、サクラソウは変わらず、そこに咲いていた。見送るでもなく、引き止めるでもなく。

 それでいい、と真琴は思う。

 触れずに仰ぐ花。
 近づきたいけれど、触れすぎてはいけない存在。

 あこがれは、満たされないからこそ、心を前に進ませる。

 春の光の中で、サクラソウは今日も静かに、人の心を引き寄せていた。

1月17日、2月1日、20日、9月3日、11月22日の誕生花「マーガレット」

「マーガレット」

Ralph KleinによるPixabayからの画像

「マーガレットは、可憐で清楚な印象の花で、ガーデニングや花束によく使われます。以下に、マーガレットの特徴を紹介します。」の説明は以下のようになります。

マーガレットは、その可愛らしさと清楚な見た目から、家庭の庭やフラワーアレンジメントで人気のある花です。一般的に、白い花びらと黄色の中心部分を持ち、陽射しを浴びると特に鮮やかさを増します。マーガレットは、春から初夏にかけて花を咲かせ、ガーデニングの彩りを与えたり、感謝や愛情を伝えるための花束にもよく利用されます。しっかりとした茎を持ち、育てやすいことから、多くの人々に親しまれています。

マーガレットについて

RalphによるPixabayからの画像

科名:キク科アルギランセマム属
原産地:スペイン領カナリア諸島

開花時期:春~初夏(11月~5月ごろ)
花の色:白・ピンク・黄色・オレンジなど
形態:多年草または半耐寒性の低木

マーガレットの育て方 🌼

マーガレットは育てやすく、ガーデニング初心者にも人気の花です。適切な環境とお手入れをすれば、春から初夏にかけてたくさんの花を咲かせます。

AnnieによるPixabayからの画像

🌞 栽培環境

日当たり・置き場所

  • 日当たりの良い場所が最適。よく日に当てることで花つきが良くなる。
  • 風通しの良い場所に置くと、病害虫の発生を防ぎやすい。
  • 鉢植えの場合は、夏の直射日光を避け、半日陰に移動させるのがよい。

🌿 土・鉢選び

  • 水はけの良い弱酸性~中性の土が適している。
  • 市販の草花用培養土や、赤玉土(小粒)6:腐葉土4の配合がおすすめ。
  • 鉢植えの場合、鉢底石を敷くと根腐れ防止になる。

💧 水やり

  • 表土が乾いたらたっぷりと与える。過湿は根腐れの原因になるので注意。
  • 夏場は乾燥しやすいため、朝か夕方に水やりする。
  • 冬は生育が緩やかになるため、水やりを控えめにする。

🌼 肥料

  • 成長期(春~初夏・秋)は緩効性肥料を月に1回、または液体肥料を10日に1回ほど与えると花つきがよくなる。
  • 真夏と冬は肥料を控える(気温が高すぎる・低すぎると生育が鈍るため)。

✂️ 剪定・切り戻し

  • 花がら摘み:咲き終わった花をこまめに摘むと、次の花が咲きやすくなる。
  • 切り戻し:夏前(6月頃)に茎を半分ほどに剪定すると、秋に再び花を楽しめる。

🐛 病害虫対策

beasternchenによるPixabayからの画像
  • アブラムシ・ハダニがつきやすいため、風通しをよくし、見つけたら早めに駆除する。
  • うどんこ病になりやすいので、葉が密集しすぎないように注意。

❄️ 冬越しの方法

  • 寒さに弱いため、霜よけ対策が必要
  • 鉢植えは室内の日当たりの良い窓辺に移動させる。
  • 地植えの場合は、**株元にマルチング(わらや腐葉土を敷く)**をして防寒する。

🌱 増やし方

  • 挿し木(春か秋が適期):茎を10cmほど切り、挿し木用土に挿して発根させる。
  • 株分け(成長した株を分けて植え替える)。

🌸 まとめ

マーガレットは日当たりと水はけの良い環境を好み、適度な剪定や花がら摘みをすれば長く楽しめる花です。冬越しに注意すれば毎年花を咲かせてくれるので、ガーデニング初心者にもおすすめ!

