6月19日の誕生花「イキシア」

「イキシア」

基本情報

  • 学名Ixia(イキシア属)
  • 和名:槍水仙(ヤリズイセン)
  • 分布・原産地:南アフリカ・ケープ地方(フィンボス地帯)に40〜50種の野生種あり、現在は交配種が50種以上栽培されている
  • 科名:アヤメ科(Iridaceae)
  • 球根(実際はコルム):チョコキス型の小さな球根で、毎年分球し増え

イキシアについて

特徴

  • 姿・草丈:針金のような細く強い茎に、20〜数十輪の星型花を密集して咲かせ、草丈は30〜60 cm程度。スリムかつ存在感抜群。
  • 花色:赤・ピンク・黄色・オレンジ・白・青など多彩で、中央に濃い色の模様(ブロッチ)が入るものもあり。
  • 開閉性:日中に花が大きく開き、夜間や雨天時には閉じる性質。
  • 香り・誘客性:ほんのり香りがあり、ミツバチなどの虫が訪れることも多い。
  • 育てやすさ:乾燥・寒さにやや弱いが、日当たりと水はけの良い場所なら初心者でも栽培可能。鉢植えや地植え、切り花にも最適。

花言葉:「君を離さない」

イキシアの花言葉には「団結」「誇り高い」「秘めた恋」などがありますが、「君を離さない(離さない)」という言葉は、

  • 茎の先に一体となって密集咲きする姿が、離れない強い結びつきを象徴
  • 花が開くときにしっかりと寄り添い、束になって咲く様子から

といった花姿の印象が由来と考えられます。
つまり、その可憐ながら芯のある佇まいが、相手を強く思い続ける感情と重なるからこそ、「君を離さない」という深い想いを伝える花言葉につながっているのです。


「束ねた想い」

春の風がそっと頬をなでる朝、優は駅前の花屋で足を止めた。
 小さな鉢に植えられたイキシアが、凛と咲いている。細くしなやかな茎に、星のような花がいくつも寄り添っている。まるで、互いを離すまいと支え合っているかのようだった。

 「この花、好きなんですか?」

 不意に声がした。振り返ると、そこには明るいエプロン姿の店員が立っていた。年は自分と同じくらいか、少し下だろうか。茶色の髪をまとめたその人は、優しげな目でイキシアを見つめていた。

 「……ええ、なんだか惹かれてしまって」

 「イキシアって言うんです。花言葉、知ってますか?」

 「いえ……綺麗だなって思っただけで」

 「“君を離さない”って言うんですよ」

 優の胸がわずかに震えた。

 「そうなんですか……」

 「茎の先で、みんな一緒に咲いてるでしょう? すごく細いのに倒れない。それって、強く結びついてるからだと思うんです」

 彼女の言葉は、なぜか優の胸の奥にじんわりと染みた。

 会社を辞めて、もう三ヶ月になる。
 何をしたいのか、自分がどう生きたいのか、それすら分からなくなっていた。東京での生活に疲れ、実家に戻ったのは、逃げだったかもしれない。けれど、あの花屋の前を通るたびに、少しだけ足が止まるようになった。

 やがて自然と、花屋に立ち寄ることが増えた。

 名前は美咲(みさき)というらしい。いつも花に囲まれていて、話すと不思議と気持ちがやわらぐ。優は、徐々に彼女との時間が心の支えになっていることに気づいた。

 ある日、美咲が言った。

 「イキシア、今年はもうすぐ終わっちゃうんです」

 「そうなんですか」

 「でも来年も咲きますよ。ちゃんと手入れすれば、必ずまた……」

 その言葉が、まるで約束のように聞こえた。

 優はイキシアの鉢をひとつ買って帰った。ベランダに置き、朝と夕方に水をやるのが習慣になった。細い茎が倒れないように添え木をして、花たちが寄り添って咲く姿を何度も眺めた。

 あるとき、美咲にぽつりと打ち明けた。

 「東京で、何かを築きたかったんです。でも、全部うまくいかなくて……怖くなって、戻ってきました」

 美咲は黙って頷いた。

 「わたしも、何度も諦めかけました。でもね、イキシアって、風が吹いても倒れないんです。あんなに細いのに。束になって咲くから、支え合えるんですよ」

 優の目に、熱いものがこみ上げた。

 その春の終わり、優はもう一度挑戦する決意を固めた。
 今度は、独りで無理に戦うのではなく、誰かと支え合いながら進もうと。あの花のように。

 東京へ戻る前日、優は一通の手紙と、咲き終わったイキシアの球根を美咲に預けた。

 《来年また、花が咲く頃、戻ってきます。君を離さない、その言葉の意味を、今度は伝えたいから。》

 風に揺れる鉢の中、細い茎の記憶が、そっと息づいていた。

ペパーミントの日

6月20日はペパーミントの日です

6月20日はペパーミントの日

ペパーミントの一種の「ハッカ」は、6月の北海道の爽やかさがそのものであり、その日付の20日は「はっか(20日)」と読む語呂合わせから、ハッカ(ペパーミント)が特産品である北海道北見市まちづくり研究会が1987年にこの日を記念日として制定しました。

