7月7日の誕生花「アベリア」

「アベリア」

基本情報(概要)

  • 学名Abelia × grandiflora
  • 和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)
  • 分類:スイカズラ科 ツクバネウツギ属
  • 原産地:野生種は、日本、中国、ヒマラヤ、メキシコに15種が分布
  • 形態:落葉または半常緑低木(地域により変化)
  • 樹高:およそ1~1.5メートル(品種により〜2m程度まで)
  • 開花時期:5月〜10月(長期間咲く)

アベリアについて

特徴

◎ 長く咲き続ける丈夫な花木

  • 花期は非常に長く、初夏から晩秋まで咲き続けるのが最大の特徴。
  • 花が小さいため派手ではありませんが、枝先にまとまって咲く姿は上品で可憐です。

◎ 萼(がく)も美しい

  • 花が散ったあとに残る萼が紅色に色づき、美観が続くため、長く楽しめる植物です。
  • 見た目は小花が咲いているように見えるほど美しいです。

◎ 丈夫で育てやすい

  • 耐暑性・耐寒性ともに高く、剪定にも強いため、初心者にもおすすめの庭木です。
  • 病害虫にも強く、放任でもある程度育つほどタフな植物です。

◎ 樹形がまとまりやすい

  • 半球状に自然に整う樹形なので、生垣や低めの植え込みにもぴったり
  • 強剪定にも耐え、管理がしやすいです。

◎ 観葉としての魅力も

  • 品種によっては斑入りの葉や、紅葉する葉などもあり、花のない季節にも楽しめます。

花言葉:「強運」

🌸 由来1:花が終わっても美しさが続く「萼(がく)」の存在

アベリアの花は咲いた後、すぐに散ってしまいますが、花の土台となる萼がそのまま枝に長く残り、紅色に色づいて美しく変化していきます
まるで、運が尽きたように見えても、その後も“魅力”が続いていく姿が、「強運」「運を手放さない」ことの象徴と捉えられました。


🌿 由来2:驚くほどの強さと生命力

アベリアは以下のような性質を持っています:

  • 長期間の開花(5月〜10月):半年近く咲き続ける花は珍しい
  • 病害虫に強く、手間がかからない
  • 強い剪定にも耐える
  • 乾燥や暑さ・寒さにも強い

このように、どんな環境にも適応し、丈夫で枯れにくい性質から、「どんな運命にも負けない強さ」「困難をはね返す強運さ」といった花言葉が生まれたとされています。


🌱 総合的に見ると…

アベリアの「強運」は、
ただ幸運が舞い込むという意味ではなく、

『試練に耐え、静かに、しかし確かに美しさを保ち続ける力』

に由来しています。

だからこそ、アベリアは「強さを信じて進みたい人」や、「困難を乗り越えた人」への贈り物にもぴったりな花です。


「強運の庭」

風がやわらかく吹いた。玄関先の鉢植えがわずかに揺れ、白い小花がそっと頬を撫でるように揺れた。

 アベリア。
 小さくて、誰の目にも留まりにくいその花は、あまり手入れの行き届いていないこの庭の中でも、変わらず毎年咲いてくれた。祖母が大切にしていた木のひとつだ。

 「この花ね、強運って花言葉があるのよ。あんたにも、少しわけてあげたいくらいだわ」

 子どもの頃、病弱だった私の手を握りながら、祖母はそう言って笑った。強運なんて、ずいぶん都合のいい言葉だと思った。けれど、あのころの私は、何かにすがりたかったのだろう。素直に「うん」とうなずいたのを覚えている。

 十年ぶりに戻ってきた実家の庭は、ところどころ雑草に覆われていた。けれど、アベリアだけは変わらず枝を伸ばし、小さな白い花を咲かせていた。萼(がく)もまだしっかり枝に残っていて、先のほうがほのかに紅色を帯びている。まるでまだ咲いているかのように、楚々とした美しさがあった。

 ――地味なのに、しぶとい。

 誰にも気づかれないように咲き、花が終わっても、その存在を静かに残す。
 そういえば祖母もそうだった。

 派手に誰かを引っ張ったり、人前で大声を出すような人ではなかったけれど、何か大事なときにはいつも後ろに立って、そっと背中を押してくれた。母が病気で倒れたときも、父が転職で悩んでいたときも、そして私が高校進学をあきらめようとしたときも。

 「強いって、こういうことなんだよ」

 祖母が亡くなったのは五年前。知らせを聞いたとき、私は海外にいた。夢だった建築の勉強のため、やっと奨学金をもらって留学していた最中だった。

 電話の向こうで、父がぽつりとつぶやいた。

 「おばあちゃん、最後まで庭のアベリア見てたよ。……今年は、花が長く咲いてたな」

 運がいい、って言葉は、どこか軽くて、努力も痛みも省略してしまうようで苦手だった。けれど、あの花を見ていると、少しだけその意味がわかる気がする。

 日当たりがいいわけでも、肥料をこまめに与えられていたわけでもない。それでも、気づけば毎年、風にそよいでいる。
 強い運というより、「運に負けない強さ」とでも言えばいいのかもしれない。

 私はスコップを持って、鉢の周囲の土を掘り返し始めた。草を抜き、枯葉を取り除く。大きな庭はとても手がかかる。けれど、祖母が遺してくれたこの小さな生命の庭を、もう一度きれいに整えてみたくなった。