かわいい花をたくさん咲かせるために、ぜひ育ててみてくださいね! 🌿🌼✨


花言葉:「恋の行方」

Albrecht FietzによるPixabayからの画像

マーガレットは、花占い(「好き」「嫌い」と花びらを一枚ずつちぎっていく遊び)によく使われることから、「恋の行方」という花言葉がついています。他にも、以下のような花言葉があります。

「信頼」「誠実」:マーガレットの清楚な見た目から、誠実さを象徴する花とされています。
「心に秘めた愛」:優しい色合いと可憐な姿が、ひそやかな想いを連想させます。


マーガレットは見た目がデイジーに似ていますが、デイジーは「ヒナギク属」に属し、マーガレットとは異なる植物です。ガーデニングでも人気が高く、温暖な気候では多年草として育てられることもあります。

マーガレットの花言葉や特徴が、恋愛や日常の中で素敵な意味を持っているのは面白いですね!


「恋の行方」

congerdesignによるPixabayからの画像

ある春の日、奈々はマーガレットの花束を抱えて歩いていた。やわらかな風に揺れる白い花びらが、彼女の心を映すかのように揺れている。

「好き……嫌い……好き……」

彼女は幼い頃、祖母から教わった花占いを思い出していた。小学生の頃、片思いの男の子のことを思いながら、マーガレットの花びらを一枚ずつ摘んだ記憶が蘇る。

LeopicturesによるPixabayからの画像

そんな彼女の前に、大学時代の友人であり、長く連絡を取っていなかった航平が立っていた。

「奈々?」

突然の再会に、奈々の心は不思議な高鳴りを覚えた。航平もまた、懐かしそうに彼女を見つめる。

「久しぶり。元気?」

「うん、偶然だね。」

彼はマーガレットの花束を見つめ、ふと笑った。

「まだ花占い、やってるの?」

「え?」

ChristianeによるPixabayからの画像

驚いた奈々に、航平は続ける。

「大学の頃も、君がマーガレットを見るたびに『恋の行方はわからない』って言ってたからさ。」

奈々は思わず微笑んだ。確かに、昔から彼女は恋愛に対して慎重で、迷うことが多かった。でも今、目の前の航平を見ていると、不思議と答えが見える気がした。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

「ねえ、航平。」

「ん?」

「……花占い、もうしなくてもいいかも。」

マーガレットの花束を抱きしめながら、奈々はそっと微笑んだ。航平もまた、静かに微笑み返す。

春風に舞うマーガレットの花びらが、二人の新しい物語の始まりをそっと告げていた。

1月3日、2月1日、10月24日の誕生花「ウメ」

「ウメ」

基本情報

  • 和名:ウメ(梅)
  • 学名Armeniaca mume(Prunus mume)
  • 科名/属名:バラ科 サクラ属
  • 原産地:中国
  • 開花時期:1月~3月(早春)
  • 花色:白、淡紅、紅など
  • 分類:落葉小高木

ウメについて

特徴

  • 日本では「春を告げる花」として古くから親しまれている。
  • 寒さの残る時期に咲くため、「忍耐」「気高さ」の象徴とされる。
  • 花には芳香があり、種類によって甘い香りや上品な香りを放つ。
  • 花・実・幹すべてが観賞対象となり、庭木や盆栽にも利用される。
  • 実(梅の実)は食用・薬用としても重要で、梅干しや梅酒の原料になる。
  • サクラよりも早く咲き、花びらは丸みを帯びた形をしている。

花言葉:「澄んだ心」

由来

  • ウメは、厳しい冬の寒さの中で静かに花を咲かせる
     → 雪の残る景色の中に清らかに咲く姿が、「濁りのない心」「純粋さ」を象徴。
  • 花色の白や淡紅が、清楚・潔白・静謐さを感じさせることからも由来。
  • 古くから「高潔な人格」「清らかな精神」を表す花として、詩や絵画に登場。
  • その気高さと凛とした美しさが、「澄んだ心」という花言葉に結びついた。

「澄んだ心」

雪がまだ庭の隅に残っていた。
 冷たい空気の中、ひとりの少女が梅の木の前に立っている。枝先には、小さな白い花がいくつも開き始めていた。
 その花びらは透けるように淡く、凍てつく空気の中で、まるで光を宿しているかのようだった。

 「……もう、咲いたんだ」
 麻衣は小さくつぶやいた。

 昨年の冬、祖母が亡くなった。庭の梅の木は祖母が植えたもので、毎年この時期になると一番に花をつけていた。
 祖母はいつも言っていた。
 「梅はね、どんなに寒くても、自分の季節を信じて咲くのよ。人もそうありたいものだね」