ペパーミント

ペパーミント

ペパーミントは、ミントの代表的な品種です。そして、スペアミントとウォーターミントが交配した品種であり、他の種類のミントと比較して葉が尖っていて、葉の色は濃い緑色をしています。また、花は夏から秋にかけ、ピンクや紫色していて小さく茎先に咲かせます。メントールの含有量がスペアミントよりも高く、辛みが強いというのが特徴です。

ペパーミントの使用例

ペパーミントを使った料理

ペパーミントは、料理やお茶に使われるだけでなく、ガムや歯磨き粉などの生活用品の香料に利用されます。ちなみに名前の由来は、ピリッとした香りがコショウ(pepper)を連想させるためにこの名称が付けられたといわれています。

ペッパーミントとスペアミント、香りの比較

ペパーミントとスペアミントの違い

まず、「ペパーミント」の香りの素となっているのは、「l(エル)-メントール」であり、和種のミント(ハッカ)にも多く含まれる成分です。爽快でスーとする感覚は、日本人にもなじみがあって日本で販売されるガムや歯磨き粉は、このペパーミントベースのものが主流だそうです。

次に「スペアミント」の香りですが、「l-カルボン」という成分が主体で、スーっとする感覚は控えめで、ハーブ特有の香りが料理に合うようです。そのことから、欧米では料理に使用する際は、別名「ラムミント」とも呼ばれ、そのスペアミントが定番とされるそうです。イギリスの伝統的なラム肉料理では、スペアミントの葉に砂糖、酢などを加えてつくる甘いミントソースが欠かさないそうです。

ペパーミントの効能

ペパーミントの効能

ペパーミントは、食べ過ぎや飲みすぎなどによって胃の調子が悪くなった時、消化を助ける働きがあります。「腹痛」や「胸焼け」、「胃けいれん」などの症状を緩和するといわれます。さらに、ペパーミントは鎮静効果あって、精神的な緊張を和らげると共にイライラを沈めるなど、リラックス効果があるとされます。ペパーミントは昔から、無気力や抑うつを改善できるとされ、精神安定化作用もあって神経症などにも利用されてきたそうです。

他にも効能・効果がいくつかあり、それは「偏頭痛やその時に伴うむかつきも癒す」「麻痺作用や抗菌作用があり、虫歯や歯痛などで発生する痛みを緩和する」「乗り物酔いや吐き気の予防」「げっぷが出やすくなる」「不眠を解消する」などが期待されているそうです。

暑さ対策をペパーミントで

暑さ対策をペパーミントで、ミントアロマ

6月といば、夏本番に向けて暑さが徐々に厳しくなっていく時期です。この暑さで多くの人が、自律神経の乱れによる影響で「胃もたれ」や「食欲不振」、「体のだるさ」などの不調を引き起こします。これを予防するのに最適なアロマが、ペパーミントといわれていてます。

ミント系の香りから出るヒンヤリ感が、「体感温度を4度下げてくれる」というデータがあるそうです!コロナ禍でのマスク生活も、「ペパーミント」効果を上手に活用し、熱中症コロナウイルス感染対策を行いながら、この夏を元気に乗り切りましょう!


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6月18日の誕生花「タチアオイ」

「タチアオイ」

Katharina N.によるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Alcea rosea
  • 英名:Hollyhock(ホリーホック)
  • 科名/属名:アオイ科/ビロードアオイ属
  • 原産地:地中海沿岸西部地域からアジア
  • 開花時期:6月〜8月(初夏〜夏)
  • 草丈:1〜3メートル(高いものでは3メートル以上にも)
  • 分類:多年草または二年草(園芸では一年草扱いされることも)

タチアオイについて

Jochen SchaftによるPixabayからの画像

特徴

  • 背が高くまっすぐに伸びる茎の先に、円錐状に多数の花を咲かせるのが特徴。
  • 花の色は非常に多様で、赤・ピンク・白・黄色・紫・黒に近い深紅などがある。
  • 一番下のつぼみから順に咲き、花がてっぺんまで咲き終わると梅雨が明けるという言い伝えがある。
  • 日本では江戸時代から栽培されている伝統的な園芸植物。

花言葉:「野望」

NoName_13によるPixabayからの画像

タチアオイの花言葉には複数ありますが、その中でも特に有名なのが「野望」です。この花言葉の由来には以下のような理由が考えられています:

◎ 背の高い成長姿勢

  • タチアオイはまっすぐ天に向かって1メートル〜3メートル近くも伸びるため、その姿が「上昇志向」「目標に向かって突き進む野心」を連想させます。

◎ 段階的に上に咲いていく花

  • 下から順に花を咲かせ、徐々に上を目指して開花していく姿は、段階を踏んで目標に到達しようとする努力や「野望」にも見えます。

◎ 古来の象徴的イメージ

  • 中世ヨーロッパでは神聖な植物とされ、聖職者の庭や修道院に植えられていたこともあり、「理想の実現を求める精神」といった解釈もあります。

「花は野望の先に咲く」

祖父の庭には、毎年、初夏になるとタチアオイが咲き誇った。背の高い茎を天に向けてまっすぐに伸ばし、下から上へと段階的に花を咲かせていくその姿は、まるで何かを目指して這い上がる人のように見えた。