 強運は、与えられるものではない。
 それはきっと、誰にも気づかれなくても、自分の居場所でひっそりと咲き続ける力なのだ。

 夕方、玄関の灯りに照らされたアベリアが、そっと風に揺れた。
 小さなベルのような花が、まるで微笑むように、こちらを見ていた。

七夕

7月7日は七夕です

7月7日は七夕

7月7日の「七夕」は、織姫と彦星が天の川を渡り、年に一度だけ会うことができるという中国の伝説に由来する日です。そして、この伝説が奈良時代の日本に伝わって、元々日本にあった七夕信仰と結びつけた行事としての「七夕」へと発展していったといわれます。

また、夏の夜空を見上げると、織姫星(織女星⇒しょくじょせい)はこと座の1等星「ベガ」、彦星(牽牛星⇒けんぎゅうせい)はわし座の1等星「アルタイル」があります。ちなみに、この二つの星とはくちょう座の1等星「デネブ」を加えた三つの星を結ぶと大きな三角形となって「夏の大三角」と呼ばれています。

七夕のルーツ

七夕のルーツ

七夕は、昔から伝わる日本のお祭り行事で、1年の重要な節句をあらわす五節句の一つです。毎年「七夕」7月7日の夜に、短冊に願いごとを書き、飾りなどと一緒に笹の葉に吊るして、星にお祈りをします。ほとんどの人たちが、幼稚園や保育園などで、たくさんの短冊をつるして織姫と彦星にお願いごとをして経験があるのではないでしょうか?
その七夕の始まった起源を調べると、「棚機(たなばた)」「七夕伝説」「乞巧奠(きこうでん)」というキーワード出てきます。

棚機(たなばた)

棚機神社(奈良県葛城市)

「棚機」とは、古い日本の禊ぎ(けがれのある人などや神事に従事しようとする人が、川や海の水でからだを洗い清めること)行事で、女性が着物を織って棚にそなえて神さまを迎え、秋の豊作を祈り人々のけがれをはらうというものだったそうです。また、その行事で 選ばれた女性は「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれるそうです。

そして、川などの清い水辺にある機屋(はたや)に籠ると、神さまに心をこめて着物を織り始めます。そのときに使用された織り機が、その「棚機」(たなばた)」というものです。 その後に仏教が伝わってくると、行事はお盆を迎える準備として7月7日の夜に行われるよります。現在では、七夕という二文字で「たなばた」と当て字で読んでいるのは、これが由来となっているとか。

七夕伝説

七夕伝説

この伝説というのは、織姫と彦星の天の川に関係する物語のことであり、実際に夏の空に琴座の「ベガ」と呼ばれている織女星は裁縫の仕事、鷲座の「アルタイル」と呼ばれている彦星(牽牛星)は農業の仕事をつかさどる星から、この物語のきっかけになったようです。

そして、二つの星は旧暦7月7日に天の川をはさんで最も光り輝いているように見えることから、中国でこの日を一年に一度に会えるの日と考え、そこから有名な七夕の物語が生まれたとされています。

乞巧奠(きこうでん)

乞巧奠(きこうでん)

「乞巧奠(きこうでん)」は、中国の行事7月7日に織女星にあやかり、機織や裁縫が上達するよう祈るという風習から始まったそうです。その風習は、庭先にある祭壇に針などをそなえ、星に祈りを捧げるもので、やがてそれが機織のみならず、芸事や書道などの上達も願うように祈るようになったいわれています。

みんなでコロナが終息するように願いましょう!

七夕の願い事

七夕は願い事をする日であり、そして叶えてくれる日だと、子供のころから信じ続けられるロマンチックな行事でもあります。さあ、今日は「七夕」であり、そして、「ドリカムの日」でもあります。ご存じ「ドリームズカムトゥルー」を辞書で調べると、念願の夢・長年の夢・究極の夢・夢のような話。など、夢かなう時の表現は様々です。

子供のころからの夢をかなえる、苦労に苦労を重ねてようやく夢をかなえる、これ以上ない最高の夢をかなえる等など、夢の実現への思いが詰まっている言葉です。まさに今こそ、みんなでコロナ終息へ向けて願い事を叶えて、元の楽しかった日々に戻していきましょう!


「七夕」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

七夕はドリカムの日!?

7月7日はドリカムの日

七夕はドリカムの日

2015年7月7日、ベストアルバム「私のドリカム」を発売。今年は、スーパー裏ベストアルバム「私だけのドリカム」発売。この日は、ドリカムとファンにとっても「夢がかなう日」、まさに「七夕」ピッタリですね。

本当に認定されてるの?

七夕とドリカム

実際、一般社団法人日本記念日協会より、ドリカムの日として認定されて来年のカレンダーに掲載される事になったそうです。

とんねるずのコンサートでサポート・メンバーの中村

ドリカムのコンサートツアー

ドリカムことDREAMS COME TRUEというメンバーは、1988年(昭和63年)1月に結成しています。実は、元々は1985年から1988年にとんねるずのコンサートツアーでサポート・メンバーをしていた中村が、1988年のコンサートツアー前に吉田をバック・コーラスにしたことがきっかけだそうです。

DREAMS COME TRUE

当初は「チャチャ・アンド・オードリーズ・プロジェクト」というグループ名で、その後「夢はかなう」(DREAMS COME TRUE)に改名。エピック・ソニー・レコードから1989年3月21日、シングル「あなたに会いたくて」とアルバム「DREAMS COME TRUE」の同時リリースでCDデビュー。

1990年代には、圧倒的な人気で1990年発売の「笑顔の行方」で初のオリコンTOP10入り。その後、「決戦は金曜日」などの5作品がミリオンセラーとなります。中でも「LOVE LOVE LOVE」は240万枚以上の売上げです。

ドリカムの人気が上がれば株価も上昇!?

ドリカムの人気が上がれば株価も上昇!?