 麻衣はその言葉を思い出しながら、枝にそっと手を伸ばす。冷たい風が指先をかすめた。
 学校では、うまく笑えない日が続いていた。周りの人と少し違う考え方をしているだけで、からかわれる。話しかけられても、言葉が喉につかえる。
 「どうして、私はこんなに不器用なんだろう」
 そう思うたびに、胸の奥が濁っていく気がした。

 けれど、いま目の前で咲く梅の花は、そんな思いを静かに溶かしていくようだった。
 雪解け水に照らされて輝くその白さは、ただそこに“ある”だけで美しい。誰に見せるためでもなく、誰に褒められるためでもない。
 その存在は、凛として、やさしかった。

 ふと、麻衣の胸の奥に祖母の声が響いた。
 ――澄んだ心を忘れないようにね。
 「澄んだ心」。それは祖母がよく使っていた言葉だった。
 人の言葉や世間の評価に心を曇らせず、自分の中の光を信じること。祖母にとっての“生きる強さ”だった。

 麻衣は深く息を吸い、目を閉じた。冷たい風が頬を打つ。
 でも、不思議ともう寒くなかった。
 「おばあちゃん、私、ちゃんと咲けるかな」
 呟いた声は風に乗って、空へと昇っていく。

 目を開けると、花びらが一枚、ひらりと落ちた。
 その小さな白い花弁が、雪の上に静かに舞い降りる。
 その瞬間、麻衣は確かに感じた――自分の中にも、あの花と同じ光があるのだと。

 強くなくてもいい。派手でなくてもいい。
 ただ、自分の心を濁らせず、信じた道を歩んでいけばいい。

 梅の花は、凛と咲き続けている。
 冷たい風の中で、誰よりも優しく、清らかに。
 その姿が麻衣の胸の奥に、小さな炎のように灯った。

 春は、もうすぐそこまで来ている。

ガーナチョコレートの日

2月1日はガーナチョコレートの日です

ガーナチョコレートのCM

2月1日は、ガーナチョコレートを製造・販売する菓子メーカーの株式会社ロッテが「ガーナチョコレートの日」として制定しました。この日付は、1964年2月1日に「ガーナミルク」チョコレートが誕生した日であることからこの日にしています。目的は、株式会社ロッテの代表的な人気商品「ガーナ」チョコレートをPRすることです。

ガーナチョコレート

ガーナチョコレート、歴代のCM

1948年に設立されたロッテは、最初チューインガムの製造と販売を行っていました。その後、1964年にチョコレート事業に進出を果たしています。当時、チョコレートは大変困難な事業であり、「味の芸術品」といわれるほどでした。そして、最高品質のチョコレートを作るために、ミルクチョコレート発祥の地であるスイスに住む技師マックス・ブラック氏と出会います。

マックス・ブラック

板チョコ

ロッテは、チョコレート作りが盛んなヨーロッパで一年間、最高の技術者を探していました。そこでようやく探し当て出会ったのが、長年工場技師兼、工場長を勤めていたスイスの技師マックス・ブラック氏でした。

板チョコのカロリー比較

板チョコのカロリーは、どれくらいあるのでしょうか?いくつか各メーカーの代表格をそれぞれ比較してみます。

明治ミルクチョコとの比較

まず、板チョコ代表格の明治ミルクチョコとロッテガーナミルクチョコから比較してみましたが、両方共に1枚あたり279kcalと同じでした。

その他の板チョコ

板チョコ比較

ハイミルクチョコレートは、1枚あたり50g280kcal。ホワイトチョコレートは、1枚あたり40g235kcal。ガーナブラックチョコレートは、1枚あたり50g289kcal。ガーナホワイトチョコレートは、1枚あたり45g279kcal。このデータにより、ミルクチョコよりもブラックチョコの方がカロリーが高く、元々高そうなイメージのホワイトチョコが、他と比べて量が少ないため、カロリーも低くようです。

チョコレートの主成分、カカオ

カカオ
カカオの木

チョコレートは、カカオの種子を発酵、焙煎したカカオマスを主原料として砂糖、ココアバターを混ぜて作られます。その主な原料「カカオ」に含まれる成分は、ポリフェノール(抗酸化物質)です。カカオポリフェノールを摂取すると、「血圧低下」「動脈硬化予防」「老化防止」と3つ効果が期待されます。だからって、食べ過ぎるのは良くないと思いますが、我々中高年には、苦くてもカカオ成分の割合が高いチョコレートを定期的に食べてポリフェノールを摂取するのは大切だと思います。