 祖父は若いころ、地方の寒村から出て、苦労の末に小さな製材所を立ち上げた。学もなく、後ろ盾もなく、それでも「町で一番の工場を作るんだ」と言い続けていたらしい。

 「周りはバカにしたさ。だがな、あの花を見てみろ。誰が咲けって言った? 誰も言っちゃいない。それでも、天を目指すように咲くだろう」

 祖父の話を聞きながら、私は子どもながらにそのタチアオイに恐れにも似た敬意を抱いた。綺麗で、でも力強くて、決して甘くない花だった。

 年月が過ぎ、祖父は亡くなり、私は東京で会社勤めをするようになった。忙しい日々に追われ、祖父の言葉も花の姿も、記憶の片隅に埋もれていった。

 ある年の初夏、ふと田舎の家を訪れると、庭の一角にタチアオイが咲いていた。世話する人もいないはずなのに、まるで意志をもって咲いているかのようだった。

ZEBULON72によるPixabayからの画像

 「花は下から順に咲くんだ。てっぺんまで咲いたら、梅雨が明ける」

 そう祖父は言っていた。私はその花のてっぺんを見上げ、ふと胸の奥に疼くものを感じた。

 会社では昇進の話が出ていた。でも、そのためには部下を切り捨て、上の意向に逆らわず、己を押し殺していかねばならなかった。自分が何のために働いているのか、何を目指していたのか、わからなくなっていた。

 「上に咲くには、下を踏まなきゃいけないんですかね」

 私はつぶやいた。すると、風に揺れるタチアオイの花がカサリと音を立てた。

 いいや、違う。段階を踏んで、一歩ずつ、咲いていく。足元をしっかりと広げて、陽を浴びて、水を吸って、ようやく上へと届く。

Marzena P.によるPixabayからの画像

 それが、祖父の言う「野望」だったのではないかと思った。周囲の雑音に負けず、自分の信じた理想に向かって伸びること。それは誰かを踏み台にすることでも、無理に自分を押し殺すことでもない。

 私はその年、昇進の話を断った。そして、同僚と一緒に小さな起業をした。やりたいことがあった。作りたいものがあった。それは無謀かもしれない。でも、あの花のように、ゆっくりでも、上を目指して咲いてみようと思ったのだ。

 数年後、庭にタチアオイの苗を植えた。まだ背は低く、花も咲かない。でもいい。あの花が咲くまで、私は上を見続けていたい。


【あとがき】
この短編は、タチアオイの「野望」という花言葉の背景にある

  • 上へ向かう成長姿勢
  • 段階的な開花
  • 理想を求める力

    を、主人公の人生と重ね合わせて描いた物語です。

ベースボール記念日

6月19日はベースボール記念日です

6月19日はベースボール記念日

1846年6月19日、史上初となる公式記録に残る野球の試合が、ニュージャージー州エリシアン球場で行われています。このことは、現在行われている野球の基本となっている、3アウトや3ストライクなどのルールで試合が行われて近代野球が誕生しています。また、このルールの制定した人はアメリカ消防団員の「アレキサンダー・カートライト」によるものだそうです。そしてその後、1873年になると日本で初めて野球が入ってきました。

野球誕生と「アレクサンダー・カートライト」

野球誕生と「アレクサンダー・カートライト」

1845年、ニューヨーク在住の「アレクサンダー・カートライト」は、ボランティアの消防隊メンバーたちで「ニッカボッカー・クラブ」という組織を立ち上げます。そして、親睦のために球技を楽しんだそうです。その時の球技は、クリケットを元にした「タウンボール」というスポーツを改良されたものだったそうです。そして、それが後に「野球」(Bseball)という名称が付けられたといわれています。

「タウンボール」

「タウンボール」

「タウンボール」は当時、女性たちが愉しむスポーツだったということで、ボールの投げ方も現在のソフトボールに近い投法だったようです。また、この時はルールが無いに等しく、単に親睦のために愉しむだけの遊びだったといわれています。それを「カートライト」が、ルールをきちんと定めて決め、しっかりゲームとして勝敗を決まるスポーツへと進化させています。そのルールは、ゲームを楽しみながら改良を重ね、時間をかけて生み出したものだといわれています。

ルール

野球のルール

最初は、ボールをランナーにぶつけてアウトだったのが、打ったボールをキャッチしてベースで待つ選手にボールを投げて渡せばアウトとしたり、また塁と塁の距離を統一したり、攻守交替のアウトカウントはいくつにするかを決めたりしていました。他にも、ボールやバットはどんな素材で大きさはどう規定するかなど色々と決められていきます。

野球の普及と不正

野球の普及と不正

この時点で、ルールも決まってスコアブックまで誕生し、ほぼ現在の野球に近いものになっていたそうです。ですが、それを楽しむのは経済的に余裕のある中流階級以上の人たちがほとんど・・・。その後、野球を誕生させた「カートライト」は、この時期に野球の歴史から消えています。

実はその彼、1849年に全米で一大ブームになっていたゴールドラッシュの波に乗り、カリフォルニアに移住していました。そして、彼に代わり野球を普及させたのが、新聞記者の「ヘンリー・チャドウィック」という人物です。

ヘンリー・チャドウィック

現在では、彼こそが真の「野球の父」とアメリカでは呼ばれているようです。その最大の理由は、「野球界の不正と常に戦い続ける」ことで、現在までの野球がスポーツとしての威厳を保つようになったといわれているからです。それがいつの日か、アメリカの国技といわれることになりました。野球の普及は、野球の不正を正す歴史であり、そこで登場するのがそういった野球界の不正の中心となったニューヨークの裏社会でもあるようです。