2006年、大和総研が「ドリカム人気が上がれば、株価も上昇」とする調査結果を発表。ドリカム人気と株価指数が同時に上昇する確率が85%、更に下落時で66%というぐらい高い相関関係を示したことを発見しています。

庶民が共感が持てるドリカムの歌詞が、景気上昇時に前向きな気持ちなり、歌が景気の追い風になったという意見があります。

「コロナ禍」、「ロシアのウクライナ侵攻」、「急激な物価高」という大変なこのご時世ですが、こういう最悪な時期に負けずに、こういった良い曲を聞いて元気をもらいながら、この難局を乗り切りましょう!

「ドリカムの日」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

7月6日の誕生花「ツユクサ」

「ツユクサ」

基本情報

  • 学名:Commelina communis
  • 科名:ツユクサ科
  • 原産地:日本、中国、朝鮮半島など東アジア
  • 分類:一年草
  • 開花時期:6~9月
  • 花色:鮮やかな青(まれに白や淡い青)
  • 草丈:20~50cm程度
  • 日当たりから半日陰の湿り気のある場所を好む
  • 道端や野原、畑の縁などでよく見られる身近な野草

ツユクサについて

特徴

  • 朝に花を開き、午後にはしぼむ一日花として知られる
  • 鮮やかな青い花びらが涼しげで夏の風景によく映える
  • 露をまとったようなみずみずしい姿が名前の由来
  • 繁殖力が強く、毎年自然に芽を出して群生する
  • やわらかな茎と葉が風に揺れ、素朴で親しみやすい雰囲気を持つ
  • 昔は青い花の汁が染料や絵の具の下絵などにも利用されていた
  • 日本の夏を代表する野草として古くから親しまれている


花言葉:「懐かしい関係」

由来

  • 毎年変わらず夏になると咲く姿が、昔の思い出や大切な人との再会を連想させることから。
  • 道端や野原など身近な場所で親しまれてきた花であり、幼い頃の記憶を呼び起こす存在であるため。
  • 朝だけ美しく咲くはかない花姿が、過ぎ去った時間や懐かしい日々への思いを象徴していることから。
  • 素朴で飾らない青い花が、変わらない友情や幼なじみとの温かな絆を思わせるため。
  • 毎年同じ季節に変わらず咲き続ける姿が、時を経ても色あせない思い出や人とのつながりを象徴し、「懐かしい関係」という花言葉が付けられた。


