9月26日、29日の誕生花「ポーチュラカ」

「ポーチュラカ」

基本情報

  • 分類:スベリヒユ科スベリヒユ属
  • 原産地:南北アメリカを中心に熱帯~温帯に広く分布
  • 学名Portulaca
  • 和名:ハナスベリヒユ(花滑莧)
  • 開花期:初夏~秋(5月~10月頃)
  • 草丈:10~20cmほどの這うように広がる多年草(日本では冬越しが難しいため一年草扱いが多い)

ポーチュラカについて

特徴

  1. 太陽に咲く花
    日当たりが良いときにだけパッと花を開き、曇りや夕方には閉じてしまいます。まるで太陽と遊ぶように咲く姿が魅力的です。
  2. 多彩な花色
    赤・ピンク・オレンジ・黄色・白などカラフルで鮮やかな花色が揃い、夏の庭や花壇を明るく彩ります。
  3. 乾燥に強い
    多肉質の葉や茎に水分を蓄える性質を持ち、真夏の直射日光にも耐える強健さがあります。
  4. 地を覆うように広がる
    横に這うように茎を伸ばすため、グランドカバーや鉢植え、ハンギングにも向いています。

花言葉:「無邪気」

由来

ポーチュラカに「無邪気」という花言葉が与えられた背景には、以下のような特徴が関わっています。

  • 太陽の下でだけ咲く素直さ
    日が出ると元気いっぱいに花を開き、光がなくなるとしおんと閉じる。その単純で飾らない性質が「子どものような無邪気さ」を連想させました。
  • 明るく元気な花姿
    鮮やかなビタミンカラーの花は見ているだけで元気を与えてくれる存在。その天真爛漫な雰囲気が「無邪気」に重ねられています。
  • 長く咲き続ける健気さ
    夏の間じゅう、毎日新しい花を次々と咲かせ続ける姿は、純粋な喜びや遊び心を感じさせます。

→ つまり、「太陽とともに笑顔を見せる子どものような花」であることが、花言葉「無邪気」の由来になっています。


「太陽と笑う花」

真夏の午後、商店街の片隅にある小さな花屋の店先に、色とりどりの花が並んでいた。真紅、オレンジ、黄色、ピンク――まるで夏の太陽の光をそのまま吸い込んで輝いているかのような花。それが、ポーチュラカだった。

 「おばあちゃん、この花、なんでいつもニコニコしてるの?」
 小学二年生の結衣が、祖母の花屋でしゃがみ込み、鉢植えのポーチュラカを覗き込む。

 祖母は柔らかく笑った。
 「この花はね、太陽が大好きなの。日が出ると元気いっぱいに咲いて、暗くなると眠るのよ。素直で無邪気な子どもみたいでしょう?」

 結衣はその言葉を聞いて、はっとした。
 ――自分みたい。
 思ったことがそのまま顔に出てしまうし、学校でも笑ったり泣いたりが多い自分。先生に「もう少し落ち着きなさい」と注意されることもしばしばだった。

 「ねえ、おばあちゃん。この花の名前、なんていうの?」
 「ポーチュラカ。花言葉は『無邪気』っていうのよ」

 無邪気。
 その響きは、結衣にとって初めて知る魔法のような言葉だった。

 翌日も、結衣は花屋にやってきた。ポーチュラカの花をじっと眺めると、昨日と同じように、太陽の下で元気いっぱいに咲いている。
 けれど夕方になると、不思議なほどすぐに花が閉じてしまう。
 「なんで閉じちゃうの? もっと咲いてればいいのに」
 思わずつぶやくと、祖母が鉢を撫でながら答えた。
 「それが、この子たちの素直さなの。日が沈んだら眠る、また明日笑顔で会うためにね」

 結衣は考え込んだ。
 ――私も、この花みたいでいいのかな。
 周りから「子どもっぽい」と言われる自分を、少し恥ずかしく思っていた。けれどポーチュラカは、それを堂々と太陽に向かって咲いている。

 やがて夏休みの工作の宿題に、結衣は「ポーチュラカ日記」をつけることにした。
 毎日、花が咲いた時間や閉じた時間、色の違い、気づいたことを丁寧に書き込む。
 そこには次第に、自分の気持ちも書かれるようになった。

 「今日、友達に泣き虫って言われた。でも、ポーチュラカは泣かない代わりに夜になると眠る。私も泣いた分だけ笑えばいいんだと思った」

 「明日は運動会。緊張してるけど、ポーチュラカみたいに太陽を見たら元気になるって信じてる」

 祖母は日記をこっそり覗き、目を細めた。結衣の心が、花と一緒に少しずつ育っていくのを感じていた。

 夏が終わる頃、結衣は大きな声で発表した。
 「ポーチュラカの花言葉は『無邪気』です。太陽の下でだけ咲く素直さ、元気でカラフルな花姿、そして夏の間ずっと咲き続ける健気さから生まれた言葉です。私は、無邪気って恥ずかしいことじゃなくて、大事な宝物だと思いました」