健全なスポーツだからこそ、心から楽しめる

健全なスポーツだからこそ、心から楽しめる

心から楽しめるスポーツの代表格といえば、高校や中学の野球やバレー、サッカーです。もちろん、母国や母校に対する特別な感情で応援することも素晴らしいと思います。しかし、プロプレイヤーと違って彼らは、スポンサーのバックアップや報酬もなく、ただ目標を達成するためにがむしゃらに練習をしています。

そういった彼らのスポーツ大会は、その「熱心さ」から涙を浮かべる人もいるほど選手と一緒になって応援したくなりますよね。今年2021年、東京でオリンピックが開催されようとしています。そして、コロナ感染拡大のリスクにさらされながらも、粛々と開催実現にに向かって準備されています。こういう時期だからこそ、この五輪開催の目的と意味を改めて考えてみるのもありだと思います。


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6月17日の誕生花「リアトリス」

「リアトリス」

Teodor BuhlによるPixabayからの画像

基本情報

  • 和名:ユリアザミ(ユーリアザミ)
  • 学名Liatris spicata
  • 科名:キク科(Asteraceae)
  • 属名:リアトリス属(Liatris)
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:6月~9月
  • 草丈:60cm〜120cm
  • 花色:紫、ピンク、白など

リアトリスについて

Teodor BuhlによるPixabayからの画像

特徴

  • 花の形:花穂状(縦に長く伸びた穂状)で、細かい花が密集して咲く。上から下に向かって咲き進むという珍しい咲き方をする。
  • 茎・葉:茎は直立し、細長い葉が茎に沿って密につく。
  • 耐寒性・耐暑性:どちらも強く、初心者にも育てやすい。
  • 用途:花壇や切り花、ドライフラワーに人気。

花言葉:「燃える思い」

DonnawettaによるPixabayからの画像

リアトリスの花言葉のひとつが 「燃える思い」 です。この由来は主に以下の要素からきています:

  1. 花の形と咲き方
    • 真っすぐに天を突くような花穂の姿が、まるで炎が燃え上がるように見えるため。
    • 鮮やかな紫やピンク色が情熱を感じさせる。
  2. 咲き方の特徴
    • 上から下へと徐々に咲いていく様子が、内に秘めた感情が徐々に表に現れていく「燃え上がる思い」のように映る。
  3. 多年草としての生命力
    • 強い生命力で毎年咲き続ける様子が、一途で熱い想いを象徴しているとされる。

「燃える思い」

Justice KによるPixabayからの画像

夏の風が、古びた駅舎のホームを通り抜けていく。セミの鳴き声が響く中、陽子は一輪のリアトリスを握りしめて立っていた。

 紫色の花穂は、まるで空へ向かって燃え上がる炎のようだった。
 それは、あの日彼が最後にくれた花――「リアトリスっていうんだ」と微笑んで渡してくれた、たった一輪の花。

 陽子が彼――拓真と出会ったのは、ちょうど二年前のこの駅だった。

 大学の夏休みに田舎の祖母の家へ向かう途中、乗り換えのために立ち寄ったこの無人駅。電車の遅延で時間を持て余していた陽子は、ベンチで本を読んでいた。そのとき、「それ、面白い?」と声をかけてきたのが拓真だった。

 見知らぬ土地、見知らぬ人。けれどその声はどこか懐かしく、安心感を与えてくれた。

 それから毎年の夏、陽子は祖母の家を訪れるたびに彼と会い、駅の近くの林道を一緒に歩いた。木漏れ日の差す小道、そしてリアトリスが咲く草原――そこがふたりの秘密の場所になった。

 リアトリスは、背の高い花で、紫の穂が空へと向かって一直線に伸びていた。

dferenceによるPixabayからの画像

 「ほら、上から順に咲くんだよ。不思議だよな。まるで……心が燃えてるみたいだ」

 彼がそう言ったのを今でもはっきりと覚えている。

 ある夏、彼は突然、東京に行くと言った。

 「夢を追いたい。花の研究がしたいんだ。園芸じゃなくて、生態の方に興味があるんだ」

 陽子はその言葉を応援した。でも心のどこかでわかっていた。あの草原で会う日は、もう戻ってこないかもしれないと。

 それでも、別れの日、彼は一輪のリアトリスを手渡してくれた。

 「これは俺の“燃える思い”だ。君に出会って、花の意味が変わったよ」

 その言葉に、陽子は泣いた。

 それから一年が経ち、陽子は彼からの手紙を待ち続けたが、返事はなかった。連絡先も変わり、消息もわからない。

 諦めかけていた今年の夏、祖母の家に届いた一通の封筒。差出人の欄には「T. K.」の文字とともに、東京の病院の名前が記されていた。

 封を切ると、そこには短いメッセージと、押し花になったリアトリスの花が一緒に入っていた。

 《最後までリアトリスのように、上を向いて咲いていたよ。君に出会えて、本当に幸せだった》

 拓真の姉からの手紙だった。

 陽子は涙をぬぐい、草原へと向かった。いつもの小道を抜けると、そこには今年もリアトリスが風に揺れて咲いていた。

 空に向かって、まっすぐに――まるで彼の想いそのもののように。

 陽子はそっと、持ってきた一輪のリアトリスを花畑に添えた。

 「燃える思い……ちゃんと、受け取ったよ」

 空の青さの中で、紫の花が静かに揺れていた。

国際寿司の日

6月18日は国際寿司の日です

6月18日は国際寿司の日

日本では11月1日を「すしの日」としていますが、今日は1961年に全国のすし組合で構成されている「全国すし商環境衛生同業組合連合会」(全国すし連)が制定した記念日となります。実際のところ、制定した団体や詳細は不明だといわれていますが、主に海外で祝われているようです。