「青い花が結ぶ夏の記憶」

 七月の朝だった。

 久しぶりに降った雨が上がり、道端の草花には小さな露が光っていた。

 遥は、生まれ育った町へ十年ぶりに帰ってきた。

 東京で働き始めてから、毎日が慌ただしかった。

 休日も仕事の連絡が入り、帰省する機会は少なくなっていた。

 父が退職することになり、家族が集まると聞いてようやく時間を作ったのだ。

 駅から実家まで続く細い道。

 子どもの頃、毎日のように歩いた通学路だった。

 懐かしい景色は少し変わっていた。

 新しい家が建ち、小さな商店はコンビニになっている。

 それでも田んぼを渡る風の匂いだけは昔のままだった。

 ふと足元を見ると、小さな青い花が咲いていた。

 朝露をまとい、澄みきった空を映したような青色。

 控えめなのに、不思議と目を引く花だった。

 「ツユクサだね。」

 草刈りをしていた近所のおじさんが声をかけてきた。

 「懐かしいな……。」

 遥は思わずしゃがみ込む。

 小学生の頃、この花の汁で友達と絵を描いて遊んだことを思い出した。

 指先が青く染まり、先生に笑われた夏休み。

 虫取り網を持って走り回ったあの頃。

 「今でも毎年咲くんですね。」

 「そうだよ。」

 おじさんは笑う。

 「誰も植えてないのに、夏になるとちゃんと顔を出す。」

 遥は青い花を見つめた。

 朝だけ花を開き、昼にはしぼんでしまう。

 それでも翌日にはまた新しい花が咲く。

 「花言葉は『懐かしい関係』なんだ。」

 その言葉に胸が小さく震えた。

 懐かしい関係。

 まるで今の自分のためにあるような言葉だった。

 実家へ着くと、母が笑顔で迎えてくれた。

 「おかえり。」

 「ただいま。」

 その二文字を口にするのは何年ぶりだろう。

 父も少し照れくさそうに笑っている。

 夕食では昔話に花が咲いた。

 父の失敗談。

 母のお弁当。

 運動会。

 文化祭。

 笑い声が絶えなかった。

 その夜。

 自分の部屋を片付けていると、一冊の古いアルバムが出てきた。

 中には幼なじみの航太との写真がたくさん挟まっていた。

 二人で川遊びをした日。

 夏祭りで金魚すくいをした日。

 卒業式の日。

 高校卒業後、航太は地元へ残り、遥は東京へ出た。

 最初は連絡を取り合っていた。

 けれど忙しさに追われるうちに、少しずつ疎遠になってしまった。

 翌朝。

 散歩に出かけると、川沿いの土手にもツユクサが群れて咲いていた。

 青い花が風に揺れている。

 その向こうから、自転車に乗った男性が近づいてきた。

 「あれ……遥?」

 聞き覚えのある声だった。

 「航太?」

 互いに目を丸くする。

 十年ぶりの再会だった。

 「帰ってたのか。」

 「昨日ね。」

 最初は少しぎこちなかった。

 しかし歩き始めると、不思議なくらい昔と同じだった。

 学校帰りによく歩いた川沿い。

 秘密基地を作った林。

 駄菓子屋のおばあちゃん。

 話は次から次へと尽きなかった。

 「覚えてる?」

 航太が笑う。

 「ツユクサの汁で顔に落書きしたこと。」

 遥も吹き出した。

 「あったね。」

 「先生に二人とも怒られた。」

 笑いながら涙がにじんだ。

 十年という時間が、一瞬で縮まった気がした。

 「東京はどう?」

 「忙しいよ。」

 「頑張ってるんだな。」

 その一言が温かかった。

 肩書きも。

 給料も。

 成功も失敗も。

 そんなことではなく、自分自身を見てくれている気がした。

 数日後。

 父の退職祝いが開かれた。

 親戚や近所の人たちが集まり、小さな宴会になった。

 父は照れながらも嬉しそうだった。

 最後に父が言った。

 「仕事は終わったけど、人との縁は終わらない。」

 その言葉が心に残った。

 翌朝。

 帰る日だった。

 駅へ向かう途中、またツユクサが咲いていた。

 朝日に照らされ、青い花がきらきらと輝いている。

 遥はしゃがみ込み、そっと見つめた。

 毎年変わらず夏になると咲く花。

 道端で何気なく見過ごしてしまうほど小さな花。

 それでも、その青さは幼い日の記憶を鮮やかによみがえらせる。

 あの頃の笑顔。

 家族。

 友達。

 何気ない毎日。

 すべてがこの花の中に詰まっているようだった。

 花言葉の意味が少し分かった気がした。

 「懐かしい関係」とは、過去へ戻ることではない。

 時が流れても心の中で生き続けるつながりのこと。

 会えない時間が長くても消えない絆。

 再会した瞬間、昨日のように笑い合える関係。

 それこそが、本当に大切な縁なのだろう。

 ツユクサは朝だけ花を開く。

 昼には静かに閉じてしまう。

 けれど翌朝にはまた新しい花を咲かせる。

 その姿は、過ぎ去った日々が終わったように見えても、思い出は何度でも心の中によみがえることを教えてくれているようだった。

 飾らない青い花は、幼なじみとの友情にも似ている。

 特別な約束を交わさなくても、変わらずそこにある安心感。

 毎年同じ季節に咲くように、人との絆も心のどこかで生き続けている。

 列車の発車時刻が近づく。

 ホームへ向かう前に、遥はもう一度振り返った。

 遠くの道端では、青いツユクサが風に揺れている。

 夏の光を受けながら、小さく、それでも確かに咲いていた。

 遥は静かに微笑む。

 また来年、この花はきっと咲くだろう。

 そして自分もまた、この町へ帰って来よう。

 懐かしい人たちに会うために。

 変わらない景色を歩くために。

 あの日の自分へ「ただいま」と伝えるために。

 列車がゆっくりと動き始める。

 窓の外に広がる夏空は、子どもの頃と何一つ変わっていなかった。

 ツユクサは今年も静かに咲いている。

 時を越えて、人と人との温かなつながりを見守るように。

 その青い花は今日も、「懐かしい関係」という優しい花言葉を、夏風に乗せてそっと語り続けていた。

7月6日、17日の誕生花「ハマユウ」

「ハマユウ」

基本情報

  • 学名:Crinum asiaticum var. japonicum
  • 分類:ヒガンバナ科・ハマオモト属の常緑多年草
  • 原産地:インドネシアとスマトラ
  • 開花期:6~9月、主に夕方から夜間に開花し、芳香を放つ
  • 外観:幅広く厚い葉が放射状に広がり、花茎に白い小花が10個ほど咲きます。花びらは細長く、中心部に赤い雄しべがアクセントに
  • 生育環境:日当たり・水はけの良い砂地(海岸沿い)を好み、暖地向き。地植え・鉢植えどちらも可能で、寒冷地では冬越しに注意が必要

ハマユウについて

特徴

  • 自生地:海岸線に群生し、葉が「オモト」(万年青)に似ているため別名「ハマオモト」とも
  • 香りと開花:夜に開花して強い芳香を放ち、主に蛾などを誘引する虫媒花
  • 種子の特性:種子はコルク質の厚皮で覆われ、水に浮く性質があり、海流に乗って遠くへ拡散・発芽する能力あり
  • 有毒性:全草有毒で、特に球茎は強い毒性を持つが、薬用としての利用もある

花言葉:「どこか遠くへ」

  • 主な花言葉
    • 「どこか遠くへ」
    • 「汚れがない」
    • 「あなたを信じます」

💡由来のひもとき

  1. 「汚れがない」
     神事で使われる白い布・“木綿(ゆう)” に似た清らかな白い花色から
  2. 「どこか遠くへ」
     種子が浮力を持って海流に流され、新たな土地で発芽する姿にちなむ
  3. 「あなたを信じます」
     「遠くへ流れても、必ず根を下ろし花を咲かせる」というたくましさと期待を込めた想いから

「どこか遠くへ、きっと届く」

あの夏の日、彼女は港に立っていた。
 セーラー服の襟が風に揺れ、白いハマユウの花が足元でそっと揺れていた。

「ここ、まだ覚えてる?」
 穂乃香がそう言って微笑んだ。

 海辺のこの小さな町で、僕らは育った。中学三年の夏。図書室で偶然隣の席に座ってから、毎週末、海沿いの堤防で話すようになった。彼女は東京からの転校生で、最初はよそよそしかった。でも、少しずつ距離が縮まり、名前を呼び合えるようになったのは、ちょうどハマユウが咲き始めた頃だった。