 クラスメイトたちは拍手を送った。結衣の頬は赤く染まっていたが、その瞳はポーチュラカの花のように明るく輝いていた。

 帰り道、祖母が優しく言った。
 「ね、結衣。無邪気でいることは、何よりも大切なのよ。太陽とともに笑う花みたいに、ね」

 結衣は祖母の手をぎゅっと握りしめ、心の中で決めた。
 ――これからも、私はポーチュラカのように笑っていこう。

 夏空に浮かぶ入道雲の下で、ポーチュラカが今日も無邪気に咲いていた。

5月12日、9月29日の誕生花「ツンベルギア」

「ツンベルギア」

Robbi HoyによるPixabayからの画像

基本情報

  • 分類:キツネノマゴ科 (Acanthaceae)
  • 学名Thunbergia alata(代表的な品種)
  • 英名:Black-eyed Susan vine(ブラックアイド・スーザン・バイン)
  • 原産地:アジア、アフリカの熱帯~亜熱帯の地域
  • 開花期:初夏〜秋(5月~10月頃)
  • 草丈:1.5〜3メートル(つる性)
  • 栽培環境:日当たりと風通しのよい場所、水はけのよい土壌

ツンベルギアについて

特徴

  • 花色:オレンジ、黄色、白、紫など(中心に黒や濃い色の目のような模様があるのが特徴)
  • 形状:5枚の花弁を持つ円形の花で、中心部に暗色の目のような部分があります。
  • 生育:ツルを伸ばして成長し、トレリスやフェンス、鉢植えでのハンギングにも適しています。
  • 利用:ガーデニング、壁面緑化、バルコニー装飾などに活用されます。

花言葉:「美しい瞳」

ツンベルギアの代表的な品種であるThunbergia alata(ブラックアイド・スーザン・バイン)は、花の中心に濃い黒や茶色の「目」のような部分があるのが特徴です。この「瞳のような花姿」から、「美しい瞳」という花言葉がつけられました。

また、花弁の明るいオレンジや黄色と中心の黒の対比が、まるで人の瞳のように引き立って見えることから、人を惹きつけるような魅力的な「まなざし」を連想させたともいわれています。


「美しい瞳の庭」

夏の始まり、祖母の庭はツンベルギアの花で溢れていた。
オレンジや黄色の花弁の中心に、黒く深い色を湛えた“瞳”がこちらを見つめているように揺れていた。

「この花の名前は、ツンベルギアっていうのよ。美しい瞳っていう花言葉があるの」

幼い頃、祖母が教えてくれたその言葉を、私は今でも鮮明に覚えている。

祖母の家には、夏になるたび母と一緒に帰省していた。都会の喧騒とは違う、蝉の声と土の匂い、夕立の気配に包まれるその庭は、私にとって異世界だった。そしてツンベルギアの花は、まるで庭の守り神のように、どの年も同じように咲いていた。

祖母はもうこの世にはいない。けれどその庭は、今、私の手元にある。相続の手続きが終わり、久しぶりにひとりでこの家を訪れた私は、かつての面影を探すように庭に出た。

そして、ツンベルギアを見つけた。

フェンス沿いに絡みついたツルの先に、小さくも力強く咲いているオレンジの花。その中心には、あの「瞳」があった。

私は思わずしゃがみこみ、その花と目を合わせる。どこか懐かしくて、優しくて、でも何かを見透かすような、強い意志を感じる瞳。小さな花が語りかけてくる。

「大丈夫。あなたならできるわ」

そんな気がした。

ふいに、子供の頃の記憶が蘇る。

祖母はいつも私の目を見て話してくれた。話を聞いてくれるときも、叱るときも、笑うときも。視線を逸らさず、まっすぐに私を見つめていた。
「あなたの瞳はとってもきれいよ。だからね、嘘はつかない瞳でいなさい」
そう言って、ツンベルギアの前で微笑んだ祖母の姿が浮かぶ。

私はその日、庭に手を入れ始めた。荒れた雑草を抜き、花の周りの土を耕し、ツンベルギアに新しい支柱を立てた。

ひとつ手をかけるたびに、祖母との記憶がよみがえる。あの夏、スイカを食べながら見た夕焼け。縁側で眠ってしまった夜。手を引かれて歩いた近所の道。

「美しい瞳」という花言葉は、ただ見た目の話ではないのかもしれない。
真っ直ぐで、優しくて、そして人の心を見守るような――そんな想いが、あの花には宿っている。

秋の風が吹くころ、庭はすっかり整っていた。通りすがりの近所の人が立ち止まり、「きれいなお庭ですね」と声をかけてくれるようになった。

私は微笑み、「ツンベルギアっていうんです。美しい瞳っていう花言葉なんですよ」と返す。まるで、かつて祖母が私にそうしたように。

小さな瞳の花が、今日も風に揺れている。
その眼差しが、これからの私の背中をそっと押してくれる。
この庭で、私はまた一歩、自分の人生を歩き出す。