「ガーナチョコレートの日」に関するツイート集

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1月31日の誕生花「オジギソウ」

「オジギソウ」

基本情報

  • 和名:オジギソウ(お辞儀草)
  • 別名:ミモザ(※園芸・俗称。本来のミモザは別属)
  • 学名:Mimosa pudica
  • 科名/属名:マメ科/ミモザ属
  • 原産地:中央アメリカ~南アメリカ
  • 開花時期:7月〜10月頃
  • 草丈:30〜60cm程度
  • 花色:淡いピンク(球状の花)

オジギソウについて

特徴

  • 触れると葉がすばやく閉じ、茎ごと下がる独特の反応を示す
  • 光・振動・温度などの刺激にも反応する
  • 葉は細かく分かれ、繊細で柔らかな印象
  • 花は小さな糸状の雄しべが集まった丸い形
  • 外界の変化に敏感な性質をもつ植物として知られる


花言葉:「感受性」

由来

  • わずかな刺激にも即座に反応する性質が、感情の鋭さを連想させたため
  • 触れられると葉を閉じる姿が、心が揺れ動く様子に重ねられた
  • 外界から身を守るように反応する様子が、繊細で傷つきやすい心を象徴した
  • 刺激が去ると再び葉を開く姿が、感情の回復力や柔らかさを感じさせた
  • 喜びや痛みを強く感じ取る、豊かな心の象徴として語られるようになった


「触れた世界に、心はひらく」

 夏の午後、祖父の家の縁側には、風に揺れる影があった。軒先から差し込む光の中、鉢植えのオジギソウが静かに葉を広げている。細かな葉は羽のように軽やかで、見ているだけで息が整う気がした。

 紗弓は、そっと指先を伸ばした。触れた瞬間、葉は驚くほど素早く閉じ、茎がわずかに下がる。まるで小さな礼をするように。紗弓は思わず息をのんだ。こんなにも小さな刺激に、こんなにもはっきりと反応するのだ。

 「びっくりしたんだよ」

 背後から祖父の声がした。紗弓は振り返り、少し気まずそうに笑った。「ごめんね、って思う」。祖父はうなずく。「でもね、悪いことじゃない。感じ取れるってことだから」

 紗弓は、感じ取ることが怖かった。高校に入ってから、言葉一つ、視線一つに心が揺れ、眠れない夜が増えた。友だちの何気ない一言に傷つき、ニュースの見出しに胸が痛み、誰かの喜びに自分のことのように涙が出る。鈍くなれたら楽なのに、と何度も思った。

 縁側に戻ると、オジギソウはしばらく葉を閉じたままだった。紗弓は距離を保ち、風の音に耳を澄ませる。しばらくすると、閉じていた葉が、ためらうように、少しずつ開き始めた。さっきまでの警戒が嘘のように、元の姿へ戻っていく。

 「すぐに閉じるけど、ずっと閉じてはいないだろ」

 祖父の言葉が、胸に落ちた。紗弓は気づく。守るために閉じることと、世界を拒むことは違うのだと。刺激が去れば、また開けばいい。傷ついたからといって、永遠に心を畳む必要はない。

 翌日、学校で紗弓は勇気を出して、クラスメイトの相談に耳を傾けた。重たい話だったが、逃げなかった。胸は痛んだ。それでも、話し終えた相手の表情が少し和らいだのを見て、温かなものが広がった。感じやすい心は、痛みだけでなく、喜びも強く受け取れる。

 放課後、帰宅してオジギソウに水をやる。葉は光を受けて広がり、微細な影を落とす。紗弓はそっと、今度は触れずに手を近づけた。風が揺れ、葉がわずかに反応する。世界はいつも、完全に静かではない。それでも、この小さな植物は、閉じては開き、また世界を迎え入れる。

 感受性は、弱さではない。
 それは、触れた世界を深く味わう力だ。

 紗弓は、胸いっぱいに夏の空気を吸い込んだ。感じ取ってもいい。閉じてもいい。そして、また開けばいい。オジギソウの葉がゆっくりと広がるのを見ながら、彼女はそう確信した。