「この花、知ってる? ハマユウっていうんだって」
 彼女はそう言って、白く細長い花びらを指差した。

「花言葉はね、“どこか遠くへ” だって」

「なんか、君みたいだな」
 そう言ったら、彼女は少し驚いた顔をしてから、笑った。

 東京に戻ることが決まったのは、その翌週のことだった。

「私、ここが好きだったよ。思ったよりも、ずっと」

 最後に会った日、彼女はひとつだけお願いをしてきた。
 「この花、来年もちゃんと見ておいて。毎年ここで咲いてるか、教えて」って。

 あれから十年。
 連絡先も、手紙のやりとりも、いつの間にか途絶えていた。東京の高校に進学した彼女のその後は知らない。けれど僕は毎年、ハマユウが咲くこの場所に来ていた。

 白い花は、変わらずそこにいた。潮風に揺れながら、まるで何かを待っているかのように。

 ハマユウの種子は海に浮かび、遠くの浜辺まで運ばれていく。その途中で沈んでしまうこともあれば、知らない土地で芽を出し、やがて花を咲かせることもあるという。

 ――どこか遠くへ。それでも、きっと届く。

 ふと、誰かが近づいてくる気配がした。振り返ると、白いワンピースの女性が立っていた。風に揺れる髪の奥に、懐かしい面影があった。

「やっぱり……まだ咲いてたんだ」
 穂乃香だった。

 時が過ぎても、変わらない花の香りと、あの夏の記憶が、確かに僕らをつないでいた。

「ねえ、覚えてる? “どこか遠くへ”って」

 彼女の声に、僕はうなずいた。

 「そして、“あなたを信じます”――だったよな」

 笑いながら見つめ合ったその瞬間、海から吹いた風が、ふたりの間にハマユウの香りを運んだ。

7月6日、8月1日の誕生花「アサガオ」

「アサガオ」

👀 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像

基本情報

  • 和名:アサガオ(朝顔)
  • 学名Ipomoea nil (アサガオ)、Ipomoea tricolor (ソライロアサガオ)
  • 科名/属名:ヒルガオ科/サツマイモ属
  • 原産地:熱帯から亜熱帯地域
  • 開花時期:7月中旬~10月上旬
  • 花色:青、紫、桃、白など
  • 草丈:20〜300cm(つる性で支柱に絡んで成長)
  • 特徴:一日花(朝開いて昼頃にはしぼむ)

アサガオについて

RalphによるPixabayからの画像

特徴

  1. 朝に咲いて昼にしぼむ「一日花」
     アサガオの名の通り、朝になると花が開き、日差しが強くなる昼頃にはしぼんでしまいます。咲いている時間はとても短く、繊細な命のように感じられます。
  2. つるを伸ばして成長
     支柱やネットに絡みついてどんどん伸びる様子は、夏の風物詩として親しまれています。緑のカーテンとしても人気があります。
  3. 江戸時代に大流行した園芸植物
     日本では特に江戸時代に多くの品種改良が行われ、「変化アサガオ」と呼ばれる珍しい形や色の品種が競われました。

花言葉:「はかない恋」

アサガオの花言葉「はかない恋」は、その一日でしぼむ花の性質に深く関係しています。

◆ 一瞬だけ咲いて消える恋のように
朝に美しく咲き誇りながらも、昼過ぎにはしおれてしまう――その儚く短い命が、まるで一瞬のきらめきのような淡い恋心を思わせることから、「はかない恋」という言葉が生まれました。

◆ 江戸の文芸や浮世絵にも影響
アサガオは江戸時代の詩や物語にもよく登場し、報われない恋心や、一夜限りの想いを象徴するモチーフとして描かれています。

◆ 朝の美しさと、昼の消失
咲いたときの美しさが際立つ分、すぐに消えてしまうその姿が、「出会えた奇跡」と「別れの予感」を同時に想起させる――そこにロマンティックな哀しさが宿ります。


「朝顔の咲く頃に」

lam maiによるPixabayからの画像

その夏、私は毎朝、決まって六時にベランダのカーテンを開けるようになった。
 そこには、淡い紫のアサガオが、まるで私を待っていたかのように静かに咲いていた。

 「花って、誰かのために咲くんじゃなくて、自分のリズムで咲いてるんだよ」
 そう言ったのは、あの人だった。
 隣に住んでいた大学生の青年――直樹さん。二十代半ばの、どこか影のある人だった。

 私が中学生になったばかりの初夏。母に頼まれて、彼に回覧板を届けたのが最初だった。

 無口だけど優しい人だった。
 鉢植えのアサガオに水をやる姿が妙に静かで、心に残った。

 「どうして朝顔なんですか?」と私が聞くと、
 「一日でしぼむってところが、いいんだよ」と彼は少し笑った。
 「朝しか見られない。だから大事にできる。恋も、そんなもんかもしれないな」

 その言葉の意味は、当時の私にはよくわからなかった。
 けれど、彼の視線がアサガオに落ちるたび、何かとても遠い人に想いを寄せているような気がして、胸がきゅっとなった。

 夏休みが始まる頃、彼の家に変化があった。誰かと電話でよく話すようになり、夜遅くまで灯りが消えなかった。

 私が声をかけると、「夏が終わったら、東京に戻るよ」とだけ言った。

 「何か、あったんですか?」と尋ねると、彼は少しだけ目を細めて、
 「朝顔みたいな恋をしてたんだ。綺麗だけど、すぐ終わるやつ」とつぶやいた。

 私はなぜか、その言葉が胸に深く残った。
 恋をしていたんだ、とそのとき初めて知ったのに、もうその恋は終わったのだということも分かった。

Maggie ChaiによるPixabayからの画像

 八月の終わり。朝顔の花は少しずつ減り、葉も疲れたように色を落とし始めた。
 彼の部屋の窓はもう開くことはなく、鉢植えのアサガオだけが静かに最後の花を咲かせていた。

