四十七士討ち入りの日

12月14日は四十七士討ち入りの日です

12月14日は四十七士討ち入りの日

1702年12月14日は、日本史において有名な「赤穂浪士」47人が江戸の本所松坂町にあった吉良邸に討ち入り、主君である浅野内匠頭の仇討ちを果たした歴史的な日です。

この出来事は「忠臣蔵」として広く知られ、後世の文学や演劇、映画にも数多く取り上げられています。赤穂浪士の討ち入りは、日本の武士道精神や義理を象徴するエピソードとして語り継がれています。

赤穂浪士

赤穂城

1701(元禄14)年、江戸城内で赤穂藩主の浅野内匠頭(たくみのかみ)が 、吉良上野介(こうずけのすけ)に切りつけた罪で、切腹に処せられ、そして浅野家は断絶しました。その後の元禄15年12月14日、家臣の「大石内蔵助」ら47人(最初は48人だったが、1人は脱退した)が江戸本所の吉良邸に討ち入り、主君の敵討ちを果たしています。

赤穂事件が物語「忠臣蔵」

忠臣蔵

この赤穂事件をもとに生まれた物語が「忠臣蔵」であり、人形浄瑠璃や歌舞伎などに脚色されています。そして、今でも年末の恒例のテレビドラマなどの題材として人気があります。

大石内蔵助

大石内蔵助の人柄

大石内蔵助は、忠臣蔵の主役として指導者の理想像になっていて、山鹿素行に軍学を学んだといわれています。1701年に藩主浅野長矩が切腹となり、領地が没収されると家中を統率して浅野家再興を図ります。そして、その望みが絶たれた翌年、赤穂義士の首領として主君浅野長矩の敵である吉良義央を討ち果たしました。自身は、幕法違反で肥後藩預けとなり切腹したが、浅野長矩の弟、大学が五百石の旗本になっており、浅野家はある意味再興を実現しています。

名言、敵を欺くにはまず、味方から

大石内蔵助の人柄

大石内蔵助の戦略で有名な、「敵を欺くには先ず味方から」という言葉があります。これは、戦争だけでなく、現在のビジネスにも通用する名言でもあります。分かりやすく言えば、味方と企てた優れた戦略も、その中から一人でも裏切り者がいて、外部の人間に漏らしたらその戦略も意味が無くなる。したがって、重大な事は最小限の身内以外は、ギリギリまで秘めておくと言うものです。なんか、奥深いものがありますね。


「四十七士討ち入りの日」に関するツイート集

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12月13日の誕生花「ヤツデ」

「ヤツデ」

基本情報

  • 学名:Fatsia japonica
  • 科名:ウコギ科
  • 原産:日本(本州・四国・九州)、韓国南部
  • 樹形:常緑低木
  • 開花期:11〜12月
  • 別名:天狗の羽団扇(てんぐのはうちわ)
  • 生育環境:日陰に強く、庭木・和風庭園でよく用いられる

ヤツデについて

特徴

  • 大きな手のひらのような葉(通常7~9裂)が特徴的。
  • 葉が厚く丈夫で、耐陰性・耐寒性があり、管理しやすい。
  • 晩秋から冬に白いボール状の小花を咲かせる。
  • 花後には黒い実ができ、鳥が好む。
  • 病害虫にも比較的強く、ビギナー向きの庭木。

花言葉:「親しみ」

由来

  • 大きく広がる掌状の葉 → 「手を広げて迎えてくれる姿」に見立てられた。
  • 和の庭に昔から植えられ、民家でも身近な植物として親しまれてきた。
  • 日陰の場所でも元気に育ち、そっと寄り添うように存在してくれる性質が “親しみやすさ” を連想させた。
  • 冬の寒い時期にも花を咲かせ、そばにあるだけで安心感を与えることから。

「掌をひらく庭木」― ヤツデが教えてくれたこと

家の裏に、昔から一本のヤツデがある。
 祖母が植えたものだと聞いたのは、十歳の冬だった。

 「この子はね、日陰でも元気にしてるんよ。誰かを迎えるみたいに、いつも手を広げてくれるから」

 祖母はそう言って、掌状の大きな葉をそっと撫でた。
 冷たい風が吹くたび、葉がぱたぱたと揺れて、まるで私に手を振ってくれているように思えた。

 あれから十数年。
 祖母が亡くなり、家も私も少しずつ変わっていった。
 けれど、裏庭のヤツデだけは変わらず、濃い緑の葉を広げてそこに立ち続けていた。

 仕事に疲れて帰ってきた夜、私はふと裏庭の灯りを点けてみた。
 冷え切った冬の空気の中、白い小さな花の房がぽつりと浮かび上がる。
 ヤツデはいつもより大きく見えた。
 その姿に、思わず声が漏れる。