1月21日、31日の誕生花「クロッカス」

「クロッカス」

基本情報

  • アヤメ科・クロッカス属の球根植物
  • 原産地:地中海沿岸〜小アジア、西アジア
  • 学名:Crocus
  • 開花期:2月~4月、秋咲き種は10月中旬~11月中旬
  • 花色:紫、黄、白、青、複色など
  • 庭植え・鉢植えのほか、芝生や花壇の縁取りにも用いられる

クロッカスについて

特徴

  • 草丈が低く、地面から直接花が立ち上がるように咲く
  • 雪解け直後にも花を咲かせるほど寒さに強い
  • 朝に花を開き、夕方や曇天では閉じる性質をもつ
  • 小さな花ながら、はっきりとした色彩で存在感がある
  • 群生すると、春の訪れを告げるじゅうたんのような景観をつくる


花言葉:「青春の喜び」

由来

  • 厳しい冬を越え、真っ先に地上へ顔を出す姿が、若さの勢いと重ねられた
  • 太陽の光を受けて一斉に花開く様子が、胸が高鳴る瞬間の喜びを象徴した
  • 花の寿命は短いが、その一瞬の輝きが青春のきらめきに似ていると考えられた
  • ヨーロッパでは春の再生と希望を告げる花として、若い生命力の象徴とされてきた


「雪割りの光、胸に走る」

 その年の冬は、例年よりも長く、厳しかった。校舎の裏手に広がる小さな庭は、何度も雪に覆われ、土の色を見ることすらできなかった。理人は毎朝、その庭を横目に登校した。何かが始まる気配など、どこにもないように思えたからだ。

 高校二年の終わり。進路も、夢も、まだ輪郭を持たないまま、時間だけが過ぎていく。周囲の友人たちは口々に将来を語り始めていたが、理人の胸は妙に静かだった。焦りはある。それでも、踏み出す理由が見つからない。

 ある朝、雪解けの水がきらきらと光る庭に、わずかな色を見つけた。紫だった。地面すれすれの場所から、小さな花が顔を出している。クロッカスだ、と理人は思い出した。中学の理科の資料集で見た花。春を告げる花。

 信じられず、近づいてみる。まだ冷たい空気の中で、花は確かにそこに在った。厳しい冬を越え、誰に褒められるでもなく、ただ自分の時を知っていたかのように。

 昼休み、太陽が雲間から顔を出すと、庭のクロッカスは一斉に花弁を開いた。光を受け止めるように、迷いなく。理人は、その瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。理由のわからない高鳴り。けれど、それは確かに「喜び」だった。

 放課後、同じ庭に立っていたのは、美咲だった。クラスでよく笑う彼女も、花を見つめていた。「きれいだね。こんなに早く咲くんだ」。理人はうなずきながら、言葉を探した。「……なんか、急いでるみたいだ」。美咲は首をかしげ、すぐに微笑んだ。「でも、それがいいんじゃない?」

 数日後、クロッカスは少しずつ元気を失い始めた。花の盛りは短い。それでも、理人の目には、決して儚いだけの存在には映らなかった。短いからこそ、全力で光を受け取る。その姿は、まるで青春そのものだった。

 理人は気づいた。永遠に続く確信などなくてもいい。長く準備しなくてもいい。心が動いた瞬間に、踏み出していいのだと。冬を越えた花がそうしているように。

 春休みのはじめ、理人は進路希望調査の紙に、初めて具体的な言葉を書いた。正解かどうかはわからない。それでも、胸は不思議と軽かった。

 庭のクロッカスは、やがて役目を終え、姿を消した。しかし、あの光を受けた瞬間の輝きは、理人の中に残ったままだ。青春の喜びとは、きっとそういうものなのだろう。短くても、確かに生きていると感じられる一瞬。

 校門を出ると、風が少しだけあたたかかった。理人は空を見上げ、静かに歩き出した。春はもう、始まっている。

愛妻にチューリップを贈る日

1月31日はチューリップを贈る日です

1月31日はチューリップを贈る日
花屋のチューリップ

チューリップを贈る日は、2019年に富山県砺波市(となみし)のとなみ野農業協同組合砺波切花研究会が制定しました。この日付は、数字の「1をアルファベットのI(あい⇒愛)」と見て、31を「3と1で(さい⇒妻)」と読んで1月31日としたそうです。またこの日は、大切なパートナーである愛妻にチューリップを贈って欲しいとの思いが込められています。