 そして九月、直樹さんはひとことも挨拶をせず、部屋を引き払っていった。
 残されたのは、錆びた支柱と、しぼんだ花のついたアサガオの鉢。

 それから何年も経った今も、私は毎年アサガオを育てている。
 朝、その花が開くたびに思い出す。
 誰かを想っていた人の横顔と、静かに終わっていった「はかない恋」の話を。

 たとえ一瞬でしぼんでしまう恋でも――咲いたことには、きっと意味がある。

7月6日、8月5日の誕生花「ヒマワリ」

「ヒマワリ」

JA2020によるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Helianthus annuus
  • 科名:キク科
  • 属名:ヒマワリ属
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:7月〜9月(夏〜初秋)
  • 花色:黄色(まれに赤みを帯びた品種も)
  • 英名:Sunflower(サンフラワー)

ヒマワリについて

Uschi DugulinによるPixabayからの画像

特徴

  • 太陽を追う花:成長途中の若いヒマワリは「向日性(ヘリオトロピズム)」と呼ばれる性質を持ち、日中は太陽の動きに合わせて花の向きを変えることがあります(成熟すると東を向いたままになることが多い)。
  • 大きな花と茎:1〜3メートルに育つこともあり、太い茎の先に大きな黄色い花(実際は多数の小花の集合体)を咲かせます。
  • 種子が豊富:花が終わると種が実り、食用(ひまわり油やスナック)や鳥の餌にも利用されます。

花言葉:「あなただけを見つめています」

Gábor AdonyiによるPixabayからの画像

この花言葉は、ヒマワリの**太陽を追いかける性質(向日性)**に由来しています。

  • 若いヒマワリは、太陽が昇る東から西へと動くにつれて、その花の向きも変えていきます。まるで一途に太陽だけを見つめているかのようなその姿が、誰かに対して「あなたしか見ていない」という強い想いを象徴するものとされました。
  • また、花の姿自体が太陽のように輝いていることから、「太陽=愛しい人」と見立てて、恋心や忠誠心を重ねる文化も背景にあります。

「向日葵の向く方へ」

제주 길잡이によるPixabayからの画像

駅前の花屋で、ひときわ大きなヒマワリが風に揺れていた。
 あの花が嫌いだったはずなのに――咲の足は、自然と止まっていた。

 「ねぇ、咲。ヒマワリって、太陽しか見ないんだって。知ってた?」

 その言葉を最後に、彼は咲の前からいなくなった。三年前の夏。
 大学最後の夏休みに入ったばかりの頃だった。
 突然の事故。なんの前触れもなかった。
 彼――直人は、咲に何も言い残さず、夕立のように消えてしまった。

 花屋の前に並ぶ鉢植えの向こうに、直人の面影を見た気がした。
 でも、それはきっと気のせいだ。
 だって、彼のように、あんなに真っすぐな人はいない。

 「俺、ヒマワリが好きなんだ」
 そう言って、真顔で花束を差し出してきた初デートの日。
 他の男の人ならバラやカスミソウを選ぶところを、彼は迷わずヒマワリだった。
 「なんか、咲っぽいなって思って」
 「え? 大きいってこと?」
 「違うって! ほら、太陽に向かって伸びてる感じ? いつも前向きで、元気で、俺のこと引っ張ってってくれるとこ」
 照れながらそう言った彼に、咲は言葉を返せなかった。
 たった一輪のヒマワリが、あんなにまぶしく思えたのは、あれが最初で最後だった。

J.Rim LeeによるPixabayからの画像

 以来、ヒマワリを見るたびに胸が痛くなった。
 まるで自分だけを見てくれていた彼のまなざしが、今もどこかで咲を見つめているようで。
 でも、咲は彼に背を向けたままだった。
 ――前を向かなきゃいけないのは分かってる。でも、どうしても振り返ってしまう。

 「……あなただけを見つめています、か」

 花屋の店先に添えられた札に、そう書かれていた。
 まるで、ヒマワリが咲に語りかけているかのようだった。

 そのままヒマワリを一鉢買って、部屋に飾った。
 東向きの窓辺、朝日が差し込む場所。
 ヒマワリはすぐに、明るい光のほうへと顔を向けはじめた。

 ――ねぇ、咲。太陽がどこにいるか、分かる?
 その声が、ふと耳に蘇る。
 咲は立ち上がり、ヒマワリの向きを見た。
 しっかりと光を捉えようとするその姿に、あの日の彼の瞳を重ねた。

 「……私も、ちゃんと見つけないとね。もう一度、前を」

 ヒマワリのように、まっすぐに。
 誰かに向かって、心から「あなた」と言えるその日まで。
 咲はゆっくりと、部屋のカーテンを開いた。

 窓の外には、真夏の空と、輝く太陽。
 そしてそれを見つめる、一輪のヒマワリが揺れていた。

ワクチンの日

7月6日はワクチンの日です

7月6日はワクチンの日

1885年7月6日、近代ワクチンの父、フランス人科学者ルイ・パスツール博士が開発し、狂犬病ワクチンが、9歳の少年ジョセフ・マイスター君に接種された記念すべき日なのだそうです。そして今、「新型コロナ」ワクチンの進捗状況を簡単に紹介します。

新型コロナワクチンが一番早く完成した国

新型コロナワクチンが一番早く完成した国

2020年、臨床試験に入った新型コロナ(COVID-19)ワクチンは18種類です。他にも29種類が前臨床の段階にあるそうです。しかし、2022年半ばになると世界中にすでに承認された新型コロナワクチンが配られ、4度目の接種を打つ国があるほどになっています。

英アストラゼネカと米モデルナ

2020年前後では、当時先行していたのは英オックスフォード大英アストラゼネカの「アデノウイルスベクターワクチン」と、米モデルナの「mRNAワクチン」。「アデノウイルスベクターワクチン」はP3試験に入っていて、「mRNAワクチン」も7月中にP3試験に入る予定でした。

新型コロナ(COVID-19)ワクチン

ファイザー社のワクチン

そして、米ファイザーは米モデルナ、独ビオンテックと共同開発の4種類の「mRNAワクチン」のうちの1つ「BNT162b1」のP1/2試験で良い結果が得られ、それを発表して7月中にも大規模なP2b/3試験を始めるそうです。さらに、その後2020年12月2日にはイギリスが、世界初のファイザーの新型コロナワクチン承認をしています。 

日本国内の進捗状況!?