 「……おばあちゃん」

 返事があるはずもない。
 けれど、風がそっと葉を揺らした。まるで “おかえり” と言われたように感じて、胸の奥がじんと温かくなる。

 翌日、祖母の写真を整理していたとき、古い日記を見つけた。
 庭の落書きのような図とともに、ヤツデについて書いた短い一文があった。

 ――誰かが帰る場所には、迎える手がいる。
    この子は、それをずっとしてくれている。

 読み終えた瞬間、涙が一粒だけ落ちた。
 祖母の言葉は、まるで時間を越えてそっと肩に触れたようだった。

 思えば私は、祖母がいなくなってからというもの、家に帰ることさえどこかためらっていた。
 仕事も人間関係も、うまく笑えない日が続いていた。
 “帰っても誰も迎えてくれない” ――そんな寂しさを、心のどこかで抱いていたのだと思う。

 でも、裏庭にはずっとヤツデがいた。
 日陰でもひっそりと葉を伸ばし、寒い冬でも花を咲かせ、ただそこに居続けてくれた。
 祖母が言った「そっと寄り添うような木」という言葉の意味を、今になってようやく理解する。

 その夜、私は久しぶりに裏庭に出た。
 ヤツデの大きな葉に手を伸ばす。冷たいけれど、しっかりとした手触り。
 ゆっくりと指先が落ち着いていく。

 「ただいま。……帰ってきたよ」

 風がまた、葉を揺らした。
 ひらひらと広がった緑の掌が、まるで私を包み込むように見えた。

 ああ、これが “親しみ” なんだ――そう思う。
 血のつながりや言葉だけではなく、長い時間の中で静かに育まれるもの。
 祖母が植えた一本の木が、私の心の帰り道をずっと守ってくれていたのだ。

 家の静けさの中で、ヤツデの葉音だけが優しく響く。
 それは、失われたぬくもりをそっとつなぎ止めるような音だった。

11月16日、12月13日の誕生花「クリスマスローズ」

「クリスマスローズ」

基本情報

  • 学名:Helleborus × hybridus
  • 科名 / 属名:キンポウゲ科 ヘレボルス属 の多年草。
  • 原産地:ヨーロッパ南部~西アジア。
  • 主な開花期:12月~3月(冬~早春)。
  • 「クリスマスローズ」という名は、12月頃に咲く品種(ヘレボルス・ニゲル)がクリスマスの時期に開花することから。
  • 花のように見える部分は「萼(がく)」で、長期間色褪せず残るのが特徴。
  • 色のバリエーション:白、ピンク、紫、グリーン、黒など豊富。
  • 耐寒性が非常に強く、冬の庭を彩る貴重な花として人気。

クリスマスローズについて

特徴

  • 真冬でも雪の中で凛として咲く強さを持つ。
  • うつむくように咲く可憐な姿が「慎ましさ」「奥ゆかしさ」を感じさせる。
  • 長い鑑賞期間(1~2ヶ月以上)を持ち、ガーデニングで扱いやすい。
  • クリスマスローズの花(萼)は徐々に緑色に変化するものが多く、アンティークな風合いが出る。
  • 毒性(特に根に強い毒)があり、古来は薬草として扱われた歴史もある。

花言葉:「私の不安をやわらげて」

由来

  • 冬の冷たい空気の中で静かに咲く姿が、「そっと寄り添って気持ちを落ち着けてくれる存在」を連想させた。
  • うつむいて咲く控えめな花姿が、優しく語りかけてくれるように見え、心の不安を和らげてくれるというイメージにつながった。
  • 古来、クリスマスローズは薬草として使われ、精神の不調を落ち着かせる目的で用いられたという伝承があるため、そこから「心を癒す花」という意味が派生した。
  • 雪に覆われても春を告げるように咲く生命力が、「大丈夫、また必ず光が来る」という象徴となり、不安をそっと解いてくれる花として語られた。

「雪明かりの下で」

その冬、里奈は毎日のように学校帰りに遠回りをした。理由はひとつ。町外れの古い洋館の庭に咲く、クリスマスローズを見るためだった。

 雪に覆われた庭の中で、その花だけが白く、静かに、凛とした姿で咲いていた。まるで寒さをものともせず、誰かをそっと励ますように。
 里奈はその姿に、どうしようもなく惹かれていた。

