「ポーチュラカ」

基本情報
- 分類:スベリヒユ科スベリヒユ属
- 原産地:南北アメリカを中心に熱帯~温帯に広く分布
- 学名:Portulaca
- 和名:ハナスベリヒユ(花滑莧)
- 開花期:初夏~秋(5月~10月頃)
- 草丈:10~20cmほどの這うように広がる多年草(日本では冬越しが難しいため一年草扱いが多い)
ポーチュラカについて

特徴
- 太陽に咲く花
日当たりが良いときにだけパッと花を開き、曇りや夕方には閉じてしまいます。まるで太陽と遊ぶように咲く姿が魅力的です。 - 多彩な花色
赤・ピンク・オレンジ・黄色・白などカラフルで鮮やかな花色が揃い、夏の庭や花壇を明るく彩ります。 - 乾燥に強い
多肉質の葉や茎に水分を蓄える性質を持ち、真夏の直射日光にも耐える強健さがあります。 - 地を覆うように広がる
横に這うように茎を伸ばすため、グランドカバーや鉢植え、ハンギングにも向いています。
花言葉:「無邪気」

由来
ポーチュラカに「無邪気」という花言葉が与えられた背景には、以下のような特徴が関わっています。
- 太陽の下でだけ咲く素直さ
日が出ると元気いっぱいに花を開き、光がなくなるとしおんと閉じる。その単純で飾らない性質が「子どものような無邪気さ」を連想させました。 - 明るく元気な花姿
鮮やかなビタミンカラーの花は見ているだけで元気を与えてくれる存在。その天真爛漫な雰囲気が「無邪気」に重ねられています。 - 長く咲き続ける健気さ
夏の間じゅう、毎日新しい花を次々と咲かせ続ける姿は、純粋な喜びや遊び心を感じさせます。
→ つまり、「太陽とともに笑顔を見せる子どものような花」であることが、花言葉「無邪気」の由来になっています。
「太陽と笑う花」

真夏の午後、商店街の片隅にある小さな花屋の店先に、色とりどりの花が並んでいた。真紅、オレンジ、黄色、ピンク――まるで夏の太陽の光をそのまま吸い込んで輝いているかのような花。それが、ポーチュラカだった。
「おばあちゃん、この花、なんでいつもニコニコしてるの?」
小学二年生の結衣が、祖母の花屋でしゃがみ込み、鉢植えのポーチュラカを覗き込む。
祖母は柔らかく笑った。
「この花はね、太陽が大好きなの。日が出ると元気いっぱいに咲いて、暗くなると眠るのよ。素直で無邪気な子どもみたいでしょう?」

結衣はその言葉を聞いて、はっとした。
――自分みたい。
思ったことがそのまま顔に出てしまうし、学校でも笑ったり泣いたりが多い自分。先生に「もう少し落ち着きなさい」と注意されることもしばしばだった。
「ねえ、おばあちゃん。この花の名前、なんていうの?」
「ポーチュラカ。花言葉は『無邪気』っていうのよ」
無邪気。
その響きは、結衣にとって初めて知る魔法のような言葉だった。
翌日も、結衣は花屋にやってきた。ポーチュラカの花をじっと眺めると、昨日と同じように、太陽の下で元気いっぱいに咲いている。
けれど夕方になると、不思議なほどすぐに花が閉じてしまう。
「なんで閉じちゃうの? もっと咲いてればいいのに」
思わずつぶやくと、祖母が鉢を撫でながら答えた。
「それが、この子たちの素直さなの。日が沈んだら眠る、また明日笑顔で会うためにね」

結衣は考え込んだ。
――私も、この花みたいでいいのかな。
周りから「子どもっぽい」と言われる自分を、少し恥ずかしく思っていた。けれどポーチュラカは、それを堂々と太陽に向かって咲いている。
やがて夏休みの工作の宿題に、結衣は「ポーチュラカ日記」をつけることにした。
毎日、花が咲いた時間や閉じた時間、色の違い、気づいたことを丁寧に書き込む。
そこには次第に、自分の気持ちも書かれるようになった。
「今日、友達に泣き虫って言われた。でも、ポーチュラカは泣かない代わりに夜になると眠る。私も泣いた分だけ笑えばいいんだと思った」
「明日は運動会。緊張してるけど、ポーチュラカみたいに太陽を見たら元気になるって信じてる」
祖母は日記をこっそり覗き、目を細めた。結衣の心が、花と一緒に少しずつ育っていくのを感じていた。

夏が終わる頃、結衣は大きな声で発表した。
「ポーチュラカの花言葉は『無邪気』です。太陽の下でだけ咲く素直さ、元気でカラフルな花姿、そして夏の間ずっと咲き続ける健気さから生まれた言葉です。私は、無邪気って恥ずかしいことじゃなくて、大事な宝物だと思いました」
クラスメイトたちは拍手を送った。結衣の頬は赤く染まっていたが、その瞳はポーチュラカの花のように明るく輝いていた。
帰り道、祖母が優しく言った。
「ね、結衣。無邪気でいることは、何よりも大切なのよ。太陽とともに笑う花みたいに、ね」
結衣は祖母の手をぎゅっと握りしめ、心の中で決めた。
――これからも、私はポーチュラカのように笑っていこう。
夏空に浮かぶ入道雲の下で、ポーチュラカが今日も無邪気に咲いていた。