アジュバント(ワクチンの免疫原性を高めるために使用される物質のこと)

日本国内は2020年、大阪大とアンジェスが共同開発の「DNAワクチン」が、6月30日にP1/2試験を開始しています。このワクチンの対象は、20~65歳の健康成人です。アジュバント(ワクチンの免疫原性を高めるために使用される物質のこと)を含む同ワクチンを2週間間隔で2回、筋肉内注射をして、安全性と免疫原性を評価されるとの事。

共同開発の「DNAワクチン」

新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(7月3日UPDATE)

AnswersNews

安心安全なワクチンの提供をお願い

安心安全なワクチンの提供

正直な気持ちは、早くワクチンを完成して欲しいと思っています。しかし、世界中の人命が懸かっています。急ぎ過ぎて、失敗は絶対に許されません。実験検査での問題を解決してしっかり検証し、実際に使用された時に安心安全に投与できるものを作って欲しいです。とりあえずは、それまでの間はマスクやソーシャルディスタンスで感染予防策で凌ぎたいと思います。


「ワクチンの日」に関するツイート集

2026年の投稿

2025年の投稿

5月8日、7月1日、3日、11月5日の誕生花「マツバギク」

「マツバギク」

manseok KimによるPixabayからの画像

■ 基本情報

  • 和名:マツバギク(松葉菊)
  • 学名:Lampranthus、Delospermaなど(複数の種が「マツバギク」と呼ばれます)
  • 科名:ハマミズナ科(ツルナ科とも)
  • 原産地:南アフリカ
  • 形態:多年草(常緑の多肉植物)
  • 花期:4月~5月(ランプランサス属)、6月~10月(デロスペルマ属)

マツバギクについて

manseok KimによるPixabayからの画像

■ 特徴

  • :名前のとおり、松葉のように細長く、肉厚な多肉質の葉が特徴です。
  • :デイジーに似た形の鮮やかな花を咲かせます。ピンク、紫、オレンジ、白などカラーバリエーションが豊富です。
  • 性質:非常に乾燥に強く、日当たりの良い場所を好みます。砂利地やロックガーデン、斜面の地被植物として使われることも多いです。
  • 育てやすさ:耐寒性・耐暑性ともに強く、放っておいても育つほど丈夫です。

花言葉:「心広い愛情」

manseok KimによるPixabayからの画像

マツバギクの花言葉「心広い愛情」は、以下のような特徴に由来していると考えられます。

  • 咲き誇る花の姿:マツバギクは小さな株でもたくさんの花を一斉に咲かせ、周囲を明るく彩ります。その様子が、見返りを求めず広く愛を与える姿に例えられています。
  • 丈夫で世話いらずな性格:乾燥や過酷な環境でもよく育ち、周囲の環境に順応する懐の深さが「心の広さ」に通じます。
  • 長い開花期間:春から秋にかけて長く花を咲かせ続ける姿は、尽きることのない愛情の象徴とされています。

「ひとひらの広がり」

manseok KimによるPixabayからの画像

真夏の陽射しがじりじりとアスファルトを焼いていた。古びた団地の一角、小さな庭に咲く鮮やかな紫の花が、ひときわ目を引いた。雑草の間から溢れるように顔をのぞかせているその花は、マツバギク。誰が世話をしているのかも分からないまま、毎年この季節になると律儀に咲き、住民たちの目を楽しませていた。

七十を越えた昌子さんは、その花に誰よりも親しみを感じていた。

「今年もよう咲いたねえ」

と、水をやるふりをしながらマツバギクに語りかけるのが日課だ。かつては手入れをする人もいたが、今はもう姿を見せない。だけど不思議なことに、誰にも手をかけられなくなってからの方が、この花は元気に咲くようになった気がする。

昌子さんには息子が一人いた。若い頃に家を出てから音沙汰もなく、最後に会ったのはもう二十年以上前だ。電話も手紙も来ない。はじめの数年は泣いたが、今はもう泣くこともない。ただ、彼が子どもの頃に「お母さんの花だね」と言ったこのマツバギクだけが、記憶のなかで彼とつながる唯一のものだった。

「花はいいね。誰かに見てほしいって思ってるわけじゃないのに、こんなに咲いて」

ある日、団地の隣に引っ越してきた若い母親が、小さな女の子の手を引いて花の前で足を止めた。

「きれいねえ、この花。ママ、これなんて名前?」

「ええっとね、たしか……マツバギク、って言うのよ」

その声に驚いて振り返ると、母親は少し照れながら会釈をした。

「すみません、勝手に見させてもらって……うちの子、この花が気に入ったみたいで」

「いいのよ。この花はね、見る人の心を明るくするの」

「本当に、そうですね。なんだか元気が出ます」

その日から、親子は毎日のように花の前に来て、にこにこと話すようになった。ある日、女の子が昌子さんに小さな絵を渡してくれた。そこにはマツバギクと、「おばあちゃん、ありがとう」の文字。