海外のすし(Sushi)事情

海外で最近ブームの「Sushi」

我々日本人が昔から食べられているにぎり寿司と、海外で最近ブームとなって食されている「Sushi」は、見た目が味も大きく違うようです。しかし最近は、日本の寿司も洋風感が出てバリエーションを広げていて、新しい感覚の寿司もチラホラと見かけるようになっています。両者の味覚に関する感覚の差は微妙に縮まっているようですが、それでも伝統を重んじる古き日本人ファンが大半を占めているためまだまだといえます。

無形文化遺産の寿司

無形文化遺産の寿司

日本の無形文化遺産の一つといわれる、寿司の世界はまさに芸術の領域に入ります。100個の寿司を握ってそのシャリの米粒の数が全て同じなんてことは、普通の寿司職人の中では当たり前といわれるほど。そして、ネタはその日に市場へ行って吟味された旬の物が使われ、そのほとんどのメニューが生で調理されています。実際、香港のあるメディアは、日本を訪れたら寿司を食べてみるよう読者に向けて呼びかける記事を掲載していて、その勧める理由として「寿司は食べ物に見えないほど美しい」と伝えているようです。

世界で人気の「Sushi」

世界各地で人気の「Sushi」

世界各地で人気の「Sushi」は、日本人の感覚より庶民的なイメージへと変化しています。西洋人は、生ものを苦手な多いため、ネタが限定されて「鶏のささ身」や「ツナ缶」、「アボガド」や「カマボコ」などが人気を集めているそうです。また、箸を上手に使いこなせず、地域の習慣からにぎりを手づかみで食べるのを嫌うが人が多いことなどから、握りよりも軍艦巻きなどの巻きずしタイプを好む傾向があります。

日本の伝統が世界のファーストフード

世界の最新寿司

世界各国で食べられている寿司は、もはやハンバーガーやフライドチキンなどと同様、ファストフード感覚に変化しているような傾向を受けますが、これも納得できるような気がします。寿司職人は納得いかないでしょうが・・・。しかし、どんな形であれ和食の一つが世界的ブームになるということは、そこから日本を知ってもらい、コミュケーションを取るきっかけになるということで大変喜ばしいことだと思います。


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6月16日の誕生花「ナツツバキ」

「ナツツバキ」

基本情報

  • 和名:ナツツバキ(夏椿)
  • 学名Stewartia pseudocamellia
  • 科名:ツバキ科
  • 属名:ナツツバキ属
  • 原産地:本州、四国、九州、沖縄
  • 開花期:6月〜7月(初夏)
  • 樹高:10~12m
  • 別名:シャラノキ(沙羅の木)

ナツツバキについて

特徴


  • 白くて5弁の花を咲かせ、黄色の雄しべが中央に目立ちます。ツバキに似た花ですが、1日で散る「一日花」で、清涼感のあるたたずまいが魅力です。

  • 卵形で光沢のある葉。秋には黄〜赤に紅葉します。
  • 樹皮
    滑らかで斑模様があり、美しい灰褐色~赤褐色のまだら模様になります。
  • 耐寒性・耐陰性
    比較的寒さに強く、半日陰にも耐えるため、庭木や公園木として広く利用されます。

花言葉:「愛らしさ」

ナツツバキの花言葉「愛らしさ」は、以下のような特徴に由来しています:

  1. 清楚な美しさ
    純白の花びらに、黄金色の雄しべが映える清楚な姿は、控えめながら人の心を惹きつける可憐さを感じさせます。
  2. 一日花の儚さ
    朝に咲き、夕方には散ってしまう一日花であることが、「儚くも美しい」「可憐な存在」というイメージを生み、愛らしさにつながっています。
  3. 落ち方の上品さ
    散るときは花びらがバラバラではなく、花全体がポトリと落ちるため、静かで上品な印象があり、楚々とした愛らしさを感じさせます。

「ポトリと、夏椿」

六月の終わり、梅雨の合間の陽が差し込む朝だった。

祖母の家の庭先に、白くやわらかな花がひとつ、ふわりと咲いていた。ナツツバキ——祖母はそれを「シャラ」と呼んでいた。
「朝に咲いて、夕方にはもう落ちちゃうのよ」
そう言いながら、祖母はその花に手を合わせるようにそっと視線を向ける。

私は小学五年生の夏休みを、祖母の家で過ごしていた。両親の共働きで一人になる私を、毎年、優しく受け入れてくれる場所だった。
祖母の家の庭には、決まってその時期になると白い花が咲いた。その花が咲くと、「またこの夏が来たんだ」と思うのが、子どもの私なりの風物詩だった。