 ある日の夕方、洋館の門の前に立つと、背後から声がした。

 「また来たのね」

 驚いて振り向くと、厚手のコートに身を包んだ年配の女性が立っていた。白髪まじりの髪を後ろで束ねた、上品な雰囲気の人だった。

 「ごめんなさい……勝手に庭を見てて」

 里奈が慌てて頭を下げると、女性はやわらかく微笑んだ。

 「いいのよ。クリスマスローズ、好きなの?」

 「はい……。なんだか、見ていると落ち着くんです」

 女性は短く息をつき、「わかるわ」とつぶやいた。

 「その花はね、昔から“人の心を癒す花”って言われてきたの。薬草として使われていた時代もあったのよ」

 里奈は目を見開いた。女性は雪の積もる庭へ視線を向けながら、ゆっくりと続けた。

 「冬の冷たい空気の中でも、そっと咲くでしょう? うつむくように咲く姿は、まるで『大丈夫よ』って寄り添ってくれるみたいで……」

 その言葉を聞いた瞬間、里奈の胸に何かがふっと溶けるような感覚が広がった。

 実は、最近うまくいかないことばかりだった。友達とのすれ違い、進路の不安、家族の心配――胸の奥に小さな石が積もるように、息苦しさが消えない毎日。

 「……私、ずっと不安で。どうしても前を向けなくて」

 里奈がぽつりとこぼすと、女性は優しい目でこちらを見た。

 「誰だって、雪に埋もれそうになる時があるわ。けれどね、クリスマスローズは雪の下でも春を待って咲くの。
 “必ず光が来る”って信じているからよ」

 風が吹き、粉雪が舞いあがった。クリスマスローズの白い萼がその中で揺れ、ほんのりと光って見えた。

 「だから、この花の花言葉は『私の不安をやわらげて』なの。」

 里奈は花の前にしゃがみ込んだ。冷たい風が頬を刺しているのに、不思議と心だけは温かかった。

 「……私、もう少し頑張ってみます」

 小さくつぶやくと、女性はうなずき、里奈の肩に軽く手を置いた。

 「ええ。あなたならきっと大丈夫」

 その声は、雪の中で聞く焚き火の音のように、静かであたたかかった。

 帰り道、里奈は振り返った。洋館の庭に、クリスマスローズが白く咲いている。
 まるで冬の闇を照らす小さな灯りのように。

 ――また必ず光が来る。

 その言葉を胸に、里奈はゆっくりと歩き出した。
 雪明かりの道は、不思議なほど明るく見えた。

ビタミンの日

12月13日はビタミンの日です

12月13日はビタミンの日

1910年の12月13日、農芸化学者である鈴木梅太郎(1874~1943年)氏が、米糠(こめぬか)から抽出した脚気(かっけ)を予防できる成分「オリザニン」(ビタミンB1)と命名したことを東京化学会で発表しました。そして、制定委員会が2000年の9月に12月13日を「ビタミンの日」として制定しています。

オリザニン(ビタミンB1)

ビタミンB1、豚肉など

鈴木梅太郎氏は、ドイツのベルリン大学で約2年間、タンパク質やアミノ酸についての研究していました。帰国時に、ベルリン大学の教授から「アジアにしかないものを研究しなさい」とアドバイスを受けたといいます。そのことから梅太郎氏は、日本の特産品であり主食である米の研究をすることに決めたそうです。そして帰国後は、さっそく米の研究を始めた梅太郎氏はオリザニン(ビタミンB1)を発見し、歴史にその名を残すことになりました。

脚気(かっけ)とは?

脚気とは、ビタミンB1の不足により起こる病気であり、その症状は「手足がしびれ」や体がだるくなったりします。この症状が悪化すると死に至ることもあります。脚気の原因は食生活にあるといわれています。江戸時代から人々は、米ぬかを取り除いた白米を食べるようになり、その米ぬかに含まれるビタミンB1が不足してしまったのが、脚気になった原因といわれています。そして、梅太郎氏がビタミン発見したことで、これまで日本人を苦しめてきた脚気から解放されたといいます。

ビタミンは、鈴木梅太郎が先!?

鈴木梅太郎は、米の研究中に米ぬかに含まれる新しい栄養 成分を取りだすことに成功しています。これの成分を「オリザニン」と命名し、未知の栄養素として1910 年に発表しました。ところが翌年、ポーランドの化学者である「フンク」が、同じ栄養成分を発見して「ビタミン」と名づけて発表しました。そして、何故かこちらのネーミングが有名になったのです。今のビタミンという名前を親こそフンクですが、鈴木梅太郎こそ世界初の発見者として、実績を挙げたのも事実ではないでしょうか。

ワクチンや薬の開発者が誰であっても感謝すべきこと

薬や注射

人間は、ずっと昔から、色々な手ごわい感染症と戦ってきました。ざっと挙げるだけでも「天然痘」「ペスト」「新型インフルエンザ」「新興感染症」など様々あります。その中でも「天然痘」は、人類が根絶した唯一の感染症といわれていますが、まだまだ死に至るような危険な感染病は未だに世界でパンデミックを起こし、人々を脅かしています。

そしてまさに2020年の現在、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に蔓延して感染者、さらには死者も増加して、経済を衰退させています。世界各国でワクチンや特効薬が急ピッチで開発向けて頑張っていただいています。その結果その開発者がどんな人でも、どんな副反応があっても、自分にはできないことなので感謝したい。


「ビタミンの日」に関するツイート集

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4月14日、12月12日の誕生花「ハルジオン」

「ハルジオン」

🌼 ハルジオンの基本情報

  • 和名:ハルジオン(春紫苑)
  • 学名Erigeron philadelphicus
  • 英名:Philadelphia fleabane
  • 分類:キク科 ムカシヨモギ属
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:4月~6月頃(春〜初夏)
  • 花の色:白、薄ピンク、時に淡紫色