「ありがとうって、何が?」

「いつも、花、きれいにしてくれてるから」

昌子さんは笑った。

「この子ね、自分で育ってるのよ。誰にも文句言わず、文句言われず、ただ、咲くの。……あなたも、そうやって咲けばいいよ」

日が傾くなかで、マツバギクの花びらが夕陽に透けて光っていた。

そしてその夜、玄関先に一通の手紙が届いた。差出人は、あの息子からだった。

「母さん、元気ですか。ずっと連絡できなくてごめんなさい。最近、娘ができました。マツバギクを見るたび、あなたを思い出します——」

昌子さんは、そっと手紙を胸に当てた。涙は出なかった。ただ、胸の奥が、じんわりとあたたかかった。

花は、見返りを求めず咲き続ける。誰かがそれに気づき、受け取ったとき、広い愛情は静かに、しかし確かに伝わるのだ。

まるで——マツバギクのように。

7月1日、3日の誕生花「ヒメユリ」

「ヒメユリ」

ヒメユリは上品な白や淡いピンクの花を咲かせるユリの仲間。清楚で可憐な姿が魅力で、夏に咲くことが多いよ。控えめな美しさが心を落ち着かせてくれます。

基本情報

  • 学名Liliumconcolor
  • 科名 / 属名:ユリ科 / ユリ属
  • 原産地:県外:本州、四国、九州(熊本、大分)。朝鮮半島、中国、アムール県内:県北
  • 開花時期:6〜8月
  • 花色:朱赤〜オレンジがかった赤
  • 草丈:30〜60cmほどの小型種

ヒメユリについて

特徴

  • 名前の由来
    「姫百合」は、一般的なユリよりも背丈が低く、花も小さく可憐なことから「姫」と名づけられました。
  • 姿と生育環境
    1本の茎に1〜3輪ほど、上向きに花を咲かせます。花弁には黒紫色の斑点が入り、華やかで野性味のある印象。
    日当たりのよい山地の草原などに自生しており、乾いた場所を好みます。
  • 野生種としての希少性
    近年は自生地の減少により、野生のヒメユリは希少になっています。一部では準絶滅危惧種として保護対象にされています。

花言葉:「誇り」

ヒメユリの花言葉にはいくつかありますが、中でも代表的なのが「誇り」。

● 由来の考察

  1. 凛とした立ち姿
     小さな体ながらも堂々と直立し、上向きに花を咲かせる姿は、控えめでありながら芯の強さを感じさせます。まるで「小さくても誇り高く咲く」生き様のようです。
  2. 野に咲く強さと独立性
     過酷な環境下でも、他に頼らずしっかりと根を張り、美しく咲く姿が「自立した誇りある生き方」を象徴していると捉えられています。
  3. 他のユリとの対比
     豪華なオリエンタルリリーやカサブランカとは異なり、野生種らしい素朴さと慎ましさを持ち、それでいて決して埋もれず、独自の存在感を放っている――その姿が「誇り」という言葉にふさわしいとされています。

「野に咲くもの」

あの山の中腹に、ひと夏だけ咲く花がある――朱の星のような、名も知られぬ小さな花。

 そう語ったのは、祖父だった。

 私は十年ぶりに故郷に帰ってきた。都会で仕事に追われる生活に疲れ、何もかもを一度手放したくなっていた。電車を降りると、駅前の風景は思っていた以上に変わっていたが、山の稜線だけは昔と変わらず、静かに空へと延びていた。

 「……ヒメユリ、だっけ」

 幼い頃、祖父に連れられて何度か登った山道。中腹の草原にだけ、ぽつりぽつりと咲いていたあの朱い花。ユリのようでいて小ぶりで、けれど堂々と天を仰いで咲いていたその姿が、なぜか記憶の底に残っていた。

 祖父はもういない。けれど、あの花がまだ咲いているか確かめたくなって、私は翌朝、登山靴を履いた。

 道中、すれ違う人は誰もいなかった。舗装のない獣道を黙々と進む。額から汗が流れ、足元の小石につまずきながらも、私は昔の記憶を頼りに登り続けた。

 そして、ようやく草原にたどり着いたとき――

 そこに、ヒメユリは咲いていた。

 以前より数は少ない。それでも、岩陰に、小さな群れを成して咲くその姿は、凛としていた。茎は細く、風に揺れながらも折れず、真っ直ぐ空に向かって立っていた。

 「……変わらないんだな、おまえは」

 思わず、しゃがみ込んで花に話しかけた。答えが返ってくるわけもないのに。

 都会での生活は、数字と結果の世界だった。他人の評価に一喜一憂し、自分の価値がわからなくなる日も多かった。何を目指していたのか、なぜそこまでして登ろうとしていたのか。知らないうちに、私は自分を見失っていた。

 けれど、この花は違う。

 誰に見られなくても、賞賛されなくても、ただ「咲く」ことに意味があると知っている。
 誰にも頼らず、自らの力で根を張り、この過酷な自然の中に、自分の場所を見出している。

 「そうか、だから誇りなんだな」

 祖父が昔、教えてくれた。
 「ヒメユリの花言葉は『誇り』だ。小さな花だけど、胸を張って生きてる。おまえも、そんなふうに生きなさい」

 そのときは、意味がよくわからなかった。

 でも今なら、少しだけわかる気がした。

 私は花の隣に小さな石を積んだ。祖父への目印だ。風が吹き、ヒメユリがやさしく揺れた。

 ――ありがとう。
 聞こえた気がして、私は少しだけ笑った。

 小さくても、誇り高く咲いている。
 その姿が、もう一度立ち上がる力をくれた。