「シャラって、どうしてそんなにすぐに散るの?」
祖母に尋ねると、少し考えてから、柔らかい声で答えてくれた。

「それが、この花の生き方なのよ。咲くのは一日だけ。でも、誰よりもきれいに咲くの。だから、愛らしいのよね」

その言葉が不思議に胸に残っていた。
咲いて、散る。ただそれだけなのに、「誰よりもきれい」と言えるのはなぜだろう。子どもながらに、私はその意味を知りたくなった。

ある日、私は庭に座り込んで、ナツツバキの木をじっと見ていた。
陽の光を浴びて、白い花がひとつ、ふたつと咲いていた。朝露を受けて、ひんやりとした空気の中に、静かにたたずんでいた。

その日の午後、風が少しだけ吹いた。
その風に乗って、一輪の花がポトリと音もなく落ちた。
花びらがバラバラになることはなく、まるで手のひらをそっと閉じたような形のまま、静かに地面に横たわった。

私は思わず近寄って、その落ちた花を手に取った。
しっとりとした白い花びらはまだ香っていた。
「こんなにきれいなのに、もう終わりなんだ」
私はそう呟いて、少しだけ涙が出そうになった。

祖母がそっと肩に手を置いた。
「きれいに散るっていうのも、生き方なのよ」
「でも、もったいないよ。もっと咲いていてもいいのに」
「咲く時間が短いからこそ、私たちはその一瞬を愛おしく思えるのよ」

それからというもの、私は毎朝、ナツツバキを見上げるようになった。
その清楚な白さが、空の青と重なり、ただそこにあるだけで心を穏やかにした。

夏休みが終わる頃、ナツツバキの花もほとんど散っていた。
だけど、私はもうその姿を悲しいとは思わなかった。
咲くこと、散ること、それぞれに意味がある。
そしてそのどちらも、「愛らしさ」という言葉に包まれているのだと、幼いながらに思った。

秋に向かって葉を色づかせるナツツバキの木を見上げながら、私はふと、来年もまたこの場所で会えるだろうか、と願った。
そして、そのときはもっとこの花のように——
誰かの心に、そっと残るような「一日」を過ごせたらいい、と思った。

ポトリと落ちる白い花は、静かに私の胸の中で、生きていた。

砂漠化および干ばつと闘う国際デー

6月17日は砂漠化および干ばつと闘う国際デーです

6月17日は砂漠化および干ばつと闘う国際デー
砂漠化および干ばつと闘う国際デー

6月17日は、国連が制定した「砂漠化および干ばつと闘う国際デー」です。1994年6月17日に「国連砂漠化防止条約」(UNCCD)が採択されています。そしてこの日は、砂漠化と干ばつへの理解と関心を深め、砂漠化を防ぐ活動を呼びかけ、国際協力の必要性を改めて考える日です。

砂漠化

砂漠化

「砂漠化」とは、乾燥や半乾燥地域、半湿潤地域(乾燥度指数値が0.2∼0.5の地域)で、気候変動や人間活動など様々な原因により、植物の生育が難しくなる現象を言います。簡単に言うと、乾燥した地域で人が住むところや植物の生えているところが、気候変動や人的な活動によって不毛の大地になることです。逆にもともと人も住めず、植物が生えていない砂漠では、砂漠化現象は起こりません。

砂漠化で受ける影響は?

ゴーストタウン化

乾燥地域で住んでいる人達は、作物と家畜、日用品や薪炭材などを生態系に依存しています。しかし、土地の劣化により生態系が劣化していけば、結果的に人々の生活環境が悪化するのは当然のことでしょう。また、乾燥地域の短期・長期での気候の変化は、作物や飼料などの確保に直接影響する家畜の生産や、水の供給を不安定にします。一度乾燥地の生態系が崩れると元に戻すことは厳しく、農業生産性の低下に繋がり、貧困が加速していきます。

現在、多くのアフリカ諸国は、こういった深刻な干ばつを頻繁に受け、食糧の生産基盤である土地の劣化に直面し、住民が生存するために森林、水などの自然資源の過剰採取を行っています。結局、このことが更なる土地の土壌劣化を進ませるという悪循環になっています。

環境森林省の考え方と目標

地球の1/4が砂漠!?

人々の日常生活に必要な活動が原因とされる気候変動と土壌劣化は、天然資源の減少や砂漠化を引き起こします。環境森林省は、これらを防止するために適切な土地管理と環境保全の取組みが重要であり、それを通じて貧困を削減できると考えています。また政府は、2022年までに国土の10%を樹木で覆う取組みを掲げ、目標達成に向け郡政府との密な連携が望まれています。

具体的な取り組み例

地球環境を農業から立て直す

サヘル地域は、アフリカのサハラ砂漠の南端に位置し、深刻な砂漠化が進んでいます。この問題に取り組むため、いくつかの具体的な取り組みが行われています。

改良カマドの普及と農業技術指導:

熱効率が良く薪の消費量が少ない改良カマドの普及や、植林、米作などの農業技術の指導が行われています。

西アフリカの内陸国ニジェールは、サヘルと呼ばれるサハラ砂漠の南縁に位置し、国土の3分の2をサハラ砂漠が占めています。

独立行政法人国際協力機構

緑の壁プロジェクト:

アフリカの11か国が共同で、サハラ砂漠の南端に植林による「緑の壁」を築くプロジェクトが進行中です。この壁は地球温暖化の進行による砂漠化を防ぐために立ち上げられました。

アフリカに築かれる「緑の万里の長城(Great Green Wall)」。サハラ砂漠の拡大防止で大陸横断の植林帯。計画から10年で15%を達成(RIEF)

(一社)環境金融研究機構

特定非営利活動法人「緑のサヘル」:

この団体は、サヘルの土地を「緑の岸辺」に戻すために活動しています。森林分野における活動テーマとして、持続可能な緑化を推進しています。

サハラ砂漠を越えた南側、ここは、かつて久しぶりに緑を目にしたアラビアの商人たちによって、「岸辺(サヘル)」と呼ばれました。今、その「岸辺」では砂漠化が進み、人々の生活基盤が奪われています。砂漠化の進むサヘルの土地を、人々が生活を続けていくことの出来る「緑の岸辺」に戻すため、活動を行っています。特定非営利活動法人 緑のサヘル:URL http://sahelgreen.org/

公益財団法人 国際緑化推進センター

ブルキナファソ国タカバングゥ村

ブルキナファソ国タカバングゥ村では、近隣地域に伝わる様々な知識や技術とそのノウハウから砂漠化防止に有効なものをピックアップし、そこから視察やワークショップから、住民自身が選択した技術の移転を行い、それと同時に村の普及と定着を目指しています。

チャド共和国

チャド共和国では、「育苗や植林支援」「金属製の物や粘土製改良カマド普及」「大豆・稲作普及」「穀物備蓄支援」「共同井戸建設」などを行っているようです。また他にも、砂漠化する地域で生活する人々の生活環境改善を目指し、「専門家の派遣」「研修員の受け入れ」「講習会の開催」などを行っているところがあるそうです。

我々も同じ地球の住人

我々も同じ地球の住人

これまで、砂漠地域に住む人々の生活環境について紹介してきましたが、森林伐採よって気候変動を起こす温室効果ガス排出によるオゾン層の破壊も、砂漠化も地球規模の問題として直結していると言えます。現在100億人が地球で生活しています。それだからこそ、我々は他人事と捉えず、プラスチックごみの削減、水道水の節約など、まずは個人で可能なことから意識していくことが一番の近道だと考えます。


「砂漠化および干ばつと闘う国際デー」に関するツイート集

2025年の投稿

2024年の投稿

2023年以前の投稿

6月15日の誕生花「ムラサキツユクサ」

「ムラサキツユクサ」

Wolfgang ClaussenによるPixabayからの画像

基本情報

  • 和名:ムラサキツユクサ(紫露草)
  • 学名:Tradescantia × andersoniana
  • 英名:Spiderwort(スパイダーワート)
  • 科名:ツユクサ科(Commelinaceae)
  • 属名:ムラサキツユクサ属(Tradescantia)
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:5月~7月(10月~11月)
  • 花の色:紫、青紫、青など
  • 草丈:30〜70cm程度

ムラサキツユクサについて

Marie R.によるPixabayからの画像

特徴

  • 花の寿命が短い
    一つの花は朝に咲き、昼にはしぼんでしまうという特徴があります。ただし、株全体としては次々と花を咲かせ、数週間〜数ヶ月にわたって楽しめます。
  • 強健で育てやすい
    日向〜半日陰の場所でよく育ち、寒さにも比較的強いため、初心者にも育てやすい植物です。
  • 葉は細長く、やや光沢がある
    草丈の割に細長い葉を持ち、群生すると見ごたえがあります。
  • 染色体や細胞観察に使われる
    花粉母細胞の観察などに適しており、教育や研究用植物としても活用されます。

花言葉:「尊敬しているが恋愛ではない」

dae jeung kimによるPixabayからの画像

ムラサキツユクサの花言葉の中で特に有名なのが:

「尊敬しているが恋愛ではない」(Respectful, but not romantic)

この少し複雑な花言葉には、以下のような背景が考えられています。

1. 一日花の儚さと非恋愛性

ムラサキツユクサの花は非常に儚く、一日でしぼんでしまうため、恋愛のような情熱的で長く続く感情というよりも、「一瞬の美しさ」や「静かな敬意」といった感覚が連想されやすいです。

2. 慎ましさと控えめな美

華やかさはあまりなく、控えめで落ち着いた色合いと佇まいを持つことから、「敬意を払う存在」にはなっても、「恋に落ちる対象」ではないという印象を与えることがあります。

3. 文化的解釈

一部の日本や西洋の花言葉には「非恋愛的な好意」や「精神的なつながり」を表現するものがあり、ムラサキツユクサもそうした精神性や冷静な感情を象徴しているとされています。


■ その他の花言葉

  • 貴ぶべき思い出
  • ひとときの幸せ
  • 恋ではない愛(spiritual love)

「紫の約束」

dae jeung kimによるPixabayからの画像

梅雨の晴れ間、祖母の庭先に咲くムラサキツユクサが、朝の陽を受けて静かに揺れていた。薄紫の花びらは、今にも溶けてしまいそうなほど繊細で、一日限りの命を咲き誇るように見せていた。