ハルジオンについて

🌿 ハルジオンの特徴

  • 姿:道端や空き地など、比較的どこでも見られる野草で、高さは30〜80cmほどに成長します。
  • :キク科特有の小さな花が集まった頭状花(とうじょうか)で、細く糸のような花びらが特徴的。似た花に「ヒメジョオン」がありますが、ハルジオンはつぼみのときに下を向くのが特徴です。
  • :茎を抱くようにつく(「茎を抱く葉」がハルジオンの見分けポイント)

花言葉:「追想の愛」

ハルジオンの花言葉「追想の愛」は、淡く可憐な見た目から「過去の愛を静かに思い出す」といったイメージが由来です。控えめに咲く姿が、淡い記憶や失われた恋をそっと思い出させることから、このようなロマンチックでちょっと切ない花言葉がつけられています。


「ハルジオンの手紙」

風がやわらかく吹き抜ける午後、駅前の小さな公園に、ユウはひとりで腰を下ろしていた。
目の前には、季節外れのハルジオンがひとつ、足元で揺れている。

「まだ咲いてるんだね、君」

そう独りごちて、ユウはポケットから一通の手紙を取り出した。黄ばんだ封筒には、少しだけ滲んだインクで、たったひとつの名前が書かれている。

――紗季へ

五年前、この公園で最後に会った日。春の陽射しの中、彼女は笑ってこう言った。

「ユウくんはいつもハルジオンみたい。目立たないけど、優しくて、ふっと心に残るの」

照れくさくて返事もできず、ただ笑ってごまかしたあの日。
まさかそれが最後になるなんて思いもしなかった。

紗季は突然、遠くの町へ引っ越してしまった。親の仕事、家庭の事情――何もかもが急で、置いてけぼりにされたような気持ちだった。
そのあとに届いたのが、この手紙だった。

「ごめんね、何も言わずに行ってしまって。私、ユウくんに伝えたいことがいっぱいあったの。でも、言葉にできなかった。
だから、いつかちゃんと伝えるために、この手紙を預けておきます。いつかまた、あの公園で会えたときに読んでほしい。
その日が来るまで、そっと大事にしまっておいてね」

読みたい気持ちはあった。けれど、それ以上に「また会える」と信じたくて、ずっと封を切れずにいた。

だが、先日ふと耳にした彼女の噂。
「数年前に、病気で亡くなったらしいよ」と。

ユウはその場で立ち尽くした。目の前がぐらりと揺れた。
あの日の笑顔が、声が、すべて胸の奥で弾けて、涙が止まらなかった。

――もう、彼女は戻ってこない。

そう思ったとき、ようやく手紙の封を開ける決心がついた。

指先でゆっくりと封を破る。便箋に並んだ文字は、やわらかく、どこまでも紗季らしかった。

『ユウくんへ

春になると、あの公園のハルジオンが思い浮かびます。
私たちの時間は短かったけれど、あなたと過ごした日々は、私にとって宝物でした。

もし、これを読んでくれているなら、それはきっと、もう会えないということなんだと思う。

ごめんね、さよならも言えずに。

でも、私の心は、ずっとあなたと一緒でした。

ハルジオンの花言葉、知ってる?
「追想の愛」っていうんだって。
私の想い、いつか伝わるといいな。

ありがとう、ユウくん。
あなたに出会えてよかった。

紗季』

読み終えたあと、ユウの目からぽろりと雫が落ちた。
白く揺れるハルジオンが、まるで彼女の代わりにそこに咲いているように思えた。

「追想の愛、か……」

ユウはそっと立ち上がり、花に手を伸ばす。だが摘まずに、ただそっとなでて微笑んだ。

過去は戻らない。けれど、想いは時間を越える。
そして、記憶の中に咲き続ける花もある。

ハルジオンは今日も、小さな風に揺れていた。

11月13日、27日、12月12日の誕生花「デンドロビウム」

「デンドロビウム」

基本情報

  • 学名Dendrobium
  • 科名:ラン科(Orchidaceae)
  • 属名:デンドロビウム属(Dendrobium)
  • 原産地:ネパール、インド東北部、ブータン、ミャンマーなど
  • 開花時期:2月~5月(3月~4月がピーク)
  • 花色:白、ピンク、紫、黄、緑など
  • 別名:セッコク(石斛/日本原産種)、デンドロビューム

デンドロビウムについて

特徴

  • ラン科の中でも種類が非常に多く、1000種以上が存在する。
  • 多くの品種は樹木や岩に着生し、空気中の湿気や雨から水分を吸収して生きる。
  • 細長い茎(バルブ)に葉をつけ、茎の節から花を咲かせる姿が特徴的。
  • 花は繊細でありながら華やかで、気品を感じさせる美しさを持つ。
  • 観賞用・贈答用のランとして人気が高く、開店祝いや卒業式などにも用いられる。
  • 長く咲き続けるため、「永遠」「忍耐」といった意味も持たれることがある。