砺波市のチューリップ切花

砺波市のチューリップ

チューリップ切花を専門に出荷しているのは、3人の生産者からなる砺波切花研究会です。生産量は多くありませんが、同研究会はワンシーズンだけで八重咲やフリンジ咲など珍しい品種、50品種以上を栽培しています。これらは、色や形、長さなどが種類ごとに異なり、チューリップだけで花束を作れることが最大の魅力だといわれています。

富山県のチューリップの歴史

チューリップのつぼみ

初めて富山県でチューリップ栽培を開始したのは1918年で、砺波市(旧・東砺波郡庄下村)の水野 豊造(みずのぶんぞう)氏たちでした。 その当時、水稲単作地帯で小規模の農家が多く、冬になると積雪のある寒冷地帯でした。そのため、冬季間の就労機会も少なくて農家経営は厳しく、特に水田を有効活用できる農業所得を確保できる作物の導入が求められていたそうです。

チューリップの球根が高額で売買

色とりどりのチューリップ

水野豊造氏もそれらの園芸作物を試作し、その中で最初は10球ほどを取り寄せ試作していたチューリップ球根を切花として販売しました。それが当時はまだ日本では珍しい草花だったことから高値で売れました。更に球根の販売も試みて、種苗商が高く買い取ってくれたことを契機に本格的なチューリップ球根の栽培に取り組み始めたといわれます。その後の水野氏は球根栽培に工夫を重ね、地区内でも広く栽培を働きかけ、1924年には13人の仲間と「庄下球根花卉実行組合」を起ち上げています。

花言葉は「思いやり」

赤いチューリップと黄色、紫のチューリップ

チューリップの花言葉は「思いやり」です。そして、赤色のチューリップの花言葉は「真実の愛」、「愛の告白」。他にもピンク色は「誠実な愛」、黄色は「名声」、紫色は「永遠の愛」、白色は「純粋」となっています。まさにこの記念日の「愛妻にチューリップを贈る」にふさわしい言葉です。結婚した夫婦や恋人に対してだけではなく、家族や信頼できる親友との絆を深めるため、それぞれ状況にあった色のチューリップを故郷や友人などに届けてみてください。


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1月30日、2月2日の誕生花「ムスカリ」

「ムスカリ」

ムスカリ(Muscari)は、小さなブドウのような花を密集させて咲かせる可愛らしい球根植物です。春になると鮮やかな青や紫、白などの花を咲かせ、庭や鉢植えでよく楽しまれます。

ムスカリについて

科名:キジカクシ科(ヒヤシンス科)ムスカリ属
原産地:地中海沿岸、西アジア
開花時期:3月~5月(春)
花色:青、紫、白、ピンク、黄色など

ムスカリの育て方

  1. 日当たり・環境:
    日当たりの良い場所が理想。半日陰でも育ちます。
  2. 水やり:
    土が乾いたら適度に。乾燥には比較的強いです。
  3. 植え付け時期:
    秋(9月~11月頃)に球根を植え、春に開花。
  4. 増やし方:
    球根が自然に分球するため、植えっぱなしでも増えていきます。

ムスカリはナチュラルガーデンや寄せ植えにもぴったりな花で、他の春の花と組み合わせると一層華やかになります。花言葉とともに、大切な人への贈り物にも素敵ですね。

花言葉:「黙っていても通じる私の心」

ボケの花は、派手すぎず控えめながらもどこか心を惹きつける独特の美しさを持っています。その姿が、自然体でありながらも魅力にあふれる人を連想させることから、「魅力的な人」という花言葉が付けられたと考えられます。

また、ボケの花は寒い時期から咲き始めることがあり、厳しい環境の中でも美しく花開くその姿が、人々の心を打つことも理由の一つかもしれません。人気があります。


「ムスカリの囁き」

春の風がそっと頬を撫でる朝、千夏は庭の片隅にしゃがみ込み、小さな青紫の花を見つめていた。ムスカリ。まるで葡萄のような可愛らしい花が、ひっそりと静かに咲いている。

「黙っていても通じる私の心、か……」

彼女はそっとつぶやいた。ムスカリの花言葉を知ったのは、祖母が生前、庭仕事をしながら話してくれたからだった。

『言葉にしなくても、気持ちはちゃんと伝わるものよ。特に大切な人にはね』

祖母の穏やかな笑顔を思い出し、千夏は鼻の奥がつんとするのを感じた。ちょうど一年前、祖母は静かに息を引き取った。幼いころからいつもそばにいてくれたのに、最後の最後まで「ありがとう」の一言をちゃんと言えなかったことが悔やまれた。