高校最後の夏休み。私は東京の大学に進学することを決めていた。田舎のこの町を離れるのは少し寂しいけれど、未来に胸が躍ってもいた。

そんな朝、祖母の家の隣に住む和彦さんが、畑の帰りに声をかけてきた。

「今年も咲いたね、ムラサキツユクサ。すぐしぼんじゃうけど、朝だけの美しさってのもいいもんだよ。」

和彦さんは祖母より10歳ほど若く、昔は教師をしていた人だった。私は小学生の頃、よく彼に作文や読書感想文を見てもらっていた。話し方は柔らかくて、目が笑っていて、でもどこか距離を感じさせる人だった。

「和彦さん、花言葉って知ってます?」

「ん? ああ、“尊敬しているが恋愛ではない”、だっけ?」

「…ちょっと不思議ですよね。その言葉。」

彼は笑った。「不思議だけど、ある意味、一番人間らしい感情かもしれない。誰かを深く想うけど、それが恋とは限らない。敬意とか、憧れとか。そういうのも、ちゃんと愛の形だと思うよ。」

私は頷きながら、どこか胸が締めつけられるのを感じた。

Wolfgang ClaussenによるPixabayからの画像

和彦さんは、私の憧れだった。恋とかではない。でも、彼の言葉にいつも救われて、背中を押されてきた。大人になった今でも、彼の考え方や生き方が、私にとって一つの指標になっていた。

「大学に行ったら、たくさんの出会いがあると思う。でも、誰かを“尊敬する”って気持ちは、案外長く残るもんだよ。」

そう言って彼は、庭のムラサキツユクサをそっと一輪摘み、私に手渡した。

「この花、咲いたその日にしぼむけど、根は強いから、また翌朝咲く。自分の中にある“静かな想い”も、そういうもんかもしれないね。」

私は花を受け取り、深く息を吸った。紫の花は、淡く香り立つようだった。

その年の夏、私は東京へ旅立った。

何年か後、祖母が亡くなり、久しぶりにこの町へ戻ったとき、和彦さんはすでに引っ越していた。家の前には、今もムラサキツユクサが咲いていた。あの朝のように、静かに、誇らしく。

私は花に手を伸ばし、小さな声で言った。

「今でも、あの言葉、覚えています。“尊敬しているが恋愛ではない”。たぶんそれは、ずっと私の中で咲き続けてる。」

花は何も答えなかったけれど、朝露に濡れたその紫が、優しく私の心を包んだ気がした。

アフリカの子どもの日

6月16日はアフリカの子どもの日です

6月16日はアフリカの子どもの日

この日は、教育のために立ち上がった多くの学生たちのことを忘れないため、アフリカの子供たちについて考える日です。そして、南アフリカではこの日を「青年の日」として祝日にもなっているそうです。1991年には、アフリカ統一機構(現在のアフリカ連合)が「アフリカの子どもの日」として制定しています。

教育のためにデモ行進

ソウェト蜂起

1976年6月16日、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ郊外に位置するソウェト地区で、教育の質の向上と自国語で教育を受けるという権利を主張するために、黒人学生たちによるデモ行進を行ったそうです。そして次第に暴動に発展して「ソウェト蜂起」が起こりました。

当時、アパルトヘイト政策(極度の人種差別の政策)を行っていた南アフリカ政府は、学校でゲルマン語派のアフリカーンス語の授業の導入を決定しています。アフリカーンス語を「白人支配の象徴」と見なす黒人と主に学生たちの間で激しい反発が起こり、数週間に亘って黒人学生が授業をボイコットする事態に発展しています。

アパルトヘイトとは

アパルトヘイト(apartheid)は、南アフリカ連邦および、南アフリカ共和国で1948年~1994年まで施行されていた人種隔離政策のことです。この政策は、白人を優遇して有色人種に対し、政治的または経済的な差別を行っていました。具体的には、有色人種には選挙権がなかったり、移住区間が完全に区別されていたようです。

アパルトヘイトは、アフリカーンス語で「分離、隔離」を意味していてます。この政策の目的は、少数の白人の政治的・経済的特権を維持するため、黒人をはじめ白人以外の人種の権利や自由を奪い、様々な制限を与えました。

子供たちへの無差別な弾圧

子供たちへの無差別な弾圧

これらの暴動に参加した子供たちは、軍隊から無差別に銃撃を受けるなどの抗議活動が2週間も続きました。そしてその結果、100人以上が殺害されて1000人以上が負傷する事態となっています。この事が、反アパルトヘイト闘争の転換点となった出来事ともいわれているそうです。

日本からの支援活動

日本からの支援活動

2019年10月に日本政府の支援により「万人のための教育」プログラムの一環として「学校の修復作業」、また日本ユニセフ協会は、「インフラの復旧」と「学校の塗装」「机や椅子、ホワイトボード」「水と燃料タンク」の提供を行っています。さらには、「校庭の修復やフェンスの設置」、障がいのある子供のために「トイレの修復と改善」、そして教員研修用の教室の整備も行われたようです。

このように、日本でも1993年から毎年、「熊本県ユニセフ協会」(日本ユニセフ協会協定地域組織)が「アフリカ子どもの日」にイベントも開催されています。そして我々個人も、この日をきっかけに人種差別に限らず、身近な人権問題について考えることも大切な第一歩に繋がって行くのではないでしょうか!


「アフリカの子どもの日」に関するツイート集

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