花言葉:「わがままな美人」

由来

  • デンドロビウムは、花姿がとても美しく、しかも気まぐれに咲くことで知られる。
    → 温度・湿度・日光など、栽培環境に敏感で、わずかな変化でも咲き方が変わる。
  • その繊細さと手のかかる美しさが、「美しいけれど扱いにくい」「気まぐれな美人」を連想させた。
  • 花びらの形や色合いが、まるで艶やかな女性の表情を思わせることから、
    「わがままな美人」「華やかな女性」といった花言葉がつけられた。
  • 同時に、どんな環境でも根を張り、時期がくると見事に咲くことから、
    「強い意志を持った美しさ」も象徴している。

「ガラス越しの花」

ミナはショーウィンドウに映る自分の姿を、じっと見つめていた。
 美容室のガラスに、春の光が反射している。整えたばかりの髪が、その光をやわらかく受けて揺れた。
 「少し短くしましたね」と言われて頷いたが、彼女の心はどこか遠くにあった。

 デスクに置いていたデンドロビウムが、昨日しおれた。
 細い茎の先に、いくつも花をつけていたあの美しい姿が、嘘のように萎んでいた。
 思わず手を伸ばして花びらに触れたとき、指先にひんやりとした感触が残った。
 それは、まるで自分自身を見ているようだった。

 仕事も恋も、うまくいっていない。
 自分なりに努力しているつもりでも、ほんの少しの言葉や態度で傷ついてしまう。
 誰かに「強いね」と言われるたび、笑顔でうなずきながら、心の奥で「本当は違うのに」と思っていた。

 帰り道、通りの花屋の前で足を止めた。
 ガラス越しに見える棚の上、淡い紫色のデンドロビウムが、春の光に包まれていた。
 花びらの奥には、ほんのりと金色が混じっている。
 その複雑な色合いは、まるで人の心のようだった――一色では言い表せない、美しさと難しさを併せ持っている。

 「気まぐれな花なんですよ」
 花屋の女性が声をかけてきた。
 「育てるのは少し大変。でもね、ちゃんと手をかけてあげると、忘れたころにまた咲くんです」

 ミナは微笑んだ。
 「わがままだけど、芯が強いんですね」
 「そう。そういう人、憧れますよね」

 その言葉が胸の奥に響いた。
 ――わがまま、という言葉の中に、ほんとうは「自分を信じる強さ」が隠れているのかもしれない。

 帰宅後、ミナはしおれたデンドロビウムの鉢を手に取った。
 根元を見つめると、まだ小さな芽がいくつか残っている。
 捨てるのは、やめよう。
 そっと水を与え、窓辺に置く。光が少しだけ差し込むその場所に。

 次の朝、ミナは鏡の前で髪を整えながら、自分に小さく言った。
 「気まぐれでもいい。少しずつでいい」

 ベランダの向こう、遠くの空に淡い雲が流れていた。
 その下で、デンドロビウムの茎が、ほんの少しだけ光を受けて輝いている。

 ――また咲く日が来るまで、私も生きてみよう。
 それは、決意というより、祈りに近い言葉だった。

 花は気まぐれに咲く。
 けれど、その気まぐれの中に、確かな意志がある。
 ミナはそれを知って、初めて自分の「わがまま」を受け入れられた気がした。

 静かな朝の光の中、ガラス越しの花が、ゆっくりと彼女の方を向いていた。

明太子の日

12月12日は明太子の日です

12月12日は明太子の日

山口県下関市の明太子専門業、辛子明太子を全国に広めた前田海産株式会社が制定しています。元々は、韓国から辛子明太子が日本に伝わり、その発祥の地が下関です。この日付は、日本初の「明太子」という名称が新聞に載った1914年12月12日からといわれています。

明太子の起源

明太子の起源

朝鮮半島には、スケトウダラの卵巣を調味して食するという習慣が古くからあったといいます。そして、これが明太子の起源と伝えられています。1800年頃には、唐辛子とスケトウダラの卵巣を一緒に塩漬けして食べるようになったと記述があります。その後、1900年の韓国併合ぐらいの頃に1人の日本人「樋口伊都羽」が辛子明太子として商品の販売を始めています。

樋口伊都羽

スケトウダラの卵巣

会津藩士の息子である樋口伊都羽氏は、明治の時代に朝鮮半島に渡り、漁業関係に従事しています。その時、スケトウダラの卵巣はほぼ全て捨てられてしまうの勿体ないと思いました。そこで、その卵巣を商品化にできないかを考えました。その後の明治40年には、釜山で樋口商店を創業して卵巣を明太子の販売を開始しています。その樋口氏の明太子は、日本にも入ってきていたそうです。しかし、終戦により樋口商店は廃業となり、後に韓国から明太子を輸入することが難しくなったといわれます。

明太子を有名にした川原俊夫

めんたいぴりり

川原氏は、戦前に韓国の釜山にいたが、終戦に夫婦で日本に引き上げます。その後、韓国で好んで食べた明太子が忘れられず、日本で明太子作りを始めました。しかし最初は、日本人の口に合うようなものではなかったらしく、納得の商品が完成するまで、10年もの月日が流れてしまいました。