「おばあちゃんに、伝わってたのかな……」

ふと、風が吹き抜ける。ムスカリがそよぎ、まるで何かを伝えるように揺れた。

「うん、きっと伝わってるよ」

背後から聞こえた優しい声に、千夏は振り向いた。そこには幼なじみの悠斗が立っていた。

「悠斗……」

「千夏はさ、昔から言葉にするのが苦手だったけど、ちゃんと伝わってるよ。俺にも、おばあちゃんにも」

彼の言葉に千夏は思わず目を伏せ、ムスカリの花を見つめた。

「……ありがとう」

おからスイーツの日

1月30日はおからのお菓子の日

1月30日はおからのお菓子の日

おからのお菓子の日は、大麦に関する食品の製造・販売などを行う株式会社大麦工房ロアが制定しました。この日付の由来は「ソフラボン⇒1」「大豆ポニン⇒3」「リゴ糖⇒0」を並べると語呂合わせで1月30日になるからとされています。「おから」は美容や健康、便秘改善などにも良いとされるイソフラボン、大豆サポニン、大豆オリゴ糖が含まれ、その「おから」を原料としたお菓子を多くの人に食べてもらうことが目的としています。

おから

おからパウダー

大豆から豆腐を製造する際、茹でてすりつぶした大豆を絞ってできるものが豆乳で、その残ったかすを「おから」呼びます。日本や中国、韓国などの東アジア一帯では、昔から豆腐を食べる文化や習慣のあり、なじみが深い食べ物です。この豆腐、食物繊維を多く含んでいて栄養素が高いことで知られています。

豆腐、豆乳、おから

大豆

大豆を茹でて、すりつぶして搾り汁である豆乳に「にがり」を加えて固めると豆腐できます。その絞り出すのに使用した布などの中に残るのがおからと呼ばれるものです。このおからは、昔ながらの呼び名で『卯の花』と呼ばれることがあります。これは、レシピ本や食品売り場などで普通、食材は「おから」、煮物として調理された物は「卯の花」と使い分けられているのが一般的です。

おからに含まれる栄養素

卯の花

おからに含まれる栄養は、豆乳や豆腐にも豊富に含まれる「たんぱく質」や「食物繊維」、「マグネシウム」、「カルシウム」、「ビタミンB2」などです。また炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素がバランスよく含まれた食材というのも特徴の一つです。

食物繊維は特に多く含まれる

おから

栄養の中で特に優れているのは、食物繊維の量であり、その量は100g中11.5g含まれます。この数値は野菜のゴボウと比べても食物繊維が約2倍多く含まれています。また、おからの食物繊維はセルロースといわれる水に溶けないタイプで不溶性食物繊維で、便秘の解消に効果的であり、大腸ガンの予防にもつながるそうです。

おからは大豆製品と同じでカルシウムやたんぱく質も豊富

おからスイーツとおからパウダー

おからは、元々大豆に含まれるカルシウムがそのまま残っており、他の大豆でできた製品と同じようにたんぱく質が豊富です。また、大豆に含まれる炭水化物も腸内の健康維持に大きな貢献をしていて、その炭水化物に含まれるオリゴ糖が、腸内の善玉菌のえさになり、腸内環境を整えてくれるそうです。

おからスイーツを作って、ヘルシーおやつ

おから揚げ

普通おやつといえば、糖分やカロリーが多く、栄養価が比較的に少ないというのが当たり前です。フルーツも栄養がたくさんありますが、食べ過ぎると糖分が多くなるために体に良くないと思います。しかし、おからのカロリーは100gあたり111kcalの糖質は2.3gで、ご飯のカロリーは100gあたり168kcalの糖質は36.8gです。また、大豆に豊富な栄養素が含まれ、その絞り汁の豆乳もケーキなどのレシピがありますが、栄養素が少なくなります。そのため、おからは豆腐に比べて安価で癖がない食材であり、おかずはもちろんですが、おからスイーツとしても幅広く利用できるスーパーフードともいえるでしょう。