明太子が一気に広がった理由は

明太子の人気の秘密

川原氏は、世間に明太子の製造法を企業秘密にせず、知りたい人には喜んで教えたそうです。そのせいか、博多では明太子の製造会社が増ええます。そして1975年には、新幹線が博多まで伸びたことで明太子の輸送が可能となって、博多明太子が全国にたちまち広まり知られるようになったそうです。今では、日本国内で消費量は年間3万トンとまでになっています。

明太子は何にでも合う

明太子スパゲティ

明太子は、今や万能調味料化しています。例えば、明太マヨネーズや明太クリームのパスタなど、明太子をソースに変えることができます。また、あの「ピリッと辛い」のがパンやクラッカーなどでも合います。なので、トッピングしておやつやおつまみにも大活躍しています。明太子は、ちょっと価格が高めなところがいたいですが、美味しく人気があるので作った人には感謝したいです。


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12月11日の誕生花「白いバラ」

「白いバラ」

基本情報

  • バラ科バラ属の多年生植物
  • 開花期:春〜秋(品種により四季咲きも多い)
  • 色は純白からアイボリーホワイト、わずかに緑がかった白など多様
  • 香りは強香から微香まで品種差が大きい
  • 切り花としてウェディング・贈り物で最も人気のある色のひとつ

白いバラについて

特徴

  • 清楚で透明感のある花色が特徴
  • 花びらの重なりが美しく、上品でクラシックな印象を与える
  • 花持ちのよい品種が多く、ブーケやアレンジに使われやすい
  • 純白であるため、他の色と組み合わせても調和しやすい
  • 初心者でも育てやすい強健種から、手入れが必要な高級品種まで幅広い

花言葉:「無邪気」

由来

  • **白という色が象徴する“純潔”“清らかさ”**から、汚れのない心をイメージしたとされる。
  • 白いバラは、赤いバラのような情熱や黄色のバラのような陽気さよりも、
    飾らない気持ち・ささやかな喜び・子どものような真っ直ぐさを連想させた。
  • また、古くは白いバラが「純粋な愛」「真心」の象徴として扱われ、
    そのイメージが派生して、
    “無邪気な想い” “裏表のない気持ち” といった意味に結びついた。
  • 結婚式や誕生祝いで白いバラがよく使われる文化的背景も、
    新しい始まりを前にした“まっさらな心” を表す象徴として花言葉に影響を与えている。

「白いバラのはじまり」

春の光が、薄いレースのカーテンをやわらかく透かしていた。
 葵はその光の中、テーブルの上に置かれた一輪の白いバラを見つめていた。

 花びらは雪のように透き通っていて、指先を近づけるとひんやりとした気配が伝わる。
 まるで何かを語りかけるように、静かに、凛として咲いていた。

 ――「純粋なものは、強いのよ」

 ふいに、母の声を思い出す。
 小さい頃、誕生日のたびに白いバラを飾ってくれた母。
 「無邪気でいてくれるだけでうれしい」と笑っていた、その笑顔。

 そんな母が亡くなって一年が経つ。
 葵は今年も誕生日を迎えたけれど、この花を買うまで、白いバラを見ることができなかった。

 母の記憶があまりに鮮やかで、触れれば壊れてしまいそうで――。
 けれど今日は、どうしてもこの花に会いたかった。

 窓を開けると、春の風がそっと部屋に流れ込んだ。
 白い花びらがゆらぎ、光を受けてやわらかく輝く。

 「ねえ、お母さん」

 葵は小さな声でつぶやいた。
 「私、あの日みたいに素直になれるかな。無邪気で……なんて、もう難しい気がする」

 仕事に追われ、気づけば眉間にしわを寄せる癖までついた。
 誰かに甘えることも、弱音を吐くことも、いつの間にか苦手になっていた。

 ――だけど。

 白いバラは、何も責めるような光を持っていなかった。
 ただそこに、美しく、まっさらな姿で咲いている。

 “無邪気な想い”
 “裏表のない気持ち”

 花言葉の由来を思う。
 赤いバラの情熱も、黄色いバラの陽気さも持たず、ただ真っ直ぐで清らかであること。
 飾らない気持ちそのものを象徴する白。

 「……始めてもいい、ってこと?」

 心のどこかで、そんな声が生まれた。
 新しい自分。
 誰かに向ける素直な想い。
 あるいは、誰かをもう一度信じる勇気。

 白いバラは、まるで「うん」と頷くように静かに揺れた。

 そのとき、玄関のチャイムが鳴る。
 驚いてドアを開けると、友人の亮が立っていた。
 手には、小さな紙袋。

 「誕生日でしょ。これ、渡しそびれるとこだった」

 袋の中には、白いバラの花束。
 葵は息を呑んだ。

 「え……なんで、白いバラを?」
 「なんとなく。葵には、この色が合う気がして」

 胸の奥がじん、と熱を帯びる。
 母以外の誰かから白いバラをもらったのは、初めてだった。

 亮は少し照れたように笑った。
 「最近、頑張りすぎだろ? だから……真っさらな気持ちで、また笑えるといいなって」

 その言葉に、瞳の奥がふっと熱くなる。
 白いバラの花言葉が、そっと心に降りてきた。

 ――無邪気。

 それは、子どものように戻ることではなく、
 ただ、自分の気持ちに正直でいることなのかもしれない。

 「ありがとう、亮」
 声が震えた。
 けれど、今の自分を飾る必要はなかった。

 白いバラは、静かに光を映しながら咲いている。
 まっさらな始まりを、やさしく告げるように。

百円玉記念日

12月11日は百円玉記念日です

12月11日は百円玉記念日

1957年12月11日は、日本で初めて「百円硬貨」が発行された記念すべき日です。この百円硬貨は、日本で初の「銀貨」として知られ、戦後初めての発行という歴史的な意義を持っています。この硬貨の登場は、日本の通貨システムの重要な進化を象徴しており、現在も多くの人々にその歴史的価値が語り継がれています。

百円玉硬貨

百円硬貨

発行された当時の百円玉硬貨は、表面に鳳凰で裏面には旭日が刻まれたデザインでした。この効果の配合は、銀60%、銅40%の割合で作られていました。現在の金属価格から換算すると、硬貨1枚に対して約200円の銀が使用されていて、実際のところ硬貨としての実質価格よりも金属としての価値のほうが高かったそうです。また、この百円硬貨は1959年に、表が稲穂で裏が「100」の数字にデザインの変更がされ、その後の1967年に現在も一般的に使用されている桜のデザインの白銅貨に切り替えられています。

日本の硬貨は金額により金属が違う

日本の硬貨の色々

日本独自の硬貨は、金額によって違う素材の金属が使われています。これらは、「アルミニウム・銅・スズ・亜鉛・ニッケル」という5つの素材の組み合わせを配合割合により、作られています。

1円玉硬貨の素材と配合割合

一円硬貨

1円玉硬貨は、アルミニウム100%であるために軽量で加工がしやすく、コストが安いのが特徴です。また空気中で表面に膜を作るため、錆びにくいという特性も持っています。何万、何億という人の手に触れても、長い間使用されても錆びづらいのは、この特性のためです。

5円玉硬貨の素材と配合割合

五円硬貨

5円玉は、銅(60~70%)と亜鉛(40~30%)の配合で作られています。黄金色であるのは、「黄銅」と呼ばれる素材だからです。黄銅は適度な強度と延性を持っているため、加工しやすい金属として使用されます。黄銅は他に「カメラや時計の部品」「金管楽器」「金属雑貨」などに用いられ、金の色合いが同じように見えるため金の代用品としても使用されているそうです。

10円玉硬貨の素材と配合割合

十円硬貨

10円玉の素材は、「銅・亜鉛(4~3%)・スズ(1~2%)」を混合した「青銅」と呼ばれるものでできています。また、青銅は別名ブロンズとも呼ばれ、奈良の大仏なども同じ青銅で作られています。10円玉が本来の銅に近い赤茶色をしているのは、5%ほどのスズと亜鉛が含まれているからです。

100、50円玉硬貨の素材と配合割合

五十円硬貨

50円玉は、銅(75%)にニッケル(25%)を混合した「白銅」という素材でできています。これは100円玉の素材と全く同様のものです。しかし、50円玉と100円玉とは重量と直径が違い、判別しやすいように50円玉には真ん中に穴もあけられています。白銅は、ある程度の酸や海水に触れても腐食せず、高温の250℃以上にも耐えることができます。

500円玉硬貨の素材と配合割合

五百円硬貨

500円玉は銅(72%)と亜鉛(20%)、ニッケル(8%)を混合した「ニッケル黄銅」と呼ばれる素材です。100円玉に若干黄色味を足したような色合いである500円玉は、亜鉛が含まれるために生まれています。この500円玉は、2021年上期に変更があるといわれ、この新500円玉は周りがニッケル黄銅、中心部が白銅の2色(バイカラー)に変わるとされています。

キャッシュレスで100円玉が今後貴重なものに

キャッシュレス化へ

ここ数年で急速にキャッシュレス化が進み、硬貨やお札を財布に入れることが減っていています。それもそのはず、従来は消費税が誕生するや一円玉や五円玉などの小銭が異常に増え財布自体が重くなり「ジャラジャラ」と音を立てながら支払いに手間をかけていた現実からタッチだけで支払い完了となれば、当然のことといえます。このキャッシュレスがさらに進めば、もはや硬貨の役目も終わり、お金としての価値が無くなってしまうのは目に見えていていることです。しかしその数年後は、製造時期で各希少な年の硬貨がプレミアがついて貴重な記念硬貨になるかもしれませんよ!