「おからのお菓子の日」に関するツイート集

2025年の投稿

2024年の投稿

1月30日の誕生花「タイツリソウ」

「タイツリソウ」

基本情報

  • 和名:タイツリソウ(鯛釣草)
  • 別名:ケマンソウ(華鬘草)、ブリーディングハート
  • 学名:Lamprocapnos spectabilis
  • 科名/属名:ケマンソウ科/ケマンソウ属
  • 原産地:中国東北部(黒竜江省)から朝鮮半島
  • 開花時期:4月〜5月頃
  • 草丈:30〜80cm程度
  • 花色:ピンク、白など

タイツリソウについて

特徴

  • ハート形の花が連なって咲き、弓なりに垂れ下がる独特の姿をもつ
  • 花の先端から小さな白い突起が垂れ、雫や涙のように見える
  • 茎がしなやかで、風に揺れる姿が繊細な印象を与える
  • 葉は柔らかく、切れ込みのある淡い緑色
  • 見た目の愛らしさとは対照的に、やや儚さを感じさせる雰囲気をもつ


花言葉:「恋心」

由来

  • ハート形の花姿が、胸に秘めた想いそのものを象徴していると考えられたため
  • 花が下向きに咲く様子が、表に出せない恋心や内に秘めた感情を連想させた
  • 連なって咲く花が、募っていく想い・連続する感情の揺れを思わせた
  • 先端の白い部分が、恋によるときめきや切なさの「涙」に見えたことから
  • 可憐で壊れやすそうな姿が、始まったばかりの繊細な恋の象徴として語られるようになった


「胸に下がる、小さな心」

 春の終わり、校舎裏の花壇には誰に教えられたわけでもなく、タイツリソウが咲いていた。淡いピンクの花が弓なりの茎に連なり、どれも少しだけうつむいている。その形が、どうしようもなく心臓に似ていることに、真帆は気づいてから、足を止めずにはいられなくなった。

高校三年の春。進路や将来の話題が日常に溶け込む中で、真帆の胸に芽生えた想いは、どこにも提出できないまま、静かに膨らんでいた。相手は同じクラスの航平。よく笑い、誰にでも分け隔てなく接する彼は、特別な言葉を投げかけたわけではない。それでも、ふと視線が合った瞬間や、隣の席でノートを覗き込む距離に、真帆の心は確かに揺れた。

けれど、その想いを口にする勇気はなかった。好きだと伝えた瞬間、今の関係が壊れてしまう気がしてならなかったからだ。だから真帆は、毎朝花壇の前に立ち、下向きに咲くタイツリソウを眺めた。まるで、自分の心を代わりに抱えてくれているように思えた。

花は一つひとつが独立しているのに、茎に沿って連なって咲いている。ひとつの想いが、また次の想いを呼び、止めどなく続いていく。その姿は、航平を想う気持ちが日々積み重なっていく自分自身と重なった。どうしても消せない感情。けれど、表に出すこともできない感情。

ある日の放課後、風が吹き、花壇のタイツリソウが一斉に揺れた。花の先端にある白い小さな突起が、雫のように揺れる。それはまるで、恋が生むときめきと切なさが、静かに零れ落ちそうになっているようだった。真帆は胸を押さえ、息を整えた。好きでいるだけで、こんなにも心が満たされ、同時に苦しくなるのかと、初めて知った。

「この花、かわいいよね」

背後から声がして、真帆は驚いて振り返った。航平だった。彼は花壇を覗き込み、無邪気に笑う。

「ハートみたいでさ。なんか、守りたくなる」

その言葉に、真帆の胸が強く脈打った。彼が何気なく放った一言は、真帆の心の奥にそっと触れた。恋心は、必ずしも伝え合うことで完成するものではないのかもしれない。想うだけで、確かに存在する。壊れやすく、可憐で、それでも本物の感情。

その日から真帆は、少しだけ変わった。想いを無理に隠そうとするのをやめた。告白はしない。それでも、笑顔で話し、目を逸らさず、同じ時間を大切にする。タイツリソウのように、うつむきながらも、確かに咲き続ける恋でいいと思えたからだ。

花壇の花はやがて季節とともに姿を消すだろう。それでも、胸に宿ったこの恋心は、簡単には消えない。始まったばかりの、繊細で未完成な想い。それこそが、今の真帆にとって、何よりも確かな「恋」だった。

タイツリソウは今日も静かに揺れている。誰にも見せつけることなく、けれど確かに、そこに心を下げながら。