「百円玉記念日」に関するツイート集

2025年の投稿

2024年の投稿

2023年の投稿

12月10日の誕生花「シャコバサボテン」

「シャコバサボテン」

基本情報

  • 和名:シャコバサボテン(蝦蛄葉サボテン)
  • 別名:クリスマスカクタス、デンマークカクタス
  • 学名:Schlumbergera(Zygocactus)
  • 科名:サボテン科
  • 原産地:ブラジルの高地・森林
  • 開花時期:11〜3月(冬咲き)
  • 園芸分類:多肉植物・着生植物
  • 花色:赤、ピンク、白、オレンジ、紫など多彩

シャコバサボテンについて

特徴

  • 葉のように見えるのは茎節(けいせつ)
    ┗ 蝦蛄(シャコ)の甲羅に似ている形が名前の由来。
  • サボテンの仲間なのに湿度が好きで、直射日光を避けるタイプ
    ┗ 原産地が森林の樹木に着生する環境のため。
  • 冬に咲く花として人気
    ┗ 冷え込む季節に鮮やかな花を数多く咲かせる。
  • 花は下向き〜横向きに咲き、細長い花弁が重なる繊細な形
  • 日照や温度に敏感で、環境が合わないと蕾が落ちる(デリケート)
  • 長寿な鉢花で、上手に育てれば毎年咲く

花言葉:「一時の美」

由来

  • 花が咲く期間が比較的短く、最も華やかな瞬間が一瞬のきらめきのように過ぎることから。
  • 冬の短い日々の中で、限られた期間だけ鮮やかに輝く姿が、
    「儚い美しさ」「一瞬に宿る価値」を象徴するとされた。
  • 蕾を落としやすく、環境に敏感で繊細な花だからこそ、咲いた瞬間の美が貴重に感じられることも由来の一つ。

「一瞬だけ咲く光」

冬の朝は、いつも静かだ。
 吐く息が白く、部屋の窓には薄い氷の模様が広がっている。
 優奈はその窓をそっと開け、ベランダに置いた鉢へ視線を向けた。

 ――シャコバサボテンが、咲いている。

 昨日までは固い蕾だったはずなのに。
 その花は、白と桃色が混ざった細い花弁を重ねて、まるで朝の光をすくい上げるように開いていた。
 優奈は思わず息をのむ。
 冬の冷たい空気のなかで、それだけがひときわ鮮やかに見えた。

 「やっと、咲いたんだね……」

 小さく呟くと、胸の奥がじんと熱くなる。
 花が開くまでの時間の長さと、その美しさの儚さを知っているからだ。

 ――一時の美。

 この花の花言葉は、ずっと前に母から教わったものだ。
 「咲くまで時間がかかるのに、咲いたらあっという間に終わっちゃうのよ」
 笑いながら、けれど少し寂しそうに母は言っていた。
 優奈が小学生のころの記憶だ。

 花が散ったあとも、母は何度も何度もシャコバサボテンを育て続けた。
 忙しくて一緒に過ごす時間は減っていたけれど、母の部屋の窓辺にはいつも、その花があった。

 優奈が高校生になる頃には、母は病気で長い時間を自宅で過ごすようになった。
 「花はね、咲く瞬間だけがすべてじゃないのよ。
  咲くまでに頑張っている時間があるから、ああやって輝けるの」
 弱々しい声でそう言った日のことを、優奈は忘れられなかった。

 だが、その冬の終わりに母は静かに息を引き取った。
 ベッドの横には、咲き終わったシャコバサボテンが置かれていた。
 花びらは落ちていて、そこに鮮やかさはもうなかった。
 でも、優奈にはそれが不思議と悲しく見えなかった。

 ――一瞬の輝きは、消えてしまっても残るんだ。

 母がそう教えてくれているようだった。

 それから数年後。ひとり暮らしを始めた優奈は、母の残した鉢を大切に育ててきた。
 花は気まぐれで、蕾が落ちてしまうこともよくあった。
 けれど、今年もこうして咲いてくれた。

 優奈は指先でそっと花びらに触れる。
 冷たく、薄く、まるで触れた瞬間に壊れてしまいそうなほど繊細だった。

 「お母さん、今年も咲いたよ」

 言葉は雪のように静かに空へと消えていく。
 けれど、胸の奥には小さな光が灯っていた。

 ――たとえ一瞬でも、誰かの心に残る美しさがある。
 ――短い時間だからこそ、その輝きは消えない。

 優奈はゆっくり顔を上げた。
 ベランダの向こう、冬空は薄く晴れていた。
 その淡い光の中で、シャコバサボテンの花がひらひらと揺れる。

 まるで母が微笑んでいるように見えた。

 花はすぐに散ってしまうだろう。
 でも、その一瞬があるからこそ、優奈は今日を大切に生きようと思える。

 冬の朝日が花びらに触れ、ほんの一瞬だけきらりと光った。
 優奈はその光を見逃さなかった。
 心の中で、そっとつぶやく。

 ――今年も、ありがとう。

 やがて優奈は窓を閉め、部屋に戻った。
 けれど、胸の奥にはまだ温かな光が残っていた。
 一瞬の美しさが、確かに息